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TAKE 10 取材
しおりを挟む撮影は順調に進み、第1話を撮り終えた。
冬ドラマの話題がそろそろ雑誌に取り上げられるようになり、僕らは揃ってインタビューを受けることも多くなっていた。
「今までとは違った恋愛ドラマと思いますが、いかがですか?」
「そうだね。俺はいいチャレンジだと思ってる。男同士でやるってのは正直照れくさいけど、カメラの前では真剣に恋してるつもりだよ」
ちらりと僕に視線を移して応じる。どの媒体でも質問は同じようなものだ。
「私生活ではどうですか?」
「え? それ言うの。まあ、そこはノーコメントで。このドラマをやってる間は浮名を流さないよう気を付けるつもりだし」
ここで女性インタビュアーは大抵嬉しそうに笑うんだよ。上手いよね、さすが慣れてるよ。
「三條さんはいかがですか?」
「はい、とても新鮮です。今まで演技でも男性を好きになったことはないので、初恋です。そのドキドキを存分に味わいながら、皆さんにお伝え出来ればと思います」
何度か回数を重ねるうちに、僕も学習した。最も受けの良かった答えを用意していた。
となりで享祐さんもうんうんと頷いている。ソファーの背に軽く持たれて笑顔を振りまく。でも実際は心臓バクバクなんだよ。
「随分落ち着いて応えられるようになったな。答えも洒落てる」
この日のインタビューはテレビ局の会議室で行われた。僕はともかく享祐さんは忙しいので、数社が次々と現れ、写真を撮る。なので恰好は役柄と同じだ。
僕はトレーナーにデニムと言ったラフな格好。対する享祐さんはブランドのロングジャケットに同色のパンツ。シャツはブラックのスタンドカラーだ。
滅っ茶苦茶カッコいい。役柄だから仕方ないけど、高身長でスタイル抜群の享祐さんだから、格差が半端ないんだよね。
「ありがとうございます。だいぶ慣れました」
最後のインタビューが終わり、スタッフが淹れてくれた珈琲を飲みながら少し雑談をしている。
「初恋の相手になれて光栄だよ」
口に含んでいた珈琲を吹きそうになった。何を言い出すのか、全く。あのクランクインの前日以来、二人だけの予行練習は出来ていない。享祐さんは映画の撮影も始まっていて超多忙なんだよ。
――――だから、ドラマの撮影で会えるのが素直に嬉しい。
「それは、何よりです」
カタンとカップをテーブルに置く。それに間髪入れず、享祐さんが肩を組んで来た。ひゃあと危うく声が出そうになる。
「もう、その敬語やめろ? な?」
「あ、あの、でも」
「普段でも相馬と駿矢でいよう」
ドラマの役柄そのままでいようと言うのか。いやいや、それはいくら何でも無理だよ。彼らは心も肉体も結ばれる関係なんだよ?
「そ、それは、その……」
「な、この後予定ある?」
耳に息がかかる。相変わらずテリトリーが狭い人だ。すぐに他人の領域に踏み込んでくる。これは誰に対してもなんだろうか。僕が特別なんじゃなく。
「何もないです……。明日はCM撮りがありますが」
別に見栄を張ったわけじゃないよ……。
「ん、じゃあこれからデートだ」
「はい?」
驚いて顔を向けると、すぐそこに享祐さんの整った顔が。そのまま卒倒しそうになるのを何とか堪えた。
時間はもう六時だ。でも享祐さんにとっては滅多にないフリータイムなんじゃないのか。それを僕なんかと過ごすなんて……。
「とりあえず着替えるか。ロビーで待っててくれ」
僕の答えを聞く気はないらしい。くしゃっと僕の髪をかき混ぜると、会議室から出て行ってしまった。
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