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2人
否定
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絶句して、二の句が継げないでいるロメリアに、ガブリエルは畳み掛けるようなことはせず、答えを待って沈黙し続けた。
ただし、その腕は決してロメリアの身体を離そうとはしない。
彼が横暴な態度を取るのなら、もっと頑なな態度で拒めるのだが。どこか縋るような雰囲気さえ滲ませる彼の態度に、自分がどういう態度で彼に接するべきなのか、ロメリアは全く分からなくなってしまった。
「……顔を隠してあなたと会って、何を話すというのよ」
もっと何か言わなければならないこと、聞きたいこともあったはずなのに、口をついて出たのは素朴な問いかけ。
ガブリエルは真面目に考え込んで、しばらくしてから、静かに答えた。
「私には、君の好むような話が出来ない」
「……そうね。あなたは社交界のことも、まして宝飾品や流行のドレスなんかには興味も関心もないもの。知ってるわ」
肯定して頷くと、ロメリアを抱くガブリエルの力が僅かに強まる。
「……君を楽しませることもできないのに、君の声を聞いていたいと言ったら……君は呆れるか」
「……それは」
ロメリアは思わず言葉に詰まった。
ガブリエルが今言葉にしたことは、ずっと己が感じていたことだったから。
彼を楽しませる話題なんて1つも持ち合わせてはいないのに、必ず返ってくる相槌が嬉しくて、ロメリアは喋り続けていた。
(……まさか、彼が私と同じことを考えるなんて思わなかった)
ガブリエルは今まで人間的な感情を表情に出すことはなかったし、言葉で伝えてくることもなかった。
おそらく今、彼は彼なりに努力して、自分の考えていることを伝えようとしている。
だが、今さらそんな風にされても困るのだ。
愛おしいと思わされては困るのだ。
「……あなたは、いつも傍でうるさくしていた私が急に静かになったから、気を引かれているだけよ」
ガブリエルがそんな薄情な人間だなんて思っていない。
だけど彼は、自分自身のことにさえ興味がないから、人に言われてしまえば「そうかもしれない」と少しは考える。
それで十分だった。
ほんの少しでも「そうなのかもしれない」と思えば彼の行動には迷いが出る。迷いが出れば頑なな態度は崩れるだろう。少なくともこの腕の力を緩めるくらいはしてくれるはずだ。
そんなことを考えながら、ロメリアはブローチを握りしめてすぐに立ち上がれるように足に力を込める。
だが、予想に反して、ガブリエルの腕の力が緩まることはなく、むしろ一層強くなってしまった。
「違う」
端的な否定の言葉。
ただ単に気を引かれているだけではないと、彼自身が否定したことに、ロメリアは息を呑む。
ただし、その腕は決してロメリアの身体を離そうとはしない。
彼が横暴な態度を取るのなら、もっと頑なな態度で拒めるのだが。どこか縋るような雰囲気さえ滲ませる彼の態度に、自分がどういう態度で彼に接するべきなのか、ロメリアは全く分からなくなってしまった。
「……顔を隠してあなたと会って、何を話すというのよ」
もっと何か言わなければならないこと、聞きたいこともあったはずなのに、口をついて出たのは素朴な問いかけ。
ガブリエルは真面目に考え込んで、しばらくしてから、静かに答えた。
「私には、君の好むような話が出来ない」
「……そうね。あなたは社交界のことも、まして宝飾品や流行のドレスなんかには興味も関心もないもの。知ってるわ」
肯定して頷くと、ロメリアを抱くガブリエルの力が僅かに強まる。
「……君を楽しませることもできないのに、君の声を聞いていたいと言ったら……君は呆れるか」
「……それは」
ロメリアは思わず言葉に詰まった。
ガブリエルが今言葉にしたことは、ずっと己が感じていたことだったから。
彼を楽しませる話題なんて1つも持ち合わせてはいないのに、必ず返ってくる相槌が嬉しくて、ロメリアは喋り続けていた。
(……まさか、彼が私と同じことを考えるなんて思わなかった)
ガブリエルは今まで人間的な感情を表情に出すことはなかったし、言葉で伝えてくることもなかった。
おそらく今、彼は彼なりに努力して、自分の考えていることを伝えようとしている。
だが、今さらそんな風にされても困るのだ。
愛おしいと思わされては困るのだ。
「……あなたは、いつも傍でうるさくしていた私が急に静かになったから、気を引かれているだけよ」
ガブリエルがそんな薄情な人間だなんて思っていない。
だけど彼は、自分自身のことにさえ興味がないから、人に言われてしまえば「そうかもしれない」と少しは考える。
それで十分だった。
ほんの少しでも「そうなのかもしれない」と思えば彼の行動には迷いが出る。迷いが出れば頑なな態度は崩れるだろう。少なくともこの腕の力を緩めるくらいはしてくれるはずだ。
そんなことを考えながら、ロメリアはブローチを握りしめてすぐに立ち上がれるように足に力を込める。
だが、予想に反して、ガブリエルの腕の力が緩まることはなく、むしろ一層強くなってしまった。
「違う」
端的な否定の言葉。
ただ単に気を引かれているだけではないと、彼自身が否定したことに、ロメリアは息を呑む。
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