癒やしを求めて生きてきただけなのだが

見崎志念

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ゴブリンの村だったのでおじゃまします

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「何者だと聞いてら! こ、答えろ!」
 よそ者に対して強気に出てるって感じだな。足プルプル震えてて怖がってるのバレバレなのがかわいいけど。

 相手が何を言ってるのかわかるから言葉の壁はないみたいだ。
 背は俺の腰の高さくらいだから、たぶん子供なんじゃないだろうか。ゴブリンの平均身長なんて知らないからなんとなくだけど。

 とりあえずは身の潔白を証明しないとな。
「怪しいものじゃないんだ。それに、村を襲いに来た敵とかじゃないからそんな警戒しないでくれよ」
「お前こそ誰だ!」
 カーレッジ! なんでそんな喧嘩腰!? 
 せっかく俺が頑張ってあらぬ誤解を受けないように言葉巧みにこの場を切り抜けようとしていたのに台無しだよ! 
 
 特に案があったわけではないけれど!

「なーんだ、敵でねーのか。なら良かった! おいらはゴブ助ってんだ。よろしくな!」
 あれ? なんか簡単に受け入れてもらえました。とてもまっすぐな笑顔です。

 警戒心はないらしく、久々にあった友達に歩み寄るように俺に近づいてきた。 
「あ、ああ。よろしく。挨拶ついでで申し訳ないんだけど、良かったら村を案内してくれないかな? 
 道に迷って困ってたんだよ」

 ついでだし、そのままお願いしてみよう。知らない場所をうろちょろするのは得策とは思えないし。

「おお、いいぞー。らぁたちの村はちいせえはんで迷う事ねぇと思うけど、ちゃんとついてきてくれよな」
 なんかすごくちょろいぞ、このゴブ助君。


「いやー、最初はびっくりしただよー。まさかゴライアスから人が下りてくるなんて思いもしてねがったからよー」
「ゴライアス?」

 聞きなじみのない単語だったため反射的に聞き返してしまった。

「なんだー知らねーんず? らぁでも知ってるのに?」
 変なものを見るように俺の顔をのぞき込んでくるゴブ助。
「すまんな、この辺のことには疎いんだ」
 嘘は言ってませんがなにか?
 でも、次からは気をつけないとダメだな。一般常識を聞いてしまうのはまずい。こっちの世界の人間の見た目とか知らないけど子供と思ってもらえることはないだろうからな。
 
「んだのかー。だったら仕方ねーの! ゴライアスってのは、なぁたちが降りてきた山のことだ。ええっと、蜘蛛様たちがそれぞれに縄張りば持ってて山を管理してるんだど」
「蜘蛛様ねぇ……」
 歩いてるときに見かけたあのサイズの蜘蛛が複数いるらしい。間違って縄張り踏み込まなくてホント良かった。

「あいつ、嫌い。すごく痛かった」
 ああ、そんなこともあったなぁ。元いた世界での話だけど。鼻に蜘蛛くっつけて騒いでる時は何事かと思ったものだ。
 幸い、毒性のない蜘蛛だったのとそこまで大きくない蜘蛛だったから後遺症やら傷跡が残らなかったけど。
 あれに噛まれたら傷跡残るとかじゃなく命が残るかも怪しいな。

「お、見えてきたべ! あれが村の中心だ」
 ゴブ助が指を指している方を見れば、確かにいくらかさっき見たヤツよりはまともな建物が並んでいる。
と言っても大きい建物はない。等間隔で並ぶ建物の中に一つだけ装飾をされて豪華な(比較したらってだけで普通にボロい)のがひとつあった。おそらくあれが村長の家だろう。

「村紗遊びに来た人はまず村長さ紹介するはんで、ついてきてけ」
 俺の予想通り、他よりも豪華な建物へ歩いていく。近づいてみて思ったが、大人が3人も入ったらいっぱいになりそうな、でかいかまくらぐらいの大きさだ。こりゃゴブ助たちって大人もそんなに大きくないってことかな。
 
「じじ様ー! ゴブ助だー。入るぞー!」
 親しげに入口の扉らしきものの前で声をかけてそのまま入っていく。
 これはついてこいってことでいいよな。カーレッジを残していくのは流石に危ないので、普段はしないけど許可なしでカーレッジも中へ入るように促す。

「なんだ? ゴブ助?」
 中は思ってたほど圧迫感のない広々とした空間だった。
 広く感じたってより確実に広い。建物よりも確実に三畳くらい広い。え、なにこれ、匠の技?
 なんということでしょう、脳内で劇的なビフォーアフターに対しての音楽が流れ始めてる。
 空間をうまく使ったからって錯覚じゃないでしょ。何事?

「うおっ!? 誰だおめーら!?」
 部屋の奥でなにか作業をしていた白髪のゴブリンが俺達に驚いていた。
 あ、顔はゴブ助にそっくりだね。
「じじ様、こいつらは敵でねーはんで大丈夫だ!」
「なんだ、敵でねーのか。へば問題ねーな」

 あ、なんかさっきも似たような反応だったなぁ。
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