音が消えるまでに

優希ヒロ

文字の大きさ
上 下
7 / 15
現在(そうやサイド)

しおりを挟む
「情けないわね、こんなことで逃げ出すなんて…。」と呟くとオルゴールをかけ始めた。
「まい、大丈夫?」
「ようくん、来てくれたの?」
「そうだよ、僕は君を傷付けた責任を取らないといけない。」
「いいのよ、そんなことは…。ようが来てくれただけでも充分。だから、消えないで…。」とようを抱き締めた。
「そうだね、消えなければいいよね。でも、それは無理だよ。僕はもう死んでる。もっと生きたかった、でもそうや、さやかには会えてる、そして、まいにも…。頼んだよ、僕達の子どものこと。」
「ええ…。」
オルゴールの音共にようの姿は見えなくなった。
「先生!」
「そうや…。追ってきたの?」
「ああ、そうだよ。先生、ようさんは俺の父親なんだろう?」
「どうして、そう思うの?」
「彼はもういないんでしょ、だから恨まれても良いから生きるように自ら恨まれるように仕向けた。違う?」
「そうね、ようは天涯孤独にしたくなかったのよ、さやかとあなたを…。」
「そう…。帰ろう、先生。」
「そうね、帰る前に一つお願いして良い?」
「いいよ、何?」
「お母さんって1度だけで良いから呼んで…。」
「わかった…。お母さん、帰ろう。」
「ありがとう。」と二人は家に向かって歩き始めた。
その頃、さやかはピアノを弾いていた。
「もし、会えるならもう一回ママに会いたい。お願い、会わせて。」と弾き終わり、スピーカーから弾いたものが再生されると目の前が暗くなった。
「ママ?」
「さやか、また来たの?」
「うん…。どうしてもママに会って聞きたいことがあるの?」
「何?」
「私のパパはようって人なの?」
「ええ、そうよ。あなたは今1人なの?」
「私は1人じゃないわ。そうやと先生が一緒にいてくれてる。」
「そうやって誰?」
「私の双子の弟よ。ママは忘れちゃったの?」
「私の子どもはあなただけよ。よく思い出して、七五三の時にそうやはいた?」
「いたはずよ…。」
「いなかった。そこにいたのは私とさやかだけよ。」
「嘘よ…。どうして、そんなこと言うの、ママ。」
「あなたのためよ、現実をみなさい。」
さやかは涙を流していた。
「ママ、私はどうしたら良いの?」
「さやか、それは自分で考えなさい。ごめんね、私はこれしかもうできないの…。」と言い残し目の前が暗くなった。
「私はひとりぼっちなの?」
しおりを挟む

処理中です...