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高校1年目
暗雲(1)
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山城さんとのデートの次の日に、俺は阿部といつものラーメン屋で夕飯を一緒に食べていた。
もちろん、阿部はデートの事について根ほり葉ほり聞いてくるので、どんなことがあったのか答えることになった。
「なるほどですね、私はAぐらいはしてきたと思っていましたが、残念です。」
そう言いながら、一通り話を聞くなり物足りないような顔で、目の前のラーメンを啜っていた。
確かに阿部には今回のデートの件については感謝しかないが、人の恋路についてどうこうといちゃもんつけられた側としては、俺はお前を楽しませるために四苦八苦している訳ではないと声を大にして言いたかった。
「そうそう、私も良いことがありまして、生徒会に入る事が決まりました。」
そのことについては阿部は前々から、そんなことを臭わせていた事もあってあまり驚く事ではなかったが、阿部は俺があまりにも反応が薄いことに何か不満があるような溜息を漏らしていた。
「まぁ、私はこれから生徒会で忙しくなりますので、登藤と山城さんの仲を取り持つことは当分できません。」
阿部のその言葉に俺は何とも思いもしなかったのは、この前のデートで俺と山城さんの関係はあと一歩で恋仲だと言う事に過信があったこともあり、そのまま聞き流していたが、阿部と別れる間際に何かありげに俺に捨て台詞を俺に投げていた。
「山城さん、最近、色んな人に目がつくようになっていますので、のんびりしていると誰かに先を越されてしまいますよ。」
阿部のこの言葉は事実として、俺を不安にさせるような出来事が起こる前触れだった。
それはほんの些細な事で、いつも通りに図書室で山城さんと会っていた時に、彼女からある事について相談された。
「実は先日、演劇部の方から部活に入部しないかと誘いを受けたんです。」
彼女が何故、演劇部に誘われたのかと言う話を聞くと、どうやら応用デザイン科の先生が、彼女が作っていた作品について高く評価をしていて、その才能を活かすなら演劇部に入るべきだと、会う度に誘われていたと言うことだった。
「その、山城さんはどんなものを製作しているんですか?」
山城さんがどんな作品を作っているのか知らなかったのは、決して知りたくない訳じゃなくて、彼女の内心の繊細な部分に土足で踏み入るような真似をしなく無かった。
作品に対して感想を言うにしても、彼女との関係が悪くなる可能性が少しでもあるなら触れたくないと思っていた。
「私が作成するのは、その服とかモックアップとかですね。」
俺は山城さんが演劇部に誘われた理由は、演技をする演者としては無く、衣装や小道具を作る裏方として誘われていた。
俺は内心、彼女が演者として演劇部で活動するようになったら、俺と彼女の関係が薄くなってしまうんじゃないかと少し危機感があったが、その心配も必要なさそうで良かったと安堵した。
それに部活は大体、放課後にやる事になるので、この昼休みの時間はこれまで通りに二人で会えると言う事を信じて疑っていなかった。
だから、俺は山城さんに演劇部へ入部した方が良いとその時は答えたが、そのことについては酷く後悔していた。
次の日から、山城さんから昼休みも演劇部の活動で忙しいという事で、当分、図書室には来れないという連絡が届いていた。
演劇部に入部した方が良いと山城さんに言った手前、それについてどうこう言うのは彼女から見た俺の印象が悪くなるじゃないかと思うところがあった。
どうしたものかと考えると自然に阿部の顔が浮かんで、この前帰り際に言っていたことを思い出し、阿部でスマホに電話を掛けていた。
「もしもし、阿部か、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今時間があるか?」
俺は自分でも気がついていなかったが、焦りと不安で阿部が電話に出た瞬間に一方的に話を始めていた。
俺はこの前のデートで山城さんの関係について、数日前までお互い好意があると自信があったが、自信と言うメッキは脆くも剝れ始めていた。
阿部に山城さんが演劇部に入部したことについて話をすると、阿部は察して俺が言いたいことをすぐに理解していた。
「まぁ、山城さん、前から手先が器用ていうか、才能があるみたいでして、前々からそんな話があったみたいですよ。」
阿部がなんでそんなこと知っているのか、俺に彼女はそんなことを言っていなかったし、急にどうして演劇部に入る話をしたのか、考えが悪い方向にまわるのを止めることが出来なかった。
「彼女も文化祭が近いので忙しんじゃないでしょうか?学校内は人手が足りない部活動が多いらしく、私も手伝いに駆り出されて忙しいですよ。猫の手も借りたいってやつです。」
俺は阿部がしゃべり終わる前にそのまま通話を切って、山城さんの姿を探し始めていた。
どうせ暇だからと言う最もらしい言い訳を自身に言い聞かせながら、山城さんが今どこで何をしているのか気になって仕方が無かった。
俺の頭に色々と過る不安も、彼女が何処で何をしているのか分かれば、落ち着くに違いないと何となくその時は思っていた。
俺が山城さんを見つけたのは、その日の放課後で彼女は応用デザイン科棟の一階の実習室で、何やら演劇部で使用する衣装を作っている様だった。
俺はその姿を応用デザイン棟の向かいにある化学科棟の廊下の窓から様子を覗いていた。
もちろん、電気科の俺は化学科の生徒に不審な目で見られていたが、そんな事をは些細な事だとして、何食わぬ顔でその場所に居座っていた。
確かに山城さんに電話で直接話をすることも考えたが、この嫉妬に近い感情を彼女に悟られる可能性と、彼女に何て言えば良いのか浮かばなかった。
内心では山城さんが俺以外に誰かと仲良くなることに対して不安があるが、内向的で人付き合いが苦手な彼女が前向きに部活に励むと言う前向きな行動を応援すべきだと思っていた。
そう考えると俺が出来ることは見守る事しか出来ないのだが、見つかって誤解を生む可能性もあるので、様子を覗くのは今日だけにすると心に誓い、その日は彼女が帰るのを陰ながら見送った。
その日から俺の中に空白が出来ていた。
山城さんとメッセージのやり取りはしているが、物足りないと言う気持ちよりも満たされたいと言うべきか、例えるなら地面に穴が開いたところにこれまでは砂を入れていたのだが、今回は石を詰めたような感じで微妙に石と石の隙間が空いているようなそんな感じだった。
阿部も忙しいようで連絡は取れるが、これまでみたいに顔を合わせることは無くなってしまった。
もちろん、阿部から紹介されていた怪しい仕事の話も一時的に無くなったのだが、不思議と焦りもしないどころか少し安堵と言うか、気持ちに余裕が出来たと言うべきなのか落ち着いていた。
その代わりにアルバイトの方は、予定を入れる必要がやはりこれまで通りの稼ぎには届かないのは良くわかっていたが、解決方法もないまま時間が過ぎていくのだった。
昼休みに山城さんと会わなくなってから数日、周りは文化祭の準備で盛り上がっている中、俺は完全に蚊帳の外だった。
それはそれで良かったと言うか、いつも通りの事なのでどうでも良かったが、それでもやはり周りがそう言う雰囲気で盛り上がっているを見ていると俺が何処で道を間違えたのか考えたくもないのに空の上の雲のように浮かんでくるのが嫌で、何処かそう言う雰囲気がない場所を学校内で探すようになっていた。
そもそも、そんなところが見つかる訳がないとわかっていたが、やる事もないのでそうしていた方が気がまぎれるのでそうしていた。
何故かは知らないが、珍しく斑目さんから呼び出し連絡がきたときは驚いたと言うより、何か悪いことがバレたんじゃないかと不安を感じながらも彼女の呼び出しに応じる事しか出来なかった。
俺が呼び出されたのは生徒会室で、阿部に事前に事情を探ってもらうことも出来ていない事もあり、身構えない訳が無かった。
気が重いが無視する訳も行かずに、生徒会室の扉をノックして扉を開けると阿部、斑目さんとそれ以外にも他三名、顔だけは見たことがある生徒がいた。
俺の中の微かな記憶では三年生の生徒会役員だったはずだが、恐らく誰かが会長なのは確かだ。
そんな事を思いながらその場に突っ立ていると阿部が空席を指差し、そこに座る様に促してきたので、とりあえず空いている席に座ると、恐らく生徒会長らしい女子生徒から単刀直入に呼び出された理由を説明された。
