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第5章 悲しき懺悔
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しおりを挟むジョシュアは12歳の頃、教会で暮らしていたと言った。その時、偶然僕らの奉仕活動とかち合った。
その頃はまだ先輩にくっついて行っていたころだ。僕は一体何をしていたのだろう。12歳のジョシュアと何を話したのだろう。
「イーサンとは奉仕活動が終わってから話をしたんだよ。本当に覚えていない?」
そう問われるが、あまり覚えがない。百回を超える奉仕活動だ。そこには常に大勢の人々がやってきた。
なかには僕らには到底診ることのできない重病者や重傷者もいたのだ。それを先輩たちと、長じれば後輩たちとああでもないこうでもないと悪戦苦闘をする。
彼らにとって僕らは医者だ。何かしてくれると期待している。だが、僕らができることは限られていた。そんななかで、元気であるはずの子供のことを覚えているのは難しかった。
「イーサンはね。俺達ガキが配給された飯を食べてた時、隣に座ったんだ」
確かにそんなことは何度かあった。僕は寮にいるなかでは裕福な方ではあったが、やはり無料で配給されるご飯は有難い。
美味しくないのは承知でも、奉仕の日の食事は楽しみの一つだった。教会の高い天井の下。見事なステンドグラスが神様の後ろで輝いている。そんな場所で振舞われた配給食。誰もが貪るように食べていた。
『先生はどこのお医者様?』
僕の隣に座ったジョシュアはそう尋ねたそうだ。その時彼は12歳。まだ背も低く、縮れ毛を鍔付きの帽子で閉じ込めていた。
『ロンドン大学の、まだ学生だよ。先生なんてもんじゃない』
僕らしい答えだ。
『先生よりイーサンって呼んでくれたらいい』
『もし、俺が怪我をしたら、イーサンのところに行ってもいい?』
『ええ? そうだな。僕は大学を卒業したら、故郷の診療所を継ぐつもりなんだ。今からまだ4年も先の話だけれど』
当時、父はまだ存命で、診療所の医師だった。母は看護師。その頃から既にジュリーは看護師として勤めていた。父は僕が研修医時代に亡くなり、母は僕が帰郷してすぐ、後を追うように天国に行ってしまった。
『へえ。その故郷はどこ? 俺、絶対そこに行く』
『そうか? 良かった。じゃあ僕は患者を一人確保したわけだ。故郷はウィンブルドンだよ。ここから馬車で一時間もすれば着くだろう』
『ウィンブルドン……』
『知らないか? テニスの大会が行われる場所だ。ロンドンから近いけれど、信じられないくらい田舎だよ。綺麗な森と湖、青い空に澄んだ空気』
僕はそんな風にジョシュアに語ったと言う。
ああ、そうだ。そんなことがあった。僕はその日の空気や配給されたスープの匂いを思い出す。医学の難しさ、貧困と富、都会の閉塞感に苛まれながら、いつも心には故郷の青い空があった。
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