【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第9章 誤解

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「ジョシュア! 何をしてる!」

 陶器でできたバスタブに、ジョシュアが背中を向けて倒れているのが見えた。バスタブの中に張られた水は真っ赤な線を幾重にも描いている。

「ジョシュア、ジョシュア、なんてことを」
「イーサン……」

 僕は慌てて抱き起す。白を通り越した真っ青な顔。そして手首からとめどなく血が流れている。すぐに自分のタイを外して腕を縛り、往診用鞄から取り出した包帯でしっかりと巻き上げた。

「ジョシュア、しっかりしろ。大丈夫だ。傷は浅い」
「えへへ。これで俺のこと追い出せないでしょ? ……イーサンは怪我人には優しいんだ」
「おまえ、そんなことでこんな危険なことを? 死んでしまうじゃないか!」
「いいんだ」
「良くない、おまえ、勝手にそんな……」
「俺、イーサンと離れ離れになるくらいなら、死んだ方がマシだもん。言ったろ? 俺は、イーサンと一緒にいるためなら……何でもするって」

 苦しそうに言葉を繋ぐジョシュア。

「ジョシュア……馬鹿野郎。だからってこんなこと。おまえが死んだら、僕も生きていけない」

 僕はジョシュアを抱きかかえ、毛布で包むようにしてリビングのソファーに寝かせた。白い包帯は見る見るうちに赤く染まっていく。

 ――――縫った方がいいだろうか……いや、とにかく止血が優先だ。

 僕は診察室から使えそうな薬や包帯の代えを持ってきて、包帯を巻きなおし、薬をジョシュアに飲ませた。

「さあ、これを飲んで……大丈夫だから。君はもうあの頃の君じゃない。ずっと丈夫で健康だ。こんなことで死ぬもんか。僕が絶対。死なせない」
「イーサン……俺……」

「ジョシュア、すまなかった。僕が疑ったりしたから、君はこんなことを。僕はずっと君といる。なにも心配しなくていいんだ」
「約束する?」
「約束する」

 僕はジョシュアの手を握ってそう言った。彼は口角を少し上げ、安心したのか静かに目を閉じて眠った。



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