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高校1年目
思惑(3)
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前に大島さんに呼び出された時とは変わり、俺が放課後に大島さんを呼び出して、屋上の入り口前の踊り場で待っていた。
人は考えることをやめることが出来ない、その事をよくわかったのは俺の頭から悩み事が消えないからで、苦しんだ俺自身が一番理解していた。
大島さんと今日で関係が落ち着いたとして、俺は斑目さんとどう接していけば良いのか、そもそも阿部から頼まれごとを断わり、関係を断つべきだろう。
そう思う、そうすべきだと思うのにやめられないのは、あの幻視が頭から離れないからだ。
その思い描いたそれに近づけていると感じる事で、こんなにも心の空白が満たされるのがわかってしまった。
そして、それが無くなる事に心底恐ろしいと言うべきなのか、怖いと言うべきなのか、そんな思いにかられてしまっていた。
それは自身に刃物を突きつけられるようなものではなく、目の前で大切な何かを壊されてしまうような本当に嫌なもので、良く映画で額を地面にこすり付けながら、自分の命はどうでも良いからこれだけは許して欲しいと懇願しているような思いだった。
「やっほー、待った?」
踊り場から階段を見下ろすと大島さんがにこやかな表情でこちらに向かって階段を上がってきていた。
大島さんに俺はある意味で彼女を恐れていた。
それは彼女は思惑の為なら他人を簡単に傷つけることにためらいがない事、事実、斑目さんに酷いことをしてもかまわないような発言をしていたことに、俺は嫌悪に近い感情を抱いていた。
俺は彼女と長く話はしたく無かったので、彼女に会って早々に本題をぶつけることにした。
「まず、斑目さんの件は断わりたい。俺は彼女が好きだからそんなことは出来ない。」
そう言うと、彼女は少し考えながら俺に尋ねてきた。
「それはLikeとloveのどっちなのかな?」
大島さんは阿部から、俺が斑目さんに告白していることを知っているが、内心怪しいと思っていたようだった。
それも少し考えれば、俺が告白したタイミングは斑目さんを巻き込まれないようにする為だったと言うことは、確信できるような証拠はないが何となく気がついたのだろう。
「どっちにでもとらえて貰っても良いけど、知合いをむやみに傷つけるような事は出来ない。それと脅されるのも好きじゃない。」
俺はそう言うと、この時の為に阿部が用意した例の写真をスマホの画面に表示させると彼女に見せた。
その写真を見ると彼女は一瞬、表情が真顔になったが動揺したわけではなく、何となく俺が何を考えているのか、察したようだった。
「俺もこのことを公にする気はない、大島さんも黙っていて欲しいだけだ。そうすれば誰も傷つくことは無い。それに大島さんが俺と斑目さんの中を取り持ってくれれば...。」
彼女は急に話を遮る様に声を上げて笑い出した。
俺は驚いて、言葉を止めて彼女の様子を伺っていると彼女は息を整えながら、一言、俺に吐き捨てるように言った。
「貴方って本当に最低ね。その話、言う通りにするわ。」
そう言うと彼女は一方的に話を切り上げて、俺の静止の言葉を無視して彼女はその場を去っていった。
俺は彼女の言う最低が何を指していたのか、この時は理解が出来ていなかったが、これは後々で痛い程に理由をわからされることになる。
正直、気分は良くないが何とか問題が片付いたと思えば少し気持ちが軽くなった。
この後、俺は阿部の家に呼ばれて向かう事になったのは、今週末の仕事の話と大島さんとの話し合いの結果を報告を聞かせて欲しいと言う事だった。
「良かったじゃないですか、大島さんの件は上手く言ったみたいで、それなのにそんなに浮かない顔してどうしたんですか?」
阿部が俺を呼び出すときは何かあると言うことでこれまでの流れで何となく勘づいたが、それは今週末の仕事話と大島さんとの話し合いの報告はおまけでしかなく、それ以外の本題に対して俺は身構えているような状態だった。
それにここ数日は、精神的な負荷が大きかったこともあり、当分、面倒ごとは勘弁して欲しかったと思っていたら、阿部に通じたのか以外にも良い方向で予想を裏切ってきた。