「文化祭の広報用の動画を撮るのに協力して欲しい。」
俺は予想外の話に困惑していたのは言うまでもないが、そもそも、そう言うのは文化祭委員会があるので、そちらで対応すべきなのではと思うところだが、どうやら文化祭委員会は文化祭準備以外にも文化祭の記念動画を撮影と編集で忙しいので、生徒会に文化祭の広報用の動画を撮る話が流れてきたと言う事だった。
とは言え、生徒会も暇なわけではないので阿部や斑目さん経由で協力者として俺が呼び出された訳だった。
話が終わる事にはとんだとばっちりに良い感じに最悪な気分だった。
阿部が暇そうに俺がしているだろうと思って、協力させようとしているだろうと、この時はそう思っていた。
そして、阿部のことだから埋め合わせとして何かしら用意しているんだろうと思うと決して悪い話ではないので、とりあえずその場は渋々だが了承することにした。
俺はこの後、阿部をいつものラーメン屋に呼び出して事情を聞くと阿部は知らぬ存ぜんぬと言い始めた。
「今回の件は私ではなく、斑目さんが登藤の名前を出したんですよ。私もどういう意図があってかわからないです。」
阿部はそう言いながらラーメンを啜っていた。
とんだ勘違いで引き受けた広報用動画の撮影の件を考えると頭が痛くなってきたが、良く思い出したら呼び出したのは斑目さんで阿部でなかったことを深く考えれば気がついたはずなのだが、今からでも遅くないが断わる事を考え始めていた。
そんな俺を見て阿部はあの気持ち悪い笑い方をしながら、俺にある事を話し始めた。
「登藤、これは好機ですよ。ほら、斑目さんから頼みごとなんて、これは斑目さんとの関係を良くするチャンスですよ。」
俺は阿部が未だに斑目さんと俺との関係をつなげようとすることを諦めていないらしい。
俺の中では色々あって斑目さんに形だけで嘘の告白をすることになって、断れたところからもう脈はないものと思っていた。
「お前がそう思えるのが、どうかしてると思う。大体、彼女はハッキリと俺にはそう言う気持ちはないと言われた。どんな風の吹き回しでそうなるんだ。」
阿部は唇をベロベロと舐めながら少し考えると一言、こう言った。
「風が吹いて桶屋が儲かる。ま、そんな感じですかね。」
阿部は独りで納得している様だったが、この予想は的中していた。
次の日、昼休みに生徒会室に呼び出されて部屋に入るなり、斑目さんはスマホをディスプレイにつなげるとある動画を見せてきた。
それはダンスの動画で内容からして、かなり練習しているのか素人の俺でも見てわかるぐらいキレがあるものだった。
この時点で察する、このダンスを踊って広報動画に出すことになる事がわかった俺は正直に今すぐ断ろうと思っていた。
約5分間の動画を見終わったと同時に俺は断ろうと思っていながらもいつまでに動画を投稿するか聞いてみた。
「二週間、文化祭が開催するのは一ヶ月後だけど、広報用動画だから2週間前には動画をネットにアップロードしたいわ。で、動画の感想とかある?」
動画の感想よりもこの場でどう断ればいいのか頭をフル回転させて考えていた。
「悪いけど、こんなダンスなんて踊れるわけないだろ、大体、この動画のダンスは素人が二週間で踊れるようなもんじゃないだろう。」
そう言うと彼女の顔が目つきがこちらを睨め付けるように鋭くなったが、そこを堪えたのか彼女は出来る限りの作り笑いでこちらを見ていた。
「まぁ、悪魔でも文化祭用の動画ですし、少しクオリティが低くなってしまうのは目を瞑りますからやって頂けないかしら?」
俺が喉元辺りまで辞退の言葉が出て来たのを、斑目さんが遮るように言ってきた。
どうやら意地でも俺に辞退と言う言葉を言わせない様に、クオリティが低くなっても良いと言う言葉を使ってくるのも、絶対に辞退するのだけ避けたいようだった。
しかし、俺も心を鬼にして辞退しますって言おうと口を開いた瞬間だった、彼女はとんでもないことを言い始めた。
「その、やってくれたら、デートでも、何でもして言いわ。」
俺は正直、驚いたと同時に彼女の顔が少し恥ずかしそうに頬が赤くなるのを見てしまった。
俺の中でここで断ったらどうなるか嫌な予感がした。
俺は確かに形だけだが斑目さんに告白してしまったのだが、これで彼女の頼みを断ったらこの内容が他に漏れる恐れがあった。
例えば斑目さんと仲が良い大島さんとかに伝わった日にはもうどうなるか、想像がつかない程の事が起きそうな不穏な胸のざわつきが起こった。
告白を断れたから斑目さんを諦めて、他の人が好きになったなんてどうだろうと言い訳を考えたが、そんな1~2カ月で好きな人が変わる奴だと噂を流される恐れもある。
もっと思い返せば、大島さんから斑目さんを手を出されない様にする為、仕方なく告白をすることになったのだが、根本を思い出せば俺自身が大島さんに人に言えないような事をしていたことが原因だったこと、それは身から出た錆としか言えなかった。
そして、この話が噂として山城さんの耳に入ってはいけないと思うと、断ることが出来なくなっていた。
「・・・そこまで言うなら。」
俺にとっては苦渋だが、俺にはこれしか選択が残っていなかった。
その一言を聞いた斑目さんは安堵のため息を突くと、放課後にまた生徒会室に来るように言われてその場で解散した。
放課後に生徒会室に行くと、机の上に大きな段ボール箱が置かれていた。
その段ボール箱から斑目さんは熊の着ぐるみを取り出しながら、これに着替えるように言ってきた。
外で斑目さんを待たせて、生徒会室内で着替えながらこれまでの自身の行いを悔いながら着替えていた。
被り物をつけて着替え終るとダンスを練習場所に移動することになって、連れてこられたのはカラーリングアーツ科棟の裏の5m程の正方形のスペースだった。
そこでまずは振付を覚える為の練習が始まったのだが、彼女が用意した振付を事細かに記したA4サイズに丸々1冊使ったノートを見て、始まる前から心が折れそうになりながらも、振付の練習を始めた。
そんな状態の俺を更に斑目さんの振付の駄目出しで、やる気が削られていた。
「そこでしっかり手を挙げて!顔は正面を崩さない!」
何の罰ゲームだ、俺は何してんだかと、鬱屈した気持ちと疲労が溜まってきて動きが雑になっていき、初日からあまり俺も斑さんも手ごたえが無かったことから、その日は早めに切り上げて練習を終わらせた。
その後、アルバイトに」出勤して満身創痍になった後で阿部を呼び出して、ラーメン屋で愚痴を零していた。
それを聞いた阿部は、楽しくてしょうがないらしくてあの気味悪い笑い方をしながら、俺の愚痴をおかずにしてラーメンにチャーハン、餃子と一通り楽しんだ後に、さらっと今回の件の裏側を語っていた。
「なるほど、そんなに斑目さんは力を入れているんですね、いや~関心関心、私から無理矢理ですが今回の件を取り上げた事はありますね。こんな時期になるまでやってくれる人が決まらないとなった時は冷や冷やしましたがね。」
阿部が言うには、文化祭の広報動画は阿部がやる予定だったが、そこに無理を言って斑目さんが半ば強引に取って言ったらしいが、どうせ阿部が何か鼻につく事を言ったに違いないのは何となくわかった。
斑目さんが俺が引き受けた時に安堵の溜息を突いてのは、恐らく、俺以外にも色んな人に御願いをしたが全員に断れたのだろう。
もちろん、阿部が裏でそうなる様に仕組んでいることも何となく察しがついていたが、証拠がないので言及は出来なかった。
「おっと、そんな怖い顔しないで下さいよ。短気は損気、まさか、斑目さんが登藤に泣きつくとは思わなかったので、登藤もそんなにやりたくなければ今からでも断れば良いじゃないですか。」
やっぱり、俺は阿部を好きになれないのは理由がはっきりした気がした。
確かに俺は山城さんと良い感じに関係が良くなったのは、阿部が色々と裏で動いてくれたことにあるのは、本当に感謝しかない事はわかっていた。
しかし、阿部は平気で人を騙したり、利用したり、邪魔なものに対して容赦どころかどうすれば、一番打撃が与えられるか考えて行動している部分があった。
そして、阿部がその気になれば俺に対してもそれを平気で行えると言う雰囲気があって対等な立場を唄ったビジネスパートナーと言う言葉も信じられなかった。
恐らく、断れない事もわかっていたのも阿部はわかっていて、そう思うと阿部が憎たらしいと思わずにいられなかった。
「でも、私が登藤と同じ立場だったら、困った女子生徒はほっとけないですけどね、私は斑目さんを助けたかったんですが、彼女が私の手を借りたくないと言うので致し方なかったですよ。」
阿部が他にも色々言っていたがそんなのは疲れた体と脳が拒んで、それ以上、内容が頭に入って来なかった。
そんな状態だった為か、家に帰るなり泥沼に沈むような睡魔に襲われ、すぐさま眠りについた。
もちろん、阿部はデートの事について根ほり葉ほり聞いてくるので、どんなことがあったのか答えることになった。
「なるほどですね、私はAぐらいはしてきたと思っていましたが、残念です。」
そう言いながら、一通り話を聞くなり物足りないような顔で、目の前のラーメンを啜っていた。
確かに阿部には今回のデートの件については感謝しかないが、人の恋路についてどうこうといちゃもんつけられた側としては、俺はお前を楽しませるために四苦八苦している訳ではないと声を大にして言いたかった。
「そうそう、私も良いことがありまして、生徒会に入る事が決まりました。」
そのことについては阿部は前々から、そんなことを臭わせていた事もあってあまり驚く事ではなかったが、阿部は俺があまりにも反応が薄いことに何か不満があるような溜息を漏らしていた。
「まぁ、私はこれから生徒会で忙しくなりますので、登藤と山城さんの仲を取り持つことは当分できません。」
阿部のその言葉に俺は何とも思いもしなかったのは、この前のデートで俺と山城さんの関係はあと一歩で恋仲だと言う事に過信があったこともあり、そのまま聞き流していたが、阿部と別れる間際に何かありげに俺に捨て台詞を俺に投げていた。
「山城さん、最近、色んな人に目がつくようになっていますので、のんびりしていると誰かに先を越されてしまいますよ。」
阿部のこの言葉は事実として、俺を不安にさせるような出来事が起こる前触れだった。
それはほんの些細な事で、いつも通りに図書室で山城さんと会っていた時に、彼女からある事について相談された。
「実は先日、演劇部の方から部活に入部しないかと誘いを受けたんです。」
彼女が何故、演劇部に誘われたのかと言う話を聞くと、どうやら応用デザイン科の先生が、彼女が作っていた作品について高く評価をしていて、その才能を活かすなら演劇部に入るべきだと、会う度に誘われていたと言うことだった。
「その、山城さんはどんなものを製作しているんですか?」
山城さんがどんな作品を作っているのか知らなかったのは、決して知りたくない訳じゃなくて、彼女の内心の繊細な部分に土足で踏み入るような真似をしなく無かった。
作品に対して感想を言うにしても、彼女との関係が悪くなる可能性が少しでもあるなら触れたくないと思っていた。
「私が作成するのは、その服とかモックアップとかですね。」
俺は山城さんが演劇部に誘われた理由は、演技をする演者としては無く、衣装や小道具を作る裏方として誘われていた。
俺は内心、彼女が演者として演劇部で活動するようになったら、俺と彼女の関係が薄くなってしまうんじゃないかと少し危機感があったが、その心配も必要なさそうで良かったと安堵した。
それに部活は大体、放課後にやる事になるので、この昼休みの時間はこれまで通りに二人で会えると言う事を信じて疑っていなかった。
だから、俺は山城さんに演劇部へ入部した方が良いとその時は答えたが、そのことについては酷く後悔していた。
次の日から、山城さんから昼休みも演劇部の活動で忙しいという事で、当分、図書室には来れないという連絡が届いていた。
演劇部に入部した方が良いと山城さんに言った手前、それについてどうこう言うのは彼女から見た俺の印象が悪くなるじゃないかと思うところがあった。
どうしたものかと考えると自然に阿部の顔が浮かんで、この前帰り際に言っていたことを思い出し、阿部でスマホに電話を掛けていた。
「もしもし、阿部か、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今時間があるか?」
俺は自分でも気がついていなかったが、焦りと不安で阿部が電話に出た瞬間に一方的に話を始めていた。
俺はこの前のデートで山城さんの関係について、数日前までお互い好意があると自信があったが、自信と言うメッキは脆くも剝れ始めていた。
阿部に山城さんが演劇部に入部したことについて話をすると、阿部は察して俺が言いたいことをすぐに理解していた。
「まぁ、山城さん、前から手先が器用ていうか、才能があるみたいでして、前々からそんな話があったみたいですよ。」
