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第2章 容疑者
容疑者 1
2015年 9月
ライブハウスで19歳の少年が殺された。捜査本部は痴情の縺れが動機と睨み、被害者の男関係を調べ尽くした。
だが、被疑者はおろか手がかりも出ず、5ヶ月がいたずらに過ぎていく。そこで浮上したのが逆の発想だった。
倉敷塁が好きだった男。捜査線上にあがったのは、穗隆がそうであって欲しくないと恐れていた男だった。
取り調べで初めて見た時から、彼の心を大きく揺さぶった。捲土重来のギタリスト、華山禮だ。
「色々突き詰めていくと、どうやら彼のようですね」
「まさか寝てない奴だったとはな」
「片思いってことっすか」
捜査本部のホワイトボードに、華山の写真が被害者の隣に並べられた。こうして見ると、系統は違うが二人ともイケメンで芸能人のようだ。
「なんだかな。まあ、華山のほうはゲイじゃなかったんだろうな。気の毒に」
「どっちがですか。真嶋さん」
班長のボヤキに穗隆直属の先輩、小林が面白がって聞いた。容疑者が浮かばないままいたずらに日が過ぎたというのに、彼はいつも能天気だ。
班長はじろりと睨んだが、能天気も刑事には必要な要素と分かっているのでお咎めはない。真面目ばかりでは真相に近づけないこともある。
「両方だな。ま、俺は華山に同情するかな。もし犯人だとしたらさらに同情する」
「違いない」
穗隆は二人のやり取りを黙って聞いていた。彼と会ってから、穗隆は華山のことを忘れた日はなかった。ずっと気になり、ずっと彼のことを考えていたのだ。
一旦は捜査の対象から外され、心の片隅に追いやったがここでまた浮上した。それどころか、ホワイトボードに容疑者の一人として貼られている。
ギターを弾いて俯き加減にしている華山は、ライトに照らされカリスマ的な美しさを漂わせている。普通の女性なら、思わず『カッコいい』と言うだろう。
「おい、皇樹。面談の時は、何も思わなかったのか?」
「あ、はい……すみません。人を食った物言いをする奴でしたが……特には」
「皇子様も惚れちゃってたりしてな!」
「な、なに言ってんですか」
「やめんか、小林。とにかく彼の当日の動きを、もう一度洗い直そう」
はいっ。と部下たちが一斉に声をあげ、会議室を後にする。穗隆も先輩の小林とともに街へと散った。
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