毒を食らわば皿までと【完結】

紫紺

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最終章 独白

独白 4



 山狩りが不発に終わって、僕は島根に飛ばされることが決まった。でも、逆に僕は確信した。あの話に嘘はないと。山小屋は実在すると信じた。
 だから、僕は探し続けた。必ずたどり着いて見せる。これはまあ、僕の意地だな。一度は疑いを持ったけど、おまえも僕に惚れていたはずだという。執念とでも言うか。
 それを頼りに気持ちを繋いだ。命の恩人の望月さんからピックを渡され、実際そうだとわかった時は……素直に泣いたよ。

 そう言えば、朱里が気になることを言っていた。僕が彼女といるときも、ずっと華山似の男を探しているようだったと。つまり、僕が殺した職人に似た男をだ。
 僕はずっと奴を探していたのか? あの男は、既にこの世にいないと知っていたのに。ガキ過ぎた自分が殺してしまったんだ。
 僕は、それでも彼の幻影を探していたのかな。もしかしたら生きてて欲しいと、どこかで思っていたのかもしれない。そんなこと、あるわけないのに。


 1年以上も意識不明だったのには、ざまあないな。全く予想外の出来事だった。
 死ななかったのは、僕の執念深さの勝利だろうか。僕は、何度も華山のいる山小屋を訪ね、あいつに抱かれる夢を見ていたのだ。
 おそらく、それこそが生き延びた理由だろう。医学やら奇跡やら、そんな綺麗ごとじゃない。抱かれる度に、僕の心臓は活発に動き、血流が勢いよく流れたはずだ。

 そして、まるで僕が目覚めるのを待っていたかのように、華山の無罪が証明された。僕が島根に行く前、小林さんが話してくれた『庄司一馬』。塁の同級生が犯人だった。


 この男は、塁の父親にずっと歪んだ愛情を持っていた。自分に初めて興味を示してくれたあの下衆野郎に、恋慕してしまったのだ。
 わからんでもないが、切ない話だな。例え下衆野郎でも、一馬にとっては狂信した相手だ。決して離してはならない相手だったんだ。ガキだったからそれが叶わなかった。まるで、あの日の僕みたいに。

 だから大切なものを守るため、心中したことに、僕は一抹の憧憬を感じた。いつか自分にもそうする時がくるかもしれない。そんな憧れにも似た気持ちだ。
 職人の男を殺したときは、自死するには僕は幼な過ぎた。だが、もし今度華山を逃すことがあるのなら、僕は迷わずあいつを殺し、自分も死を選ぼう。戯れではなく決意だ。

 塁の母親は、まるで僕の母のようだ。現実を見ることができなくて逃げた。逃げた先が少し違ったが。哀れだと思ったのは本心だ。僕も大人になったんだ。
 僕のような息子を産んだことに、彼女は後悔したのかもしれない。ただ、僕があの男に嫉妬して殺したと、そう誤解して死んだのなら、やはり心外だな。


 華山が殺人犯でないことがわかり、僕はもう焦らなかった。何しろ山小屋のことだって、嘘じゃなかったんだ。
 奴が僕を拒まない自信があった。奴と再会したら、じっくりとこの空白を埋めさせてもらおう。そう思っていた。

 でも、いざ実際に目の当たりにしたら、胸に様々なものが込み上げてきて……ギターを弾く華山があまりにカッコよく、僕はどうにかなりそうだった。自分が思っている以上にロマンティストだったらしい。

 華山と再会した夜のことは、実はよく覚えていない。僕の心のギアはとうに壊れてしまって、暴走し続けた。何度抱かれたかも、何度果てたかも、何度挑んだかも、全く覚えていない。
 ただ、無我夢中であいつに縋りつき、喉が枯れるほど絶頂の声を上げた。それでも、全然足りなかったな。




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