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拐われた想創ノ民の娘

拐われた想創ノ民の娘5

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低い、男の声が聞こえる。
綾瀬はソチラに目を向けた。
大柄な体格の男が、見下ろしていた。

旧時代の古代文字──クァラク文字の刺青いれずみを、その浅黒い腕に彫った、異国の民族衣装を纏った男。
綾瀬は男を睨んだ。



「《閉ざされた大地》 ユグヒラム第三王朝。
貴民あがたみ〉 アヤセ・クウィーリー。
我らと共に来てもらおう。

我は《閉ざされた大地》 シータ王朝の者である」


「……シータ、王朝?」




聞いたことのない名だった。

この小さな惑星の、海に浮かぶ唯一の大地──《閉ざされた大地》。
その中に在る、三つの王朝。
ソフラム第一王朝、エンフィム第二王朝、ユグヒラム第三王朝。

シータ、という名の王朝など、綾瀬は過去にも今にも、今まで聞いたことが無かった。

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