阿部がなんでそんなこと知っているのか、俺に彼女はそんなことを言っていなかったし、急にどうして演劇部に入る話をしたのか、考えが悪い方向にまわるのを止めることが出来なかった。
「彼女も文化祭が近いので忙しんじゃないでしょうか?学校内は人手が足りない部活動が多いらしく、私も手伝いに駆り出されて忙しいですよ。猫の手も借りたいってやつです。」
俺は阿部がしゃべり終わる前にそのまま通話を切って、山城さんの姿を探し始めていた。
どうせ暇だからと言う最もらしい言い訳を自身に言い聞かせながら、山城さんが今どこで何をしているのか気になって仕方が無かった。
俺の頭に色々と過る不安も、彼女が何処で何をしているのか分かれば、落ち着くに違いないと何となくその時は思っていた。
俺が山城さんを見つけたのは、その日の放課後で彼女は応用デザイン科棟の一階の実習室で、何やら演劇部で使用する衣装を作っている様だった。
俺はその姿を応用デザイン棟の向かいにある化学科棟の廊下の窓から様子を覗いていた。
もちろん、電気科の俺は化学科の生徒に不審な目で見られていたが、そんな事をは些細な事だとして、何食わぬ顔でその場所に居座っていた。
確かに山城さんに電話で直接話をすることも考えたが、この嫉妬に近い感情を彼女に悟られる可能性と、彼女に何て言えば良いのか浮かばなかった。
内心では山城さんが俺以外に誰かと仲良くなることに対して不安があるが、内向的で人付き合いが苦手な彼女が前向きに部活に励むと言う前向きな行動を応援すべきだと思っていた。
そう考えると俺が出来ることは見守る事しか出来ないのだが、見つかって誤解を生む可能性もあるので、様子を覗くのは今日だけにすると心に誓い、その日は彼女が帰るのを陰ながら見送った。
その日から俺の中に空白が出来ていた。
山城さんとメッセージのやり取りはしているが、物足りないと言う気持ちよりも満たされたいと言うべきか、例えるなら地面に穴が開いたところにこれまでは砂を入れていたのだが、今回は石を詰めたような感じで微妙に石と石の隙間が空いているようなそんな感じだった。
阿部も忙しいようで連絡は取れるが、これまでみたいに顔を合わせることは無くなってしまった。
もちろん、阿部から紹介されていた怪しい仕事の話も一時的に無くなったのだが、不思議と焦りもしないどころか少し安堵と言うか、気持ちに余裕が出来たと言うべきなのか落ち着いていた。
その代わりにアルバイトの方は、予定を入れる必要がやはりこれまで通りの稼ぎには届かないのは良くわかっていたが、解決方法もないまま時間が過ぎていくのだった。
昼休みに山城さんと会わなくなってから数日、周りは文化祭の準備で盛り上がっている中、俺は完全に蚊帳の外だった。
それはそれで良かったと言うか、いつも通りの事なのでどうでも良かったが、それでもやはり周りがそう言う雰囲気で盛り上がっているを見ていると俺が何処で道を間違えたのか考えたくもないのに空の上の雲のように浮かんでくるのが嫌で、何処かそう言う雰囲気がない場所を学校内で探すようになっていた。
そもそも、そんなところが見つかる訳がないとわかっていたが、やる事もないのでそうしていた方が気がまぎれるのでそうしていた。
何故かは知らないが、珍しく斑目さんから呼び出し連絡がきたときは驚いたと言うより、何か悪いことがバレたんじゃないかと不安を感じながらも彼女の呼び出しに応じる事しか出来なかった。
俺が呼び出されたのは生徒会室で、阿部に事前に事情を探ってもらうことも出来ていない事もあり、身構えない訳が無かった。
気が重いが無視する訳も行かずに、生徒会室の扉をノックして扉を開けると阿部、斑目さんとそれ以外にも他三名、顔だけは見たことがある生徒がいた。
俺の中の微かな記憶では三年生の生徒会役員だったはずだが、恐らく誰かが会長なのは確かだ。
そんな事を思いながらその場に突っ立ていると阿部が空席を指差し、そこに座る様に促してきたので、とりあえず空いている席に座ると、恐らく生徒会長らしい女子生徒から単刀直入に呼び出された理由を説明された。
「文化祭の広報用の動画を撮るのに協力して欲しい。」
俺は予想外の話に困惑していたのは言うまでもないが、そもそも、そう言うのは文化祭委員会があるので、そちらで対応すべきなのではと思うところだが、どうやら文化祭委員会は文化祭準備以外にも文化祭の記念動画を撮影と編集で忙しいので、生徒会に文化祭の広報用の動画を撮る話が流れてきたと言う事だった。
とは言え、生徒会も暇なわけではないので阿部や斑目さん経由で協力者として俺が呼び出された訳だった。
話が終わる事にはとんだとばっちりに良い感じに最悪な気分だった。
阿部が暇そうに俺がしているだろうと思って、協力させようとしているだろうと、この時はそう思っていた。
そして、阿部のことだから埋め合わせとして何かしら用意しているんだろうと思うと決して悪い話ではないので、とりあえずその場は渋々だが了承することにした。
俺はこの後、阿部をいつものラーメン屋に呼び出して事情を聞くと阿部は知らぬ存ぜんぬと言い始めた。
「今回の件は私ではなく、斑目さんが登藤の名前を出したんですよ。私もどういう意図があってかわからないです。」
阿部はそう言いながらラーメンを啜っていた。
とんだ勘違いで引き受けた広報用動画の撮影の件を考えると頭が痛くなってきたが、良く思い出したら呼び出したのは斑目さんで阿部でなかったことを深く考えれば気がついたはずなのだが、今からでも遅くないが断わる事を考え始めていた。
そんな俺を見て阿部はあの気持ち悪い笑い方をしながら、俺にある事を話し始めた。
「登藤、これは好機ですよ。ほら、斑目さんから頼みごとなんて、これは斑目さんとの関係を良くするチャンスですよ。」
俺は阿部が未だに斑目さんと俺との関係をつなげようとすることを諦めていないらしい。
俺の中では色々あって斑目さんに形だけで嘘の告白をすることになって、断れたところからもう脈はないものと思っていた。
「お前がそう思えるのが、どうかしてると思う。大体、彼女はハッキリと俺にはそう言う気持ちはないと言われた。どんな風の吹き回しでそうなるんだ。」
阿部は唇をベロベロと舐めながら少し考えると一言、こう言った。
「風が吹いて桶屋が儲かる。ま、そんな感じですかね。」
阿部は独りで納得している様だったが、この予想は的中していた。
次の日、昼休みに生徒会室に呼び出されて部屋に入るなり、斑目さんはスマホをディスプレイにつなげるとある動画を見せてきた。
それはダンスの動画で内容からして、かなり練習しているのか素人の俺でも見てわかるぐらいキレがあるものだった。
この時点で察する、このダンスを踊って広報動画に出すことになる事がわかった俺は正直に今すぐ断ろうと思っていた。
約5分間の動画を見終わったと同時に俺は断ろうと思っていながらもいつまでに動画を投稿するか聞いてみた。
「二週間、文化祭が開催するのは一ヶ月後だけど、広報用動画だから2週間前には動画をネットにアップロードしたいわ。で、動画の感想とかある?」
動画の感想よりもこの場でどう断ればいいのか頭をフル回転させて考えていた。
「悪いけど、こんなダンスなんて踊れるわけないだろ、大体、この動画のダンスは素人が二週間で踊れるようなもんじゃないだろう。」
そう言うと彼女の顔が目つきがこちらを睨め付けるように鋭くなったが、そこを堪えたのか彼女は出来る限りの作り笑いでこちらを見ていた。
「まぁ、悪魔でも文化祭用の動画ですし、少しクオリティが低くなってしまうのは目を瞑りますからやって頂けないかしら?」
俺が喉元辺りまで辞退の言葉が出て来たのを、斑目さんが遮るように言ってきた。
どうやら意地でも俺に辞退と言う言葉を言わせない様に、クオリティが低くなっても良いと言う言葉を使ってくるのも、絶対に辞退するのだけ避けたいようだった。
しかし、俺も心を鬼にして辞退しますって言おうと口を開いた瞬間だった、彼女はとんでもないことを言い始めた。
「その、やってくれたら、デートでも、何でもして言いわ。」
俺は正直、驚いたと同時に彼女の顔が少し恥ずかしそうに頬が赤くなるのを見てしまった。
俺の中でここで断ったらどうなるか嫌な予感がした。
俺は確かに形だけだが斑目さんに告白してしまったのだが、これで彼女の頼みを断ったらこの内容が他に漏れる恐れがあった。
例えば斑目さんと仲が良い大島さんとかに伝わった日にはもうどうなるか、想像がつかない程の事が起きそうな不穏な胸のざわつきが起こった。
告白を断れたから斑目さんを諦めて、他の人が好きになったなんてどうだろうと言い訳を考えたが、そんな1~2カ月で好きな人が変わる奴だと噂を流される恐れもある。
もっと思い返せば、大島さんから斑目さんを手を出されない様にする為、仕方なく告白をすることになったのだが、根本を思い出せば俺自身が大島さんに人に言えないような事をしていたことが原因だったこと、それは身から出た錆としか言えなかった。
そして、この話が噂として山城さんの耳に入ってはいけないと思うと、断ることが出来なくなっていた。
「・・・そこまで言うなら。」
俺にとっては苦渋だが、俺にはこれしか選択が残っていなかった。
その一言を聞いた斑目さんは安堵のため息を突くと、放課後にまた生徒会室に来るように言われてその場で解散した。
放課後に生徒会室に行くと、机の上に大きな段ボール箱が置かれていた。
その段ボール箱から斑目さんは熊の着ぐるみを取り出しながら、これに着替えるように言ってきた。
外で斑目さんを待たせて、生徒会室内で着替えながらこれまでの自身の行いを悔いながら着替えていた。
被り物をつけて着替え終るとダンスを練習場所に移動することになって、連れてこられたのはカラーリングアーツ科棟の裏の5m程の正方形のスペースだった。
そこでまずは振付を覚える為の練習が始まったのだが、彼女が用意した振付を事細かに記したA4サイズに丸々1冊使ったノートを見て、始まる前から心が折れそうになりながらも、振付の練習を始めた。
そんな状態の俺を更に斑目さんの振付の駄目出しで、やる気が削られていた。
「そこでしっかり手を挙げて!顔は正面を崩さない!」
何の罰ゲームだ、俺は何してんだかと、鬱屈した気持ちと疲労が溜まってきて動きが雑になっていき、初日からあまり俺も斑さんも手ごたえが無かったことから、その日は早めに切り上げて練習を終わらせた。
その後、アルバイトに」出勤して満身創痍になった後で阿部を呼び出して、ラーメン屋で愚痴を零していた。
それを聞いた阿部は、楽しくてしょうがないらしくてあの気味悪い笑い方をしながら、俺の愚痴をおかずにしてラーメンにチャーハン、餃子と一通り楽しんだ後に、さらっと今回の件の裏側を語っていた。
「なるほど、そんなに斑目さんは力を入れているんですね、いや~関心関心、私から無理矢理ですが今回の件を取り上げた事はありますね。こんな時期になるまでやってくれる人が決まらないとなった時は冷や冷やしましたがね。」
阿部が言うには、文化祭の広報動画は阿部がやる予定だったが、そこに無理を言って斑目さんが半ば強引に取って言ったらしいが、どうせ阿部が何か鼻につく事を言ったに違いないのは何となくわかった。
斑目さんが俺が引き受けた時に安堵の溜息を突いてのは、恐らく、俺以外にも色んな人に御願いをしたが全員に断れたのだろう。
もちろん、阿部が裏でそうなる様に仕組んでいることも何となく察しがついていたが、証拠がないので言及は出来なかった。
「おっと、そんな怖い顔しないで下さいよ。短気は損気、まさか、斑目さんが登藤に泣きつくとは思わなかったので、登藤もそんなにやりたくなければ今からでも断れば良いじゃないですか。」
やっぱり、俺は阿部を好きになれないのは理由がはっきりした気がした。
確かに俺は山城さんと良い感じに関係が良くなったのは、阿部が色々と裏で動いてくれたことにあるのは、本当に感謝しかない事はわかっていた。
しかし、阿部は平気で人を騙したり、利用したり、邪魔なものに対して容赦どころかどうすれば、一番打撃が与えられるか考えて行動している部分があった。
そして、阿部がその気になれば俺に対してもそれを平気で行えると言う雰囲気があって対等な立場を唄ったビジネスパートナーと言う言葉も信じられなかった。
恐らく、断れない事もわかっていたのも阿部はわかっていて、そう思うと阿部が憎たらしいと思わずにいられなかった。
「でも、私が登藤と同じ立場だったら、困った女子生徒はほっとけないですけどね、私は斑目さんを助けたかったんですが、彼女が私の手を借りたくないと言うので致し方なかったですよ。」
阿部が他にも色々言っていたがそんなのは疲れた体と脳が拒んで、それ以上、内容が頭に入って来なかった。
そんな状態だった為か、家に帰るなり泥沼に沈むような睡魔に襲われ、すぐさま眠りについた。
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