病弱な公爵令嬢(?)の家庭教師~その正体は?~

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中

文字の大きさ
1 / 35
第1章 ディアス公爵邸編

第1話 始まりは養父の昔話

しおりを挟む
「アニタよ、すまないがディアス公爵家へ行ってもらえないか?」

 養父ちちであるコルテス男爵からの、突然の申し出に私は驚いた。

「それはつまり、私はお払い箱ということですか!?」
「アカデミーから呼び出せば、そう捉えるのも無理はない。だが、そういう意味ではないのだ」

 優しい声音に、私はホッとした。なにせ、在学しているアカデミーから連絡を受けて、帰ってきたばかりなのだ。
 しかも呼び出された文面は『荷物をまとめて至急戻れ』という不吉ふきつきわまりないものだった。

 加えて実父ではない、養父の言葉。勘違いしない方がおかしかった。

「アニタ。私がお前を養女にした理由は覚えているか?」
「勿論です。孤児となった私を、お祖母様の遺言というだけで引き取ってくださったこと。今でも感謝しております」
「そんなことはない。今の地位があるのは、あの御方のお陰なのだ。是が非でも引き受けなければバチが当たってしまう」

 養父はそういうと、お祖母様と出会った時の話をし始めた。

 その昔、養父は一攫千金を狙って、金が出ると噂の山にやってきた。しかし掘れど掘れど、一向に金は出てこない。
 当たり前だ。その山は金山ではなかった。けれど金が出ると信じて、養父は五年も無駄にしたという。その前に騙されたと気づかないのがまた、養父らしいといえばらしかった。

 ともあれ、養父はすでに二十代後半。山に籠もっている間、好きだった女性は他の人と結婚し、親友は事業を成功させて、雲の上の存在に成り果てていた。つまり、一般世間でいうところの、負け犬となってしまったわけである。

 途方に暮れるも、行き先のない養父は金山へと戻る。田舎にも、首都にも養父の居場所はなく。
 辛くても、いや辛いからこそ人目のない場所を求めて、ここに留まったのだ。

 けれどそれが功を奏した。お祖母様に出会ったのだ。

『ここの山を掘れる体力があるのなら、あっちの山を掘ってみな。良い石が埋まっているよ』

 目的のなかった養父は元々、人も良かったのだろう。お祖母様の言葉を全く疑わずに、その山を掘ったのだという。

「あの時、ダイヤモンドを掘り当てられなければ、私はここにいないし、生きてもいられなかっただろう」

 胸に手を当てて、思い出に浸る養父を見て、私も目を閉じた。
 傍目からは、一緒にお祖母様を思い出しているように見えるかもしれない。しかし実際は、耳にタコが出来るくらい聞いた話に辟易へきえきしていただけだった。
 養女になってから、何度この話を聞いたことだろう。

「そのお気持ちを疑ったことはありません。だからこそ、何故アカデミーを離れてまで、ディアス公爵家に行かなければならないのですか?」
「それは……この話をつい、ディアス公爵様に話してしまったのだ」

 言い淀む養父を前に、私は黙ってその先を促した。
 まさかとは思うが、ディアス公爵様を怒らせた、とか? だから深刻な顔をしているのだろうか。
 けれどその答えは、とても意外なものだった。

「それで是非、アニタを娘の家庭教師になってほしいと懇願された」
「か、家庭教師!?」

 あの話から、どうしてそんな流れになるのよー!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言

夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので…… 短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 このお話は小説家になろう様にも掲載しています。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...