「さて、ここにとあるチケットがあるんですが、これを登藤に差し上げます。」
そう言いながら俺の目の前に出されたチケットには、あの『宇宙銀河大戦』の名前があったことで、俺はクリスマスプレゼントを受け取る小学生のように歓喜しながらチケットを阿部から受け取ったが枚数が多いことに気付いて、一気に気持ちが消沈していた。
チケットの枚数は四枚、山城さんと行くには枚数が多い事はすぐにわかった、そして残りを誰と使う事もすぐにわかった。
「察しの良い登藤のことだから、山城さん以外に誰を誘うべきかわかっていますね?」
阿部はあえて、俺に言わせたいようでこちらの顔を、あの気味の悪い笑い方をしながらこちらを見つめて、俺がその名前を言うのを待っている様だった。
俺は仕方なく阿部の期待に応えるようにその相手の名前を言った。
「斑目さんだな。」
阿部はそれを聞くと満足気だったが、俺の中では斑目さんは誘っても絶対に断わるだろうと言う事は既にわかっていたし、ストーカーのように告白を断った相手がしつこく遊びに誘ってきたら迷惑でしかない。
良く考えてみると、阿部が考えていた計画の要でだったはずの俺と斑目さんとは関係は崩壊しているので、彼女を騙すようなことをすることは無くなったと俺は内心は安堵していた。
阿部に俺と斑目さんは、俺が告白をしたのを斑目さんが断ったことで、完全に関係が崩壊してることを指摘したが、阿部はそんなのは全く支障にもならないと言い、斑目さんを誘うように言うのだ。
「登藤はわかっていませんね、恋愛とは追っかける側と追っかけられる側がいる時ほど楽しいものなんです。そもそも、斑目さんが生理的に登藤の事を受け付けなかったら、バイトの特別許可なんて面倒な事を引き受けると思いません。これは私の勘ですが、間違いなく貴方を異性として意識してますよ。」
阿部は確信しているような口ぶりだが、断れたこと時について事を聞いたら即答でチケットを差し上げれば良いと答えた。それに加えてように強引でも良いから彼女の手に握らせて、その場から素早く立ち去っても良い言う事だった。
それさえすれば、俺はこのチケットを手に入れて山城さんとデートに行けると思ったら、少し面倒だが問題ないと思えていて、ちょっとした罰ゲーム感覚で斑目さんを誘って断れようが、了承されようが、結果はどうでも良くなっていた。
そして、阿部との関係断ち切る事も山城さんとのデートの後で考えれば良いと問題を後回しにしたのは、ここ数日の疲れたもあった。
次の日、阿部から貰ったチケットを持っていつも通りに昼休みに図書室で山城さんと会うと、さっそく彼女を例のチケットで誘ってみた。
そのチケットを差し出して時の山城さんの様子と言えば、抑えていたとは言え少し興奮気味で声が震え、二つ返事で一緒に「宇宙銀河大戦シネマミュージアムへ行きます!」と答えてくれた。
その後は山城さんは宇宙銀河大戦シネマミュージアムの事を、彼女自身が知っている知識を全てを使って、俺に昼休みが終る寸前まで力説していた。
山城さんの幸せそうな顔を見ていると不思議と笑みが零れていたが、昼休みが終って山城さんと別れた後で、俺はさっきまで笑っていた事が夢を見ていたような感覚に感じてしまって、気分が落ち込んでいくのがわかった。
そして、それに重ねて、斑目さんにチケットを渡すと言うか、半分忘れていたが彼女を遊びに誘わなくてはならないと言う事に、非常に面倒な事だと言う思いが湧き上がってきていたからだ。
数日前に好きじゃないが告白して、それを断わった相手を遊びに誘うと言う気不味さを考える事がチケットを阿部から貰う前に出来ていれば、少しは考えを変えていたかも知れないと思うが後の祭りだ。
とりあえず、連絡しても出ないだろうと思い、美術室に行けば会えるじゃないかと安易な考えで向かってみたがどうやら斑目さんはいないようで、美術室の扉の窓から覗いて確認したが姿が見えなかった。
宛が外れてた事で、今日はもう諦めようかと思ったところに廊下の窓から見えた校門の脇に斑目さんの姿を見つけた。
佇む彼女は誰か待っているような感じであったので、急いで向かえば彼女にチケットを渡す事が出来るだろうと思い駆け足で向かった。
廊下を抜けて、階段を降りて、下駄箱から靴を取り出すと素早く履き替え外に出て、先ほど斑目さんがいた場所に視線を向けると彼女の姿を確認できた。
