音が消えるまでに

優希ヒロ

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現在(そうやサイド)

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「来れたのか?」
「そうみたいね。」
「お父さんは?」
「そこに!」とベッドで今にも息をひきとりそうな姿だった。
「お父さん、起きて!死なないで!」
「私とお話ししようよ、1度も話すことなく死んじゃうなんていやよ、起きて!」
「ようくん、ずっと隣にいさせてくれるんじゃなかったの?逝かないで、私たちを置いてかないで!」
(声が聞こえる…。誰の声だ?)
(目が明かないのに誰がいるのかわかる、まい、そうや、さやかなのか)
(必死に叫んでる、生きてって)
(さやか、1度も話せてなかったよね、ごめん…。)
(そうや、約束守れなかった、ごめん…。)
(まい、君に1度も言わなかったけど愛してる…。)
(これで最後なんて嫌だ!起きてやる!)と体を動かそうとしたが、動かない。
「ようくん!」
「お父さん!」
「くそ親父!ここで死ぬなんて絶対許さない、起きろ!起きろよ!起きてくれよ、お父さん…。」
「あれ、体が消えていってる!どうしよう?」
「まだ消えるなよ、まだ何も言えてない、これが最後なんて嫌だよ。終わらないで…。」
「ようくん、待ってるから!絶対帰って来て、約束よ!」と言い残し、3人は消えた。
そして、3人が目を開けるとまおが曲を弾き終えていた。
「ようくんは?」
「…。」3人は横に首を降った。
「そんな…。」
「変えられなかった、お父さんごめん…。」
「お父さん…。」
「ようくんのバカ!1度も愛してるって言ってくれなかった。1度くらい言ってよ!」
「まい、愛してるよ。」
「えっ!」と3人は顔を見合わせた後で部屋の入り口を見た。
「お父さん!」
「お父さん!」
「生きてるんだよね、夢じゃないよね?」
「ああ!聞こえたよ、3人の声。だから、生きていられたんだ。」
「でも、思い出はないよね?」
「大丈夫さ、作れば良いよ。時間はまだまだある。」
「俺たち家族の物語はこれからだ!」

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