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第6章 発露
発露 8
「え」
「紹介されたってさ。塁は何も言わなかったそうだけど……一馬はすぐにわかったと言ってた」
『塁はこの人のこと好きなんだなって。あいつも結局、女子じゃなくて男を好きになってた。誤解のないように言いますけど、倉敷の被害者のなかにはゲイになる奴がいて。塁もそうなんだって思ったんです。
まあ、部屋貸してもらってるのが男だったから、薄々そうかなと感じてましたけど。あ、自分はゲイじゃないですよ』
一馬の返答。でも、最後のそれは真っ赤な嘘だった。
――――塁はやはり華山のことが好きだった。どんなつもりで塁は、華山を一馬に会わせたのだろう。塁の養父を好きだった一馬。このことが、悲劇を生んでしまった。
「じゃあ、庄司一馬は華山と面識があった」
「そうだ。あの時、塁の所へは一度しか行ってないと言ってたが、それは嘘だ。遺書では数回訪ねている。華山とも、もっと親しかったかもしれないな。まあ、でも、事件には関係なかったんだから気にするな」
――――本当に、関係ないのだろうか?
小林は気を使ったようだが、果たして本心かどうか。それが穗隆には見極められなかった。一馬も塁も倉敷も死んでしまったのだ。今更、何もわからない。
「当日のアリバイはどうだったんですか?」
「行きはともかく帰りがな。塁の死亡推定時刻が夜中の3時から朝の6時だから、電車だと、どんなに早くても実家に帰りつくのは8時以降になってしまう。一馬はその日は自宅にいて、家族の証言だけど、朝の7時には、朝食を食べに降りてきていた。そのあと友達とも会ってるから、少なくとも7時半には地元にいたんだ」
真嶋さんたち捜査本部が、庄司一馬を追いきれなかったのはここにあった。動機はともかく、静岡から塁を殺すには、電車しか足のない一馬では不可能だった。
「愛知から静岡で最も速いのは、新幹線になりますよね。始発は……新富士が8時着。ひかりにしても静岡着が7時15分……15分じゃ実家に帰れないですね」
二人の故郷は富士山のふもとである『新富士』駅が最も近い。そこから、またバスか自転車で走ることになる。穗隆はスマホでさっと調べて言った。
「ああ。当時は免許も持ってなかったしな。俺、タクシーや高速バスとかも調べたけど、何も出てこなかった。でも、遺書でその謎は解けたよ」
「なんて書いてあったんですか?」
解ければなんということもなかった。一馬は事件前日の夜、8時に部屋へ上がるとすぐ、窓から外に出る。新幹線の最終に乗って名古屋へ。
塁を扼殺した後の帰りは、深夜を走る長距離トラックに、静岡まで乗せてもらっていた。後は在来線を使っても、7時に着くのは余裕だ。
「ライブハウスから30分くらいの場所に、長距離トラックが立ち寄るサービスエリアがあるんだよ。仮眠していたトラックを狙ったんだな。以前もシミュレーションしてたみたいだ。裏を取りに行ったら、そういうのを乗せたって……噂はあったと言われたよ」
「そういうの? 噂って、どういうことですか」
一馬は、運んでもらうお礼をしていた。代償は体だ。運転手は興味も手伝って、それを受け入れる。だが、大っぴらに話すことも出来ないので、自然と秘密は守られた。
「一馬が容疑者に浮上した時、長距離トラックのことは考えつかなかった。もっと柔軟に考えないと駄目だな。まさか、深夜にそんな動きをしてたとは思わなかったよ。土地勘もなかったはずなのに」
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全ては用意周到に準備されていた。そんなことをしてまでも、塁をこの世から葬り去りたかったのか。倉敷を取り戻したかったのか。
「動機は……嫉妬ですか?」
小林は言葉にせず頷いた。
「倉敷が、塁の居場所を突き止めようとしているのを知った一馬は、焦ったんだな。もう二度と、自分に振り向いてもらえない。それに、一馬は塁をずっと憎んでいたから」
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