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第6章 発露
発露 6
――――――僕は、倉敷先生が好きでした。
一馬の遺書に書かれてあった一文だ。それは、捜査員にこの事件の複雑さを今更に突きつけた。
一馬は小学校2年生からおよそ3年の間、倉敷から性被害を受けていたのだが、本人はそれを愛情と受け止めていた。
一馬が小学5年生の頃、塁が現れた。倉敷が塁に触手を伸ばしたことで、一馬は捨てられる。本来なら安堵するところだったが、彼は倉敷から無視されたことにショックを覚え、不安定になった。
一馬が塁に近づいたのは、彼が倉敷の義理の息子だったからに他ならない。塁は何も語らなかったが、一馬はすぐに気が付いた。自分が捨てられた理由を。
一馬は塁の友人を装いながら、憎しみを育てる、歪な関係を続けていった。
中学卒業間近、一馬はついに塁から真実を告げられた。そして、家出の計画も打ち明けられる。
――――――チャンスと思いました。これで塁がいなくなれば、先生がもう一度僕を見てくれると。
だが思惑は外れた。塁がいなくなり、倉敷は次の獲物を探したが、それは一馬ではなかった。一馬は歳を取り過ぎたのだ。
倉敷が中学生を相手にしたのは塁だけだ。それは、彼が特別だったのか、身近にいて簡単だったからなのかはわからない。倉敷は、訪ねてきた一馬を冷たく追い返す。そしてまた、自分の教え子たちを標的にした。
――――――僕は知りたかった。何故塁は、中学生になっても先生に愛されたのか。もし、あのままあいつが家に残っていたら、それでも先生は塁を愛したのか。
一馬は塁と連絡を取り合っていた。友達のフリをして、彼の様子を見ていた。そして一方では、倉敷に狙われた小学生たちを助ける活動も始めた。
それは、子供たちを守るというより、あくまで倉敷が、自分に振り返るのを願ってのことだ。
「なんでこんな奴のことを、全然理解できない」
駅に着くと、静岡県警のパトカーが迎えに来ていた。3人は後部座席に座り、地元の刑事と話す。呻く真嶋に、地元の刑事はこう答えた。
「歪んだ心理でしょうかね。私らも全くわかりませんでした。倉敷を早期退職に追い詰めた密告も、一馬からのものでしたから」
塁が殺される1年前、倉敷は早期退職をして教職を辞した。それは、倉敷が子供たちに性的暴行を加えていると、教育委員会に密告があったからだ。
それまで、噂はあっても調べてこなかった教育委員会も、ようやく重い腰を上げる。窓口になったのは一馬自身だ。密告したことは黙ったままで、子供たちの実情を語り、調査に協力した。
ほどなく、倉敷の退職が決まった。
――――――先生はこれで狩り場を失った。僕は、先生から全てを奪ったんです。僕以外の全てを。
だが、倉敷が次に取った行動は、一馬にとって屈辱的だった。時間に余裕ができた倉敷は、塁の行方を探した。
母親である妻を責めたて、居場所を突き止めようとしたが、彼女は既に塁との連絡が途絶えていた。倉敷は、塁が親しかった友人を探すが、それが一馬だと知るとさすがに迷ったようだ。
――――――先生は僕にこう言いました。妻が心配しているので、塁の居場所を知りたい。私も父親として気になっている。でも、僕はすぐにわかってしまった。先生が塁を探す訳を。もちろん、僕は知らないと答えました。
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