毒を食らわば皿までと【完結】

紫紺

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第6章 発露

発露 2



 ようやく起き上がれるようになり、言語と歩行のリハビリが始まると、靄のかかっていた脳内が急速に回復しだした。
 寝たままになっていた時から、ずっと気になっていたこと。鮮明になってきた頭の中で、確かめずにいられなくなっている。

 リハビリでへとへとになっても、穗隆は朱里に持ってきてもらったモバイルで、情報を検索した。穗隆が持っていたスマホは、転落した時に壊れてしまっていた。

 ――――事件は、まだ解決していない。

 モバイル機器に関しては、1年前より軽薄になり、機能が増えたのが何となくわかった。だが、大きな差は感じなかった。
 それよりも驚いたのは、ツイッタなどのSNS利用者が、格段に増加していたことだ。おかげで、素人でも入手できる情報が多くなった。その真偽のほどは別として。
 しかし、それでも華山の行方はわからない。警察もまだ掴んでいないと考えていいだろう。

 島根の地方警察署に勤務していた穗隆は、昨年度から本庁扱いになっていた。つまり、警察庁人事部扱い、休職中の身分だ。
 今後のことについては、7月までにカウンセリングなどを受けて決める。と手紙が送られてきた。

 ――――小林さんに連絡したい。

 朱里によると、穗隆の頭がはっきりしたらここに来るという。もうずいぶん覚醒したと、自分では思っている。
 だが、スマホが壊れたことで、個人の連絡先はわからない。まさか警察署に連絡することもできず、焦れていた。その穗隆に、驚くべきニュースが飛び込んできた。


「なに!?」

 朝食が運ばれる前、いつものようにネットニュースを探る。事件ニュースの項、それは所謂一面を飾っていた。穗隆は、思わず大声を上げる。

『元教師、教え子が刺殺。容疑者はその後自殺』
「どうした? なんかあったか?」

 その頃穗隆は、個室から大部屋に移っていた。体重もほぼ戻ってきており、バイタルも安定していたからだ。
 同室のおっさんたちが、声に驚いて顔を覗かせる。肩や足の手術を受けた面々だが、暇を持て余していて、何事にも首を突っ込んでくる。

「あ、いえ。すみません。なんでもないです」

 朱里がお見舞いに着た後なんかは、特に質問攻めに合う。適当に流してはいるが、これは話し始めるとややこしくなる。穗隆は彼らを適当にあしらい、モバイルに目を走らせた。

 ――7月××日、静岡県〇〇市在住の元教諭、倉敷正敏氏が刺殺された。4年前、倉敷氏の義理の息子、塁さんが同じく殺され、親子二人が凶行により命を落とすこととなった。
 容疑者とされる20代の元教え子は、遺体で発見された。自殺と見られる。また、容疑者が残した遺書には、4年前の倉敷塁さん殺人事件にも、関わったとされる記述があった。静岡県警の取材により判明した――

 速報のため、詳細はまだ出ていなかった。自殺した容疑者の名前もない。だが、穗隆が思い当たる名前は、一つしかなかった。

 ――――庄司一馬。

 4年前に殺された倉敷塁の同級生。彼の家出に加担し、その後も何度か会っていたと小林が言っていた。

 そして最も気になったのは、最後の一文だ。『塁の殺人事件にも関わった』。



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