カササギは雨の夜に啼く【R18】

第１章

１８ 沼にはまる感覚

　汗を流したかった俺は、一石二鳥とばかりにカササギをバスルームに連れ込んだ。そこで湯気立ち込めるなか、あいつを責める。

「なに……案外せっかち……」

　貪るようにキスをすると、あいつはへらへらと笑って俺をあしらう。まるで熱を上げてるのが俺だけのようだ。

「あ……んん」

　それでも、カササギの体も正直に反応する。俺の指先や舌の動きに、敏感に体をくねらせ、切ない声を上げた。
　濡れた体を拭くのも惜しんで、俺たちはそのままベッドへと移動し、性懲りもなく体を交じり合わす。

「ほん……とに、隅々まで、やるんだな……あん」
「あたりまえだ……おまえは、信用ならんから……」

　はあはあとあいつの荒い息が耳を熱くする。俺の息もあがる。次、こいつがいつ出てくるかわからない。それもあってか俺は止まれない。体の繋がり以上のものを感じてるのだろうか。
　あいつの白い肌に唇を寄せる。傷跡を舐めるように舌を這わす。細い腰を持ち上げ、自分の猛るものを突き立てた。

「あ……ああ」

　喘ぐとともに体を捩るカササギ。それを目の当たりすると全身が痺れた。

　――――沼にはまるような感覚だ。

　挑発されて、誘われて。俺はそれに抗えない。自分が嫉妬深いというのも新鮮な発見だった。俺はカササギに完全に振り回されてる。
　それでいいのか、悪いのか……この日の俺にはまだ、わからなかった。
　


　責め立て疲れ果てて、俺は心地よい眠りに落ちていた。なにか夢を見ていた気がするが、頬に温かな手が触れるのをまどろみのなかで気付き目が覚めた。

「んん……」
「……た、か」
「どうした、カササギ。もう少し寝かせろ……」
「キス……」
「あん？」

　カササギがキスをねだるなんて珍しいな。いつも終わったらさっさと部屋に戻るのに。

「来いよ」

　でも、拒否することもない。俺はあいつを引き寄せる。ディープキスはもうお腹いっぱいだろう。あいつの形のよい唇をついばむように重ね、チュッと音をさせた。

「おやすみぃ」
「おやすみ……」

　あいつの温もりがふと遠ざかる。俺は少し惜しい気がして、カササギの腕を取り、手のひらを軽く舐めた。ぴくりとあいつの手首が揺れ、それがなんだか可笑しくて愛おしい。
　けど、もう眠気がどうにも俺を手放さない。そのまま夢の続きへと落ちていった。