とりあえず、彼女から5歩ぐらい離れたところまで近づくと声を掛けた。
「斑目さん、その、誰か待っているの?」
声掛けてから気がついたが、俺はこの後の事を何も考えていなかった。
彼女はこちらを見て、俺の姿を確認したと思ったら顔を逸らして拒絶しているように見えた。
何となく予想していたが、面と向かって拒絶されるとちょっと傷心してしまうが、やるべきことをやらなくてはならないので話を続けた。
「その、宇宙銀河大戦シネマミュージアムのチケットが手に入ったんだ。良ければ、その、一緒に行かない?」
俺は羞恥心を感じていたのは、斑目さんが異性として認識ではなく、間違いなく告白を断われた相手を遊びに誘うと言う、恥を感じていないような行動を取ることに対してだった。
そう言って、斑目さんの前にチケットを出すと彼女は少し怒りと言うか、どちらかと言えば呆れに近いような声色でこう答えた。
「馬鹿じゃないの、行くとでも思ったの?」
俺は罵倒されて山城さんとデートに行けるなら、それで良いと言う答えが彼女の口から馬鹿の二文字が出た瞬間に頭の中で結論が出ていて、彼女が言い終わると同時にすぐさまに返しで「ああ、そうだよね」と言ってしまった。
斑目さんは、こちらに顔を向けると怒りに似たような睨みつけるような目線でこちらを見ていた。
今にも殴られそうな感じがしたので、すぐさまそこを去ろうとした瞬間、俺が握っていたチケットを素早く取り上げられたのを、指の感触ですぐに理解した。
振り返るとそこには大島さんが居て、俺から取り上げたチケットの有効期限を確認している様だった。
俺は面倒な事が起きそうで嫌気がしてきたので、今日はチケットを回収してこの場を去ろうと思ったので彼女にチケットを返すように要求した。
「そのチケットを返してもらいないか。」
俺がそう言うと、大島さんはどうやら先ほどのやり取りを全て見ていたようで、彼女の回答は意外なものだった。
「瞳を誘ったけど断わられたんでしょ?そしたら、私と瞳で行くから、これくれないかな?」
俺はどう反応すべきか考えた、この場で一番良いと思われる行動はこのチケットを渡す事じゃないかと思った。
まず、ここでチケットを返して貰っても使わないチケットが手元に残るだけとなるが、この使わないチケットをあげるだけで大島さんには多少だが、好印象が残るじゃないかと可能性があった。
その印象の良し悪しはこの後の言動次第でもあったが、可能性として印象が良い方向に持っていけば、変な事に巻き込まれる可能性も少なくなるので、渡してしまった方が良いと俺の中の結論だった。
俺としては、大島さんが斑目さんに何とも言えない負の感情がある事を知っている立場からして、このチケットを渡すべきではないと思う部分もあった。
しかし、今更、斑目さんとは接点が無くなった方が良いと思うとチケットを渡して関係が自然に消えていけば良いと思うところもあり、阿部にもう一度なんて言われるんじゃないかと思うところもあった。
「・・・貰いものだし、使わないより良いからなぁ。」
そう言うと、大島さんは御礼言うとチケットを持って、何か言いたげな斑目さんを背中を押して、そそくさと連れて帰っていった。
その様子を呆然と見ていると、斑目さんにはみられない様に大島さんが顔だけこちらに向けると片目を瞑ってウィンクをしているように見えた。
この時、俺は見間違いだと思っていたが、この後それが意図的にされたいたことがわかるのは少し後だった。
その日、バイトのシフトが入っていなかったので、家に帰ると家の前通りで武田先生がいた。
その様子はこれから学校に戻るようで、家の玄関からこちらに視線を向けた時に、俺の存在に気がついて声を掛けてきた。
「どうも、他の用事で近くまで来たんので様子を伺いに来てみたんだが、留守のようだった。」
武田先生はそう言うと、スーツの襟元を触りながら笑っていた。
この武田先生のおかげで俺はバイトを特別に貰っていることもあり、このまま先生に無駄足を踏ませては悪いと思い、両親に用事があるなら家に上がって待ってもらっても良いと伝えると、先生は何とも言えない困った顔しながら、実は学校の定期会議があって急いで戻る必要があるので、後で電話するとご家族に伝えた欲しいと言ってそのまま急ぎ足で向かって行ってしまった。
