24 / 102
第21話 魂胆
しおりを挟む佐山が選んだのはLAでも有名な老舗スタジオ。世界三大ギタリストや伝説のバンドも使ってたというミュージシャンなら一度は訪れたい名所だ。
米国に来てから何か所か回ったスタジオのなかでも、ここが一番気に入ってた。
「そろそろ昼にしないか?」
満足いくまでさせてると、空腹も気付かずにやってしまう。これを言うタイミングは難しいけど、そこは一心同体なんで。
「ああ、そうだな。じゃあ、1時間休憩にしよう」
涼しいはずのスタジオなのに、佐山の体に汗が滲んでる。くせっ毛も湿気を帯びて余計にくるくるしだした。
ノースリーブから惜しみなく披露されている肩や腕の筋肉がきらりと輝いて、無駄にドキドキしてしまった。
「汗拭いてやるよ」
体を冷やすといけないのと、僕が発情するのを防ぐためにタオルで体を拭く。
「あ、サンキュー。むふふ」
「こら……」
僕の気持ちを知ってか知らずか、あいつはタオルごと僕を抱きしめようと腕を伸ばす。
「疲れたんだよ。いいだろ?」
「それは……いいけど」
おまえの魂胆はわかり過ぎるくらいわかる。ちらりとジェフを見ると、明らかにムッとしてる。でも、まあいいか。ジェフもそれを承知で揶揄ってんだから。
「いい匂いだ……」
僕の髪に鼻をくっつけて匂いを嗅いでる。犬かよ……。僕はあいつの逞しい胸に押し付けられて心臓が波打ってんのに。
「ほら、昼飯食べるぞ。テラスに準備してるから」
頬が熱い。上を向くと、あいつの柔らかな視線が注がれてるのに気づく。
――――キスしたい。
さっきまで繰り広げられた演奏に気持ちが動かされまくって苦しいほどだったんだ。心臓を鷲掴みするようなギター。奏でていた本人が僕に恋してくれてるなんて、信じられない幸福にため息が出るよ。
僕の気持ちが顔に出ていたのか、それとも純粋にあいつもしたかったのか、お約束の唇が重ねられた。
日本のようにケータリングでいつでも食べられるシステムは、ここでは適用できない。スタジオが古いから場所がないんだよね。
機器とかバスルームとかは新しいんだけど建物自体は古いままなんだ。でもそれこそが深い音を生み出す源だから、ここは変えられない。
で、ランチは近くのお店から出前を取ってテラスで食べる。今日はみんなのリクエストが多かったヘルシーサンドイッチ。ここでは予想以上にヘルシー志向が強い。みんなまだ若いし、スタイルを気にしてるんだね。
「お、これ美味いな。さすがみんなのおススメだけはある」
野菜たっぷりのサンドイッチを頬張りながら佐山が言う。
「でも、倫の作ったのが一番うまいけどな」
またそんな余計なことを……嬉しいけど。ホントにおまえは僕の狙い処を間違えないのな。思わず頬が緩んでしまった。
向こうのテーブルではメンバーの4人が楽しそうに話をしてる。みんな腕に覚えのある人たちだから初対面ではないようだ。
なんでもない他愛のない話(昼間からえっちなのもあった)をしてたけど、いつの間にか音楽の話になってる。それが気になったのか、佐山も参戦してそのままスタジオに向かっていった。結局みんな、音楽好きの音楽バカなんだ。
僕はその輪には入れないけど、一生懸命サポートするからな。キラキラした背中を見送りながら、そっと胸に手を置いた。
1
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる