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転生者

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 俺はここのところうじうじと悩んでいる。こんなんではダメだ!そう思ってもいつの間にか深く考え込んでしまっているのだ。
 大会に出場しては毎度毎度良いところまではいく。だけどあと一歩壁を乗り越えられなくて優勝できずにいる。ベスの背中はいつの間にやら遠ざかり、いつの間にかライムの背中を見るようになってしまい、彼女の背中さえ遠ざかって行っているような気さえするのだ。
 俺は転生者だ。この世界生まれではない。いや、身体そのものはこの世界の人間のものであり、男親も女親も最強クラスの血を受け継いでいる。
 それでも二十歳を過ぎてもここまで結果が出ないのは、やはり俺が転生者であり、この最強クラスの身体の本来の持ち主ではないからなのでは?とどうしても思ってしまうのだ。
 地球育ちであり、そこで32年間生きてきた記憶がバッチリとある俺は、赤ん坊からこの世界で生きてきた記憶があるにも関わらず、未だこの世界に異世界を感じてしまっているし、この身体も本来は他の人のものという申し訳なさみたいなものを感じてしまっているのだ。
 その割に、格闘技でも酒でも無茶をしまくっているけど。

 改めて、異世界スクエアジャングルとはどんな世界なんだろうと思う。地球にいた時も日本というそんなに広くない面積の国家に住んでいて、さらには面積の広い順では下位になる狭い県に定住していて、旅行に行く時ぐらいしかそこから離れることもそんなにはなかったんだけど、テレビやネットで世界中の景色を観ることぐらいはできていた。たとえば、どんな食べ物が名物なのかとか、どんな風習があるのかとか、そんなことも知ることはできた。
 もちろん、テレビもネットも写真付きの本もないこの世界では、自分の足で移動するしか観ることはできない。ただ、観るという視覚以外にも花の匂いや雑踏の音、名物料理の味や温かさ、あるいは冷たさといった五感の全てを味あうことができる。その街であり村であり、もっと他の場所でありその空気を直に感じることができるのだ。
 あるいは、たとえば大会の開催される街に向かう移動中に目に映る森、耳に聞こえてくる小鳥のさえずりなども、この世界、スクエアワールドそのものと言えるだろう。

 俺もこのスクエアワールドいう世界の一部なのだ。今まで格闘技の大会に出て強くなっていくことしか考えていなかったけど、これからはなるべく大会以外のこと、自然や人々の営みなどにも注意を向けてみようと思う。
 もっともっと、スクエアワールドを感じてみようと思う。そして、多少なりともこの世界の人間なんだ、と感じられたら、越えられない壁を越えることができるのかも知れない。ヒントぐらいは掴めるのかも知れない。
 悩むのはやめて、世界中を旅してみようと思う。幸い大会の賞金があるしある程度の旅の資金はある。たくさん感じてみようと思う。スクエアジャングルという世界を。
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