その後ろ姿を見送って家に入ると玄関に母さんの靴がある事に気がついて、部屋の奥に行くと脱衣所からシャワーが流れる音が聞こえるのを聞いて、先生が偶然タイミング悪く尋ねてきたと思うと、先生がかわいそうだと思いながら部屋に戻ると、阿部からSNSでメッセージ届いた。
人は考えることをやめることが出来ない、その事をよくわかったのは俺の頭から悩み事が消えないからで、苦しんだ俺自身が一番理解していた。
大島さんと今日で関係が落ち着いたとして、俺は斑目さんとどう接していけば良いのか、そもそも阿部から頼まれごとを断わり、関係を断つべきだろう。
そう思う、そうすべきだと思うのにやめられないのは、あの幻視が頭から離れないからだ。
その思い描いたそれに近づけていると感じる事で、こんなにも心の空白が満たされるのがわかってしまった。
そして、それが無くなる事に心底恐ろしいと言うべきなのか、怖いと言うべきなのか、そんな思いにかられてしまっていた。
それは自身に刃物を突きつけられるようなものではなく、目の前で大切な何かを壊されてしまうような本当に嫌なもので、良く映画で額を地面にこすり付けながら、自分の命はどうでも良いからこれだけは許して欲しいと懇願しているような思いだった。
「やっほー、待った?」
踊り場から階段を見下ろすと大島さんがにこやかな表情でこちらに向かって階段を上がってきていた。
大島さんに俺はある意味で彼女を恐れていた。
それは彼女は思惑の為なら他人を簡単に傷つけることにためらいがない事、事実、斑目さんに酷いことをしてもかまわないような発言をしていたことに、俺は嫌悪に近い感情を抱いていた。
俺は彼女と長く話はしたく無かったので、彼女に会って早々に本題をぶつけることにした。
「まず、斑目さんの件は断わりたい。俺は彼女が好きだからそんなことは出来ない。」
そう言うと、彼女は少し考えながら俺に尋ねてきた。
「それはLikeとloveのどっちなのかな?」
大島さんは阿部から、俺が斑目さんに告白していることを知っているが、内心怪しいと思っていたようだった。
それも少し考えれば、俺が告白したタイミングは斑目さんを巻き込まれないようにする為だったと言うことは、確信できるような証拠はないが何となく気がついたのだろう。
「どっちにでもとらえて貰っても良いけど、知合いをむやみに傷つけるような事は出来ない。それと脅されるのも好きじゃない。」
俺はそう言うと、この時の為に阿部が用意した例の写真をスマホの画面に表示させると彼女に見せた。
その写真を見ると彼女は一瞬、表情が真顔になったが動揺したわけではなく、何となく俺が何を考えているのか、察したようだった。
「俺もこのことを公にする気はない、大島さんも黙っていて欲しいだけだ。そうすれば誰も傷つくことは無い。それに大島さんが俺と斑目さんの中を取り持ってくれれば...。」
彼女は急に話を遮る様に声を上げて笑い出した。
俺は驚いて、言葉を止めて彼女の様子を伺っていると彼女は息を整えながら、一言、俺に吐き捨てるように言った。
「貴方って本当に最低ね。その話、言う通りにするわ。」
そう言うと彼女は一方的に話を切り上げて、俺の静止の言葉を無視して彼女はその場を去っていった。
俺は彼女の言う最低が何を指していたのか、この時は理解が出来ていなかったが、これは後々で痛い程に理由をわからされることになる。
正直、気分は良くないが何とか問題が片付いたと思えば少し気持ちが軽くなった。
この後、俺は阿部の家に呼ばれて向かう事になったのは、今週末の仕事の話と大島さんとの話し合いの結果を報告を聞かせて欲しいと言う事だった。
「良かったじゃないですか、大島さんの件は上手く言ったみたいで、それなのにそんなに浮かない顔してどうしたんですか?」
阿部が俺を呼び出すときは何かあると言うことでこれまでの流れで何となく勘づいたが、それは今週末の仕事話と大島さんとの話し合いの報告はおまけでしかなく、それ以外の本題に対して俺は身構えているような状態だった。
それにここ数日は、精神的な負荷が大きかったこともあり、当分、面倒ごとは勘弁して欲しかったと思っていたら、阿部に通じたのか以外にも良い方向で予想を裏切ってきた。
「さて、ここにとあるチケットがあるんですが、これを登藤に差し上げます。」
そう言いながら俺の目の前に出されたチケットには、あの『宇宙銀河大戦』の名前があったことで、俺はクリスマスプレゼントを受け取る小学生のように歓喜しながらチケットを阿部から受け取ったが枚数が多いことに気付いて、一気に気持ちが消沈していた。
チケットの枚数は四枚、山城さんと行くには枚数が多い事はすぐにわかった、そして残りを誰と使う事もすぐにわかった。
「察しの良い登藤のことだから、山城さん以外に誰を誘うべきかわかっていますね?」
阿部はあえて、俺に言わせたいようでこちらの顔を、あの気味の悪い笑い方をしながらこちらを見つめて、俺がその名前を言うのを待っている様だった。
俺は仕方なく阿部の期待に応えるようにその相手の名前を言った。
「斑目さんだな。」
阿部はそれを聞くと満足気だったが、俺の中では斑目さんは誘っても絶対に断わるだろうと言う事は既にわかっていたし、ストーカーのように告白を断った相手がしつこく遊びに誘ってきたら迷惑でしかない。
良く考えてみると、阿部が考えていた計画の要でだったはずの俺と斑目さんとは関係は崩壊しているので、彼女を騙すようなことをすることは無くなったと俺は内心は安堵していた。
阿部に俺と斑目さんは、俺が告白をしたのを斑目さんが断ったことで、完全に関係が崩壊してることを指摘したが、阿部はそんなのは全く支障にもならないと言い、斑目さんを誘うように言うのだ。
「登藤はわかっていませんね、恋愛とは追っかける側と追っかけられる側がいる時ほど楽しいものなんです。そもそも、斑目さんが生理的に登藤の事を受け付けなかったら、バイトの特別許可なんて面倒な事を引き受けると思いません。これは私の勘ですが、間違いなく貴方を異性として意識してますよ。」
阿部は確信しているような口ぶりだが、断れたこと時について事を聞いたら即答でチケットを差し上げれば良いと答えた。それに加えてように強引でも良いから彼女の手に握らせて、その場から素早く立ち去っても良い言う事だった。
それさえすれば、俺はこのチケットを手に入れて山城さんとデートに行けると思ったら、少し面倒だが問題ないと思えていて、ちょっとした罰ゲーム感覚で斑目さんを誘って断れようが、了承されようが、結果はどうでも良くなっていた。
そして、阿部との関係断ち切る事も山城さんとのデートの後で考えれば良いと問題を後回しにしたのは、ここ数日の疲れたもあった。
次の日、阿部から貰ったチケットを持っていつも通りに昼休みに図書室で山城さんと会うと、さっそく彼女を例のチケットで誘ってみた。
そのチケットを差し出して時の山城さんの様子と言えば、抑えていたとは言え少し興奮気味で声が震え、二つ返事で一緒に「宇宙銀河大戦シネマミュージアムへ行きます!」と答えてくれた。
その後は山城さんは宇宙銀河大戦シネマミュージアムの事を、彼女自身が知っている知識を全てを使って、俺に昼休みが終る寸前まで力説していた。
山城さんの幸せそうな顔を見ていると不思議と笑みが零れていたが、昼休みが終って山城さんと別れた後で、俺はさっきまで笑っていた事が夢を見ていたような感覚に感じてしまって、気分が落ち込んでいくのがわかった。
そして、それに重ねて、斑目さんにチケットを渡すと言うか、半分忘れていたが彼女を遊びに誘わなくてはならないと言う事に、非常に面倒な事だと言う思いが湧き上がってきていたからだ。
数日前に好きじゃないが告白して、それを断わった相手を遊びに誘うと言う気不味さを考える事がチケットを阿部から貰う前に出来ていれば、少しは考えを変えていたかも知れないと思うが後の祭りだ。
とりあえず、連絡しても出ないだろうと思い、美術室に行けば会えるじゃないかと安易な考えで向かってみたがどうやら斑目さんはいないようで、美術室の扉の窓から覗いて確認したが姿が見えなかった。
宛が外れてた事で、今日はもう諦めようかと思ったところに廊下の窓から見えた校門の脇に斑目さんの姿を見つけた。
佇む彼女は誰か待っているような感じであったので、急いで向かえば彼女にチケットを渡す事が出来るだろうと思い駆け足で向かった。
廊下を抜けて、階段を降りて、下駄箱から靴を取り出すと素早く履き替え外に出て、先ほど斑目さんがいた場所に視線を向けると彼女の姿を確認できた。
とりあえず、彼女から5歩ぐらい離れたところまで近づくと声を掛けた。
