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第7章 後見人
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しおりを挟むこうして春の日差しが雪を溶かし始める頃、僕はようやくジョシュアの後見人になれた。
裁判所に僕とジョシュアはその日のためにあつらえたジャケットと揃いのズボン、おろしたての靴を履いて向かった。ジョシュアはハンチング帽のような柔らかい生地の帽子を被り、どこかの子息のように見えた。
「はい。承知しています。よろしくお願いします」
ウィンブルドンの地方裁判所の判事に問いかけられ、ジョシュアはそう答えた。あの日、彼が想像した通りに帽子を脱いで。
「結婚式みたいだったね」
「ははっ。そうか? そうかもしれないな」
街の中心であるメインストリートを歩きながら、ジョシュアはそう呟いた。手には市場で仕入れた食材を抱えている。久しぶりにここまで来たので、色々と買い込んだ。
「今日は、僕たちの記念日だ。帰ったらお祝いしよう」
「賛成。そうと決まったら早く帰ろう」
その日、僕らは幸せの絶頂だった。二人で台所に立ってご馳走を作り、ワインと一緒にその料理を囲んだ。笑顔と涙で僕たちは色んな話をした。
そしてその後、ジョシュアの誘いに乗り、どういうわけかダンスを踊る羽目になってしまった。
「俺が教えてやるよ。イーサンのダンスは酷いからな」
「苦手なんだ。無理言うなよ」
彼のリードで僕は拙いステップを踏む。
「今度は左足だよ。ほら、自信を持って。いてっ」
「あ、ごめん」
「こんだけ踏まれたら、さすがの俺でも引く」
「ジョシュアぁ」
僕が情けない声を出すも、彼は体を回転させて器用に踊る。音は彼のハミングだけだったけれど、それもまたうっとりするほどの美声だった。
「あ!」
僕はまた彼の足を踏んでしまった。ジョシュアは笑いながら床に転がった。僕は慌てて彼を追いかける。
「大丈夫か? ごめん」
「ああ、イーサン、大丈夫だよ。でも、もう踊るのはやめよう。イーサンが女性と踊ることはないと確信したし」
「酷いな。まあ、僕もそのつもりだけど」
僕は寝転がる彼の上に四つん這いのようになる。ジョシュアは僕の顔を見上げ、手を伸ばしして眼鏡を取りはずした。彼がクリスマスにプレゼントしてくれた丸眼鏡だ。
「イーサンのグレイの瞳。宝石みたいに綺麗だ」
「それは……君の瞳の話だろう」
ジョショアの両腕が僕の首の後ろに絡みついてきた。髪を束ねている紐を器用に外し、長い髪が僕の頬に落ちてくる。
「こら、何をする。幾つになっても悪戯小僧だな」
「だって、俺はありのままのイーサンが好きだから。伸ばしたままの髪もチャーミングだ」
「ふふ。それは嬉しいね」
僕は自分の体の下にいるジョシュアの額にキスをした。
「ねえ、イーサン。俺達は人様に愛し合ってるって言えないけど……」
ジョシュアは深い湖のような青い瞳を潤ませて僕を見つめる。
「うん……」
「一緒に手を繋いで歩くこともできないけど……」
「そうだね」
「それでも、俺のことを愛してくれる?」
僕の首や背に置かれた彼の指に力が入るのがわかる。そして少し、震えているのも。僕は静かに体を彼の上へと重ねていく。彼の指に導かれるように。
「愛してるよ。ジョシュア。僕の心は永遠に君のものだ」
僕は思いの丈の全てを注ぎ込むように、彼に口づけた。誰が何と言おうと僕はジョシュアを愛している。必ず君を守ってみせるから。砂糖菓子よりも甘い君。僕は君を離さない。
「イーサン……」
君が僕の名を呼ぶ声がする。それはいつも僕の全てを蕩けさせていく。僕らは夜が更けるのも気付かずに、絨毯の上でお互いを求めあった。
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