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第6章 発露
発露 9
――――――先生は塁を探していました。僕の他にも、彼が親しかった人に聞いているのがわかって、僕は心配になった。
もしかすると、塁は僕以外にも居場所を話しているかもしれない。そう考えだすと、居ても立っても居られなくなりました。
僕はずっと塁が憎かった。あいつのせいで、僕は先生に見てもらえなくなった。そう思い返すと腹が立って。それなのに、あいつは向こうに好きな人を作ってそばにいる。許せなかった。
僕は、あいつを殺す計画を立てていました。それはそれまで、ただの計画に過ぎなかったけれど。実行することに決めたんです。
家族は僕のことを、ずっと前から見なくなっていた。だから、夜中にいなくなったって誰も気に留めない。僕はあいつに『捲土重来』のライブの日を聞いていたから、その日を選んで出かけました。
塁は思った通り、ライブハウスにいました。出てきたところを掴まえて、さも遊びに来たように振舞いました。
『おまえの親父さんが探してた。本気で探してるみたいだぞ。どうする?』
『そうなのか……なんでだろう。もう、忘れて欲しいのに……』
『ここから、違う場所に移ったらどうだよ?』
僕は最後の望みをかけて、そう言いました。もし、この時彼がどこかに移ると言ってくれたら。僕は、彼を殺さずに済んだかもしれません。
『いや、俺、ここにいたいや。あの人のそばを離れたくないんだ。もうすぐツアーが始まると言ってたから、それについていくよ』
『それまでに来たらどうするんだよ。その、彼のところに匿ってもらえるのか?』
『いや……それは無理だと思う。オレ、片思いだから。でも大丈夫。今、一緒に住んでる人はオレにぞっこんなんだ』
狡い奴……そう思いました。好きな人がいるくせに、他の男に寄生して。僕はずっと一人の人を愛してきたのに。その人は、こいつをずっと思っていて僕を見てくれない。僕は、苦しくて息もできないんだ。
殺すしかない――――。こんな奴、殺したって構うものか。ずっと抱えていた殺意を、解放した瞬間でした。
僕は捲土重来のメンバーに、塁の好きな人がいるのを知っていました。その男に罪を被せるため、殺すのはライブハウスでと決めていました。塁にもう一度ライブハウスを見たいと言うと、すぐに連れて行ってくれました。鍵の壊れた裏口から、楽屋に入れたんです。
『なあ、塁。おまえ知ってたかな』
『何を?』
『僕も、倉敷先生に可愛がられていたんだ。知ってたかな?』
『ええ!? いや、もしかしたらと思ったこともあったけど。まさか、本当に?』
『ああ』
『ごめん、一馬! すまない。あの男が一馬にしたこと、謝ってすむことじゃないけど……』
塁は僕の目の前で、土下座をして頭を下げました。勘違いも甚だしい。どこまで僕を馬鹿にするんだ。もう、自分を抑えることができませんでした。
『やめろよ。謝って済むもんか!』
僕は奴を突き倒し、馬乗りになりました。塁はまさか殺されるとは思っていなかったのか、抵抗しなかったです。
ちょうど塁が、捲土重来のライブタオルを持っていて。そいつで絞めようと思ったのですが、短かすぎました。なのでそれを首に置いて、手で締めました。
素手で首を絞めたら、指紋が残ると聞いたことがあったし。罪を被せるにも、都合がいいと思ったからです。
『何するんだ。待て、一馬!?』
『僕は先生を愛してる。先生だけが、僕を見てくれたんだ』
『か、かずま……うそ……そ……んな』
『だけどおまえが現れてから、先生は僕を見てくれなくなった! 僕は、ずっとおまえが憎かったんだ。友達なんかじゃない! おまえさえいなければ、僕は!』
塁は、僕の言葉に何を思ったのかはわかりません。最初は驚いて暴れていましたが、そのうち、観念したように目を瞑りました。
両手で掴めるほどの細い首。僕は無我夢中で、体重をかけて絞めました。あいつの体に張りというか、力が抜けていくのがわかって……。完全に塁が動かなくなったので、死んだのだと思いました。
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