「斑目さん、その、誰か待っているの?」
声掛けてから気がついたが、俺はこの後の事を何も考えていなかった。
彼女はこちらを見て、俺の姿を確認したと思ったら顔を逸らして拒絶しているように見えた。
何となく予想していたが、面と向かって拒絶されるとちょっと傷心してしまうが、やるべきことをやらなくてはならないので話を続けた。
「その、宇宙銀河大戦シネマミュージアムのチケットが手に入ったんだ。良ければ、その、一緒に行かない?」
俺は羞恥心を感じていたのは、斑目さんが異性として認識ではなく、間違いなく告白を断われた相手を遊びに誘うと言う、恥を感じていないような行動を取ることに対してだった。
そう言って、斑目さんの前にチケットを出すと彼女は少し怒りと言うか、どちらかと言えば呆れに近いような声色でこう答えた。
「馬鹿じゃないの、行くとでも思ったの?」
俺は罵倒されて山城さんとデートに行けるなら、それで良いと言う答えが彼女の口から馬鹿の二文字が出た瞬間に頭の中で結論が出ていて、彼女が言い終わると同時にすぐさまに返しで「ああ、そうだよね」と言ってしまった。
斑目さんは、こちらに顔を向けると怒りに似たような睨みつけるような目線でこちらを見ていた。
今にも殴られそうな感じがしたので、すぐさまそこを去ろうとした瞬間、俺が握っていたチケットを素早く取り上げられたのを、指の感触ですぐに理解した。
振り返るとそこには大島さんが居て、俺から取り上げたチケットの有効期限を確認している様だった。
俺は面倒な事が起きそうで嫌気がしてきたので、今日はチケットを回収してこの場を去ろうと思ったので彼女にチケットを返すように要求した。
「そのチケットを返してもらいないか。」
俺がそう言うと、大島さんはどうやら先ほどのやり取りを全て見ていたようで、彼女の回答は意外なものだった。
「瞳を誘ったけど断わられたんでしょ?そしたら、私と瞳で行くから、これくれないかな?」
俺はどう反応すべきか考えた、この場で一番良いと思われる行動はこのチケットを渡す事じゃないかと思った。
まず、ここでチケットを返して貰っても使わないチケットが手元に残るだけとなるが、この使わないチケットをあげるだけで大島さんには多少だが、好印象が残るじゃないかと可能性があった。
その印象の良し悪しはこの後の言動次第でもあったが、可能性として印象が良い方向に持っていけば、変な事に巻き込まれる可能性も少なくなるので、渡してしまった方が良いと俺の中の結論だった。
俺としては、大島さんが斑目さんに何とも言えない負の感情がある事を知っている立場からして、このチケットを渡すべきではないと思う部分もあった。
しかし、今更、斑目さんとは接点が無くなった方が良いと思うとチケットを渡して関係が自然に消えていけば良いと思うところもあり、阿部にもう一度なんて言われるんじゃないかと思うところもあった。
「・・・貰いものだし、使わないより良いからなぁ。」
そう言うと、大島さんは御礼言うとチケットを持って、何か言いたげな斑目さんを背中を押して、そそくさと連れて帰っていった。
その様子を呆然と見ていると、斑目さんにはみられない様に大島さんが顔だけこちらに向けると片目を瞑ってウィンクをしているように見えた。
この時、俺は見間違いだと思っていたが、この後それが意図的にされたいたことがわかるのは少し後だった。
その日、バイトのシフトが入っていなかったので、家に帰ると家の前通りで武田先生がいた。
その様子はこれから学校に戻るようで、家の玄関からこちらに視線を向けた時に、俺の存在に気がついて声を掛けてきた。
「どうも、他の用事で近くまで来たんので様子を伺いに来てみたんだが、留守のようだった。」
武田先生はそう言うと、スーツの襟元を触りながら笑っていた。
この武田先生のおかげで俺はバイトを特別に貰っていることもあり、このまま先生に無駄足を踏ませては悪いと思い、両親に用事があるなら家に上がって待ってもらっても良いと伝えると、先生は何とも言えない困った顔しながら、実は学校の定期会議があって急いで戻る必要があるので、後で電話するとご家族に伝えた欲しいと言ってそのまま急ぎ足で向かって行ってしまった。
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