5 / 29
プロローグ
プロローグ 兄さま、僕の笑顔でメロメロになっちゃえ~!!
しおりを挟む「おぎゃー!!!」
この盛大に泣いているのが僕、リュカ。でも親は僕に全く興味を持たないし、それにお世話をしてくれる侍女は1人しかいない。それには理由がある。
僕が黒髪黒目だからだ。
黒髪というだけでこの世界では珍しいから目立つのに、さらに黒目だというのが尚更僕を孤立させる原因となった。
黒髪黒目の持ち主は、高確率で闇属性を持っているらしい。この闇属性というのは、この世界では迫害されている属性だ。だから僕の両親は僕のことをほったらかしにしている。
あーー! どうやってこれから先、生きようかなぁ。
そんなことを考えていると不意にドアが開いて、そこから澄んで耳障りのいい、だけれど僕以外には聞こえないようにひっそりとした声が聞こえた。
「リュカ、お兄様がきたよ」
容姿端麗。銀髪美人。成績優秀。褒め称える言葉全てが当てはまるのではないかと思うほど素晴らしい男の子が僕の部屋に入ってきた。これが僕の兄、クラウスだ。
僕は兄さまの名前を初めて聞いたときに気付いた。ここは僕が前世でプレイしていたBLゲームの世界だということに!
前世の僕は腐男子だった。それも少しでもハマったシリーズ物は全て制覇するガチ勢!
だからこそ、この世界がBLゲームの世界だと気付くことができた。BLゲームの名前は『sacred love(神聖な愛)~僕のDestiny~』。スマホアプリだからスマホに覗き見防止カバーをつけて、スマホの明るさをMAXまで下げて、ニヤケているのがバレないようにマスクもつけて……というように最大限の対策をした上で登下校中の電車の中でよくプレイしたものだ。
このBLゲームを一言で表すと、平民の主人公が日常生活の中で出会った男の人と恋愛関係になってしまう!というもの。でも、この世界には特徴がある。それは身分制度があって、さらに魔法も使える世界だということ!
つまり、主人公もお忍びで城下街に降りてきた貴族と平和に恋愛ができるわけじゃない。さらにさらに、誘拐されるシーンでは転移魔法を使われたせいでなかなか見つけることができず、主人公が深く絶望してしまうシーンもある。誘拐された先ではあんなことやそんなことが……!!
思い出したけどゾッとしちゃった……やめようやめよう。
この世界の魔法の属性は、火、水、草、土の4属性が基本になっている。他に光属性とか闇属性とかもあるけど、闇属性は迫害されている属性。なんで迫害されているのかというと、この闇属性というものは、魔物と契約した者が手に入れる属性だと言われているからだ。
もちろんそれは根も葉もない噂。なぜなら黒髪黒目で生まれて闇属性を持っていると散々言われている僕は、魔物なんてまーったく!1度も!見たことないからね!
そして対になっているように感じる光属性は、実は闇属性と違ってありふれている属性だ。それに光属性の人は、稀に聖属性という属性も持っていることがある。でもこの属性を持っている人は、今はこの世界に存在しない。
ゲームでは攻略対象と結ばれたときに、光属性の主人公がこの聖属性の魔法の力を目覚めさせ、その力で国の危機を救う。それでハッピーエンド!
というのがこのBLゲームの大まかな内容。じゃあ僕はどんな立場なのかというと、攻略対象の一人である公爵家のクラウス兄さまの弟ってだけの存在。作品中での僕の描写は、僕のことを屋敷でいちばん嫌っている母親に嘘をつかれて屋敷から連れ出された挙句、僕を乗せた馬車が盗賊に襲われて、凌辱されてしまうというものだった。そしてそして、そのあとは殺されてぽいっとされる運命……。
ゲームをプレイしているときは『本編で濡れ場が全然ないから弟君の凌辱シーン入れたのかな? えっちだなぁ!』としか考えてなかった。
ぼくのばかばか!地雷がないからって受け入れるなよ! 黒髪黒目で闇属性だからって理由で迫害されていることにも違和感を持てよー!!
つまり、ゲームじゃなくて現実となった今、僕は味方をつくらなければならない。そうじゃないと死んじゃう! とりあえず今は僕に会いに来てくれた、たった5歳しか変わらないのに既に将来が有望すぎるこの兄さまに媚びを売らないