病弱な公爵令嬢(?)の家庭教師~その正体は?~

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中

文字の大きさ
22 / 35
第1章 ディアス公爵邸編

第22話 風浪の魔女からの手紙

しおりを挟む
 
 ◆◇◆

 ごきげんよう、星読みの魔女。
 恐らく、初めましてではないと思うの。
 大丈夫。間違ってはいないから。だって私は風浪ふうろうの魔女。
 貴女、いえ、アニタと同じ読む者。
 まぁ、私の場合は風だけど。
 それで昨夜、貴女が星を読んだのが分かった。位置もね。

 だから、この手紙を夫、ドルーに渡したんだけど……。
 ちょっと彼、魔女オタクだから気をつけてね。

 ◆◇◆


 気をつけるって? 魔女オタクって?

 どういうことですか! 風浪の魔女!

 手紙を読んだ直後、私は顔を上げて、そのままドルーを凝視した。
 すると、何故か意図が伝わったらしい。にこりと微笑まれた。

 私は辺りを見回し、いつの間にか椅子に座っていたザカリー様の傍へ行く。そのまま後ろに回り、その小さな肩を掴んだ。

「どうした、アニタ」
「いえ、その……」

 何と言えばいいんだろう。すると、ザカリー様は腕を上げて、後ろにいる私に向かって手のひらを見せた。

「寄越せ」
「え?」
「見ても構わないのなら、寄越せと言っているんだ」

 矛盾した言い方だったが、この状況を打開するには、渡すのが得策だと思った。

「なるほどな。アニタが怖がるのも無理はない。ドルー。今後、アニタに用がある時は俺を通せ。いいな」
「妻からも怖がらせるな、と言われていますので、そのように致します」
「これでいいか、アニタ」
「ありがとうございます」

 さらに安心させるように、肩に置いた手を優しく叩く。

 五歳年下の、まだ幼さの残る少年に慰められるなんて、と思ったが、安堵したのも確かだった。

「ザカリー様。そう言った矢先で申し訳ないのですが、妻から星読みの魔女にお届け物がありまして。お部屋に運んでもよろしいでしょうか」
「届け物?」
「はい。けして怪しい物ではありません。薬草ですから」

 ここで風浪の魔女から薬草……ということは。

「もしかして、ルシア様の薬に使う物ですか?」
「その通りです。星読みの魔女は薬に長けていると聞きましたが、やはりそうでしたか」

 誰に? とは聞かなくても分かる。
 お祖母様はそれで生計を立てていたのだから、風浪の魔女が知っていてもおかしくはない。

「確かアニタは、アカデミーで薬学を専攻している、と言っていたな」
「山奥で暮らしていましたから。薬を調合するお祖母様を手伝っている内に、私も自然と薬草に詳しくなりました」
「そうか。つまり今までのように、ルシアの薬が切れる心配がなくなる、というわけか」
「薬草の手配なら、妻でなくとも私がいれば可能ですから、そうなります」

 それってつまり、ルシア様の治りが遅いのは……。

「薬が足りなかったということですか?」
「はい。妻は各地におもむいているため、ルシア様を優先するわけにはいかないのです」
「……魔女とは、そういうものですから」

 特別扱いはしない。相手が王であろうが貴族であろうが。そういう決まりだ。
 例外があるとするならば、身内に対してのみ。

 今回は、私がいるから少しばかり優先してくれた、と解釈していいのだろうか。

「分かりました。有り難く使わせてもらいます、と奥様にお伝えください」
「では早速、お部屋に運ばせてもらいます」

 そう言ってドルーは部屋から出て行った。
 扉が閉まる音を聞き、ふとある考えが浮かんだ。

 魔女の身内ならば例外……だったら、彼女を呼ぶことができるのではないだろうか、と。
 うん。これならルール違反にはならない。

「ザカリー様。お願いがあるのですが」

 そう昨夜、星が教えてくれた『アカデミーへ』という言葉を思い出したのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言

夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので…… 短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 このお話は小説家になろう様にも掲載しています。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...