毒を食らわば皿までと【完結】

紫紺

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第6章 発露

発露 5



 新幹線の中、真嶋はじっとスマホを睨んでいた。窓の向こうには、そろそろ富士山が姿を見せるころ。山が好きというわけでもないが、小林はそわそわしていた。
 名古屋駅からこだまの自由席、三人並んで座る。周りは家族連れなどもいて、楽しそうな笑い声が聞こえていた。 

「あ、田畑さん、富士山っすよ!」

 新幹線から富士山が見える。夏の富士は、その雄大さを見せつけてはいたが、雪のない姿はどこか物足りなさを感じる。

「はあ? おまえは遠足気分か。まあ、雪がないとただの大きな山だな」
「ええ? それはあんまりだ。山の裾がこう長く伸びる。フォルムが綺麗じゃないですか」
「今、思いついただけだろ。それ」
「あれ、わかりました?」

 相変わらず軽い。

「もう……これは決まりかな」

 それらに全く呼応せず、真嶋がため息とともにそう吐いた。スマホを田畑に渡す。

「真嶋さん、こんな小さな字よく読めますね。私は最近、老眼が出てきてこのサイズはきついですよ」

 隣の小林が手を伸ばし、二本の指を画面の上で滑らした。

「こうすれば、大きくなりますよ」
「知っとるわ」

 ムッとした表情を小林に向けてから、田畑は文字を追った。

「確かに……これは、犯人しか知りえない情報ですね」

 二人が見ていたのは、庄司が遺した遺書だった。それを静岡県警が写真にし、送ってくれたのだ。小林が目にしたそれは、粒のそろった綺麗な字で書かれた、便せん3枚に及ぶ力作だった。

「庄司は……やはり倉敷の被害者だったんですね」

 小林が小さく首を振った。

「被害者か……だとすると深刻な被害者だったようだ」

 真嶋は窓に目をやったまま応じた。

 ほどなく、新幹線が目当ての駅ホームに滑るように入っていく。登山客には絶好の季節。駅は、登山姿の老若男女で溢れかえっている。
 三人は旅行者に混じり駅へと降りたった。登山シーズンに沸く駅。装備を整えた人々が、彼らの前を通り過ぎていった。


 庄司一馬は、小学校低学年から倉敷の餌食となっていた。肌は白く丸顔、ぱっと見女の子のように見られる、可愛いタイプの少年だ。
 彼は大人しい性格が災いして、いじめの対象になっていた。一馬には年子の弟がいたが、見た目も知恵も早くから目立つ、所謂神童タイプ。一馬の両親は優秀な弟にご執心、普通で目立たない一馬のことはおざなりだった。
 そこに付け込んだのが、教師の倉敷だ。

『先生が守ってやるから大丈夫だ』

 倉敷は教師の特権をフル活用し、彼に近づいた。まだ、小学生低学年のいじめだったこともあり、倉敷の介入で難なくいじめは落ち着いた。だが、そのことが、一馬の人生を狂わせてしまった。




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