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第9章 聖夜
聖夜 3
それからのこと、穗隆はあまり覚えていなかった。無我夢中。押し寄せる感情の波があまりに激しすぎて、全てが無意識のようであり、夢か現か判別すらつかなくなっていた。
ただただ本能に従った。
華山は、穗隆を自分が泊っているビジネスホテルに連れて行った。
部屋に入った途端ベッドになだれ込むと、服を脱ぐのも脱がすのももどかしく、堰を切ったように二人はお互いを貪り合う。
言葉を交わすこともなく、シングルベッドが軋む音と二人の荒い息遣いだけが部屋中に間断なく響く。それはまるで獣のような荒々しさとしなやかさで、穗隆を襲い甘い喘ぎ声を促した。
穗隆は何度も頂点に達しながら、それでもどん欲に求めた。
「はっ」
深夜になり、ウトウトしていた穗隆ははたと目が覚める。隣で同じように眠りに落ちている華山に気付くと、また挑むようにして、彼の胸の上に乗り上げた。
「うん? おい、少しは寝かせてくれ。たっぷり可愛がってやったろう?」
それと気づいた華山が、ため息交じりに言葉をかけた。だが、まんざらでもなさそうに笑みを浮かべている。
「ごめん……なんだか、寝てしまうと怖いんだ。目が覚めたらこれは夢で、おまえがいなくなってしまっているようで」
「ああ……そうか……4年も会えなかったからな。でも穗隆、これは夢じゃない。現実だ。安心しろ。俺はもうずっとあんたの傍にいるよ。クリスマスに再会したんだ。神様も俺達を祝福してくれるさ」
華山は胸の上に乗る穗隆の頭を、慈しむように撫ぜた。
「本当か? おまえの言うことを信じろと? 手錠があればつけておきたいくらいだ」
穗隆はそう言いながら、華山の下腹部に唇を寄せる。
「どこに着ける気だ。そうか、あんた、もう刑事じゃないんだな」
「皇樹ですらない」
真面目な口調で、穗隆は付け加える。体を起こし、華山を跨いで四つん這いになると、上から見下ろした。
「そうか……確か複雑そうな家庭だったな」
「知らないくせに」
「いや、知ってるさ」
悪態をつく穗隆の頬に、華山は両手を伸ばす。そして自分に引き寄せてキスを促した。
穗隆は少し顔を斜めにし、高い鼻をずらし唇を食んだ。舌が絡まる音が耳に心地よい。穗隆は華山の少し厚めの唇を何度も噛み、舌で味わった。
「はあ、なんてディープなキスだよ。まだ足りないと見えるな」
呆れたように、華山は笑って顔をそむけた。それでも穗隆はその唇を追う。
「まだだ、全然足りない。おまえ、覚悟は出来てるんだろうな? 僕に再会したことがどういうことか、理解してるんだろうな?」
執拗な穗隆の欲求に、華山は眉を顰めた。
「ずっとそばにいると言ったろ? これから何度でも付き合ってやるから慌てるな。それより、あんたは俺に聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「それこそこれからいつでも聞ける。今は、おまえが辟易するくらい求めてやる。再会したらそうしようと決めていた」
どうして自分を捨てたのか。それは確かに、穗隆が最も知りたいことだった。殺人犯でもないのになぜ華山は姿を消したか、知りたくないはずはない。
だが、こうして会うことができ、また体を合わせていれば、そんなことはどうでもいい事のように思えた。それよりも、もう二度と自分から離れないよう、がんじがらめにしたい。
「もう、十分辟易しているんだが……あ、ううん、しょうがない奴だ」
穗隆は華山の下腹部まで下りていって、指と口で愛撫する。だらしなく力を抜いていたものは、再び形を成し硬くなっていった。華山の大きな体が起き上がる。
「壊しても知らないぞ」
「むしろ、そうしてくれ」
華山は穗隆をベッドに沈め、今宵何度目か、彼の上に覆いかぶさる。穗隆の長い指が、白いシーツを手繰り寄せた。
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