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第3章 真実
第13話 邂逅(ユベール視点)
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サビーナ・エルランジュさんと出会ったのは、両親のお墓の前だった。
どんよりとした厚い雲に覆われた空。どこか空気も湿っていて、いつ降り出してもおかしくはない状況だった。
けれど僕は葬儀が終わっても、そこから離れられず、ただ棒のように一人、立ち尽くしていた。
さっきまでは、葬儀に参席してくれていた人や、手伝ってくれた人たちがいたが、今はいない。一人ぼっちになってしまった僕の気持ちに、配慮してくれたのだろう。
慌ただしい葬儀だったから、改めて両親と向き合う時間をくれたのだ。しかしそれを邪魔する者が現れた。
「初めまして、ユベール・マニフィカさん」
今は誰とも話したくないのに。
けれどこの人も、両親と親交があった人かもしれない。僕は一歩、後ろに下がり、声のした方へ体を向ける。
するとそこには、黒いローブにつばの広い三角帽子、といった、まるで魔女のような格好をした女性が立っていた。
「……魔女さん?」
「え?」
「違うとしたら、死神さんかな?」
「もしかして、貴方も死にたいと言うのかしら。折角、見つけたというのに」
大事な時間を邪魔された腹いせで言っただけなのに。どうして、そんな悲しそうな顔で見るんだ。
「誰かとお間違いではないですか? 確かに今は何もやる気が起きませんが、両親の後を追うほど、落ちぶれてはいません」
「そう、なら良かったわ。私はサビーナ・エルランジュ。貴方のお祖父様にお世話になった者よ」
「お祖父様って、変な遺言を遺した、あのお祖父様?」
「えぇ。確かに貴方からしたら不可解な遺言よね。人形を探してくれ、だなんて。それでも、私には貴方のお祖父様、ヴィクトル・マニフィカと同じくらい大事なことなのよ」
「それなら貴女が探したらどうですか?」
大事なことなら、自分でやればいい。初対面なのに、どうしてそれを僕に言うんだ。
まるで探してほしい、と懇願するかのように。
そもそもお祖父様の遺言なんて、父さんも伯父さんたちも守っていない。何故なら人形を探したからといっても、何のメリットもないからだ。
むしろ、探す必要はない、とばかりに乱暴な口調で言っていた。その理由を僕は知らなかったから、あえて聞こうとも思わなかった。
だから、こう質問をすれば引いてくれると思ったのだ。けれどサビーナさんは、逆に詰め寄って来た。
「私ではダメなのよ。見つけたとしても、リゼットを、人形を目覚めさせることはできないから」
「目覚めさせる?」
人形は人形だろう?
「リゼットは元々人間なのよ。私が彼女を人形に変えた。ヴィクトル・マニフィカに頼まれて」
「お祖父様にそんな趣味が?」
「違うわ。リゼットを守るためにしたことなのよ」
そうして僕は、サビーナさんからリゼットが人形になってしまった経緯を聞いた。とても悲しい恋物語のような話を。
「つまり、リゼットは今の僕のように一人ぼっちってことですか?」
「分からないわ。誰かの手にいるのかもしれないし、野ざらしにされているかもしれない。今のリゼットはただの人形でしかないから」
「……それは……僕より悲惨ですね」
想いが届かなかったお祖父様よりも、尚。
「だからリゼットを助けてほしいのよ」
「どうして僕が?」
「……貴方がヴィクトル・マニフィカに似ているからよ。リゼットが目を覚ました時、安心すると思うの。全く知らない顔より、馴染のある顔が傍にいた方が」
だから僕に探してほしいと言うのか。
「でもそれって逆に辛くないですか? 僕はお祖父様じゃないし、リゼットはお祖父様に裏切られたと思っているんですよね?」
「どうかしら。人形にしたことで、記憶に誤差が生じている可能性もあるの」
「つまり、最後の部分がごっそり抜けている可能性もあるというんですか?」
「えぇ。あくまでこの魔法は、罰を与えるものだから。対象者をそこまで気遣って作られたものではないのよ」
それを教え子に使った、と?
僕は一瞬、サビーナさんを軽蔑しそうになった。が、そんな人がリゼットを探してほしい、というだろうか。さらにお祖父様に似ているらしい僕に、頼むとは思えなかった。
どちらかというと、リゼットを気遣っているようにさえ見える。大事な存在だと感じざるを得ないほどに。
「だったら尚更、リゼットにとってはそれがいいのかもしれませんね」
「いいの? マニフィカ家がそれによって……」
「過ぎたことですし、僕は当事者であって当事者じゃない。父さんたちが何故、リゼットを探さなかった理由が少しだけ分かった、程度ですよ」
「強いのね」
「いえ、弱いんです。サビーナさんの提案に、容易く承諾してしまいそうになるくらい、弱いんですよ、僕は」
どうやって生きていこうかなって思っていた矢先、人参をぶら下げられたんだ。本来なら自分とは関係ない、と断るところなのに、今の僕は深く考えずに引き受けようとしている。
何でもいい。僕に生きる目的を与えて、と縋っているのだ。現実を見たくないがために。がむしゃらに向き合える目的がほしい、と足掻いているに過ぎないのだ。
「っ! そんな貴方の気持ちを利用するような感じになってしまったけれど、ありがとう。承諾してくれて」
「いいえ。新たな道を示唆してくれて、こちらこそありがとうございます。それで、どうやってリゼットを目覚めさせるんですか?」
「あぁ、そうね。リゼットは魔力量が多いから、人形になっても所持したままなの。だから、これを付けてあげて」
サビーナさんは色とりどりの石を、僕に見せてくれた。
「これは宝石ですか?」
「ちょっと違うけれど、そうよ。だから、困った時があったら、これをお金に換えても構わないわ。無くなったら、折を見て会いに行くから、遠慮なく使って頂戴」
そう言いながら、手のひらの上の宝石を巾着袋に入れて、僕に手渡した。
「黒髪に赤い瞳をした可愛い子だから、大切に扱ってね」
「っ! その子が目覚めたら、お話できますか?」
「勿論。存分に構ってあげて。本当は人恋しい子だから」
「優しいですか?」
「気遣い過ぎて、見ていられなくなるくらい、優しい子よ」
言葉や口調だけでなく、表情まで和らげるサビーナさん。
そこまでさせるリゼットという人は、どんな人なんだろう。
お祖父様が愛し、大事にされているリゼット。
僕と家族になってくれるかな。ずっと一緒にいてくれるといいな。
一人は嫌だから。
どんよりとした厚い雲に覆われた空。どこか空気も湿っていて、いつ降り出してもおかしくはない状況だった。
けれど僕は葬儀が終わっても、そこから離れられず、ただ棒のように一人、立ち尽くしていた。
さっきまでは、葬儀に参席してくれていた人や、手伝ってくれた人たちがいたが、今はいない。一人ぼっちになってしまった僕の気持ちに、配慮してくれたのだろう。
慌ただしい葬儀だったから、改めて両親と向き合う時間をくれたのだ。しかしそれを邪魔する者が現れた。
「初めまして、ユベール・マニフィカさん」
今は誰とも話したくないのに。
けれどこの人も、両親と親交があった人かもしれない。僕は一歩、後ろに下がり、声のした方へ体を向ける。
するとそこには、黒いローブにつばの広い三角帽子、といった、まるで魔女のような格好をした女性が立っていた。
「……魔女さん?」
「え?」
「違うとしたら、死神さんかな?」
「もしかして、貴方も死にたいと言うのかしら。折角、見つけたというのに」
大事な時間を邪魔された腹いせで言っただけなのに。どうして、そんな悲しそうな顔で見るんだ。
「誰かとお間違いではないですか? 確かに今は何もやる気が起きませんが、両親の後を追うほど、落ちぶれてはいません」
「そう、なら良かったわ。私はサビーナ・エルランジュ。貴方のお祖父様にお世話になった者よ」
「お祖父様って、変な遺言を遺した、あのお祖父様?」
「えぇ。確かに貴方からしたら不可解な遺言よね。人形を探してくれ、だなんて。それでも、私には貴方のお祖父様、ヴィクトル・マニフィカと同じくらい大事なことなのよ」
「それなら貴女が探したらどうですか?」
大事なことなら、自分でやればいい。初対面なのに、どうしてそれを僕に言うんだ。
まるで探してほしい、と懇願するかのように。
そもそもお祖父様の遺言なんて、父さんも伯父さんたちも守っていない。何故なら人形を探したからといっても、何のメリットもないからだ。
むしろ、探す必要はない、とばかりに乱暴な口調で言っていた。その理由を僕は知らなかったから、あえて聞こうとも思わなかった。
だから、こう質問をすれば引いてくれると思ったのだ。けれどサビーナさんは、逆に詰め寄って来た。
「私ではダメなのよ。見つけたとしても、リゼットを、人形を目覚めさせることはできないから」
「目覚めさせる?」
人形は人形だろう?
「リゼットは元々人間なのよ。私が彼女を人形に変えた。ヴィクトル・マニフィカに頼まれて」
「お祖父様にそんな趣味が?」
「違うわ。リゼットを守るためにしたことなのよ」
そうして僕は、サビーナさんからリゼットが人形になってしまった経緯を聞いた。とても悲しい恋物語のような話を。
「つまり、リゼットは今の僕のように一人ぼっちってことですか?」
「分からないわ。誰かの手にいるのかもしれないし、野ざらしにされているかもしれない。今のリゼットはただの人形でしかないから」
「……それは……僕より悲惨ですね」
想いが届かなかったお祖父様よりも、尚。
「だからリゼットを助けてほしいのよ」
「どうして僕が?」
「……貴方がヴィクトル・マニフィカに似ているからよ。リゼットが目を覚ました時、安心すると思うの。全く知らない顔より、馴染のある顔が傍にいた方が」
だから僕に探してほしいと言うのか。
「でもそれって逆に辛くないですか? 僕はお祖父様じゃないし、リゼットはお祖父様に裏切られたと思っているんですよね?」
「どうかしら。人形にしたことで、記憶に誤差が生じている可能性もあるの」
「つまり、最後の部分がごっそり抜けている可能性もあるというんですか?」
「えぇ。あくまでこの魔法は、罰を与えるものだから。対象者をそこまで気遣って作られたものではないのよ」
それを教え子に使った、と?
僕は一瞬、サビーナさんを軽蔑しそうになった。が、そんな人がリゼットを探してほしい、というだろうか。さらにお祖父様に似ているらしい僕に、頼むとは思えなかった。
どちらかというと、リゼットを気遣っているようにさえ見える。大事な存在だと感じざるを得ないほどに。
「だったら尚更、リゼットにとってはそれがいいのかもしれませんね」
「いいの? マニフィカ家がそれによって……」
「過ぎたことですし、僕は当事者であって当事者じゃない。父さんたちが何故、リゼットを探さなかった理由が少しだけ分かった、程度ですよ」
「強いのね」
「いえ、弱いんです。サビーナさんの提案に、容易く承諾してしまいそうになるくらい、弱いんですよ、僕は」
どうやって生きていこうかなって思っていた矢先、人参をぶら下げられたんだ。本来なら自分とは関係ない、と断るところなのに、今の僕は深く考えずに引き受けようとしている。
何でもいい。僕に生きる目的を与えて、と縋っているのだ。現実を見たくないがために。がむしゃらに向き合える目的がほしい、と足掻いているに過ぎないのだ。
「っ! そんな貴方の気持ちを利用するような感じになってしまったけれど、ありがとう。承諾してくれて」
「いいえ。新たな道を示唆してくれて、こちらこそありがとうございます。それで、どうやってリゼットを目覚めさせるんですか?」
「あぁ、そうね。リゼットは魔力量が多いから、人形になっても所持したままなの。だから、これを付けてあげて」
サビーナさんは色とりどりの石を、僕に見せてくれた。
「これは宝石ですか?」
「ちょっと違うけれど、そうよ。だから、困った時があったら、これをお金に換えても構わないわ。無くなったら、折を見て会いに行くから、遠慮なく使って頂戴」
そう言いながら、手のひらの上の宝石を巾着袋に入れて、僕に手渡した。
「黒髪に赤い瞳をした可愛い子だから、大切に扱ってね」
「っ! その子が目覚めたら、お話できますか?」
「勿論。存分に構ってあげて。本当は人恋しい子だから」
「優しいですか?」
「気遣い過ぎて、見ていられなくなるくらい、優しい子よ」
言葉や口調だけでなく、表情まで和らげるサビーナさん。
そこまでさせるリゼットという人は、どんな人なんだろう。
お祖父様が愛し、大事にされているリゼット。
僕と家族になってくれるかな。ずっと一緒にいてくれるといいな。
一人は嫌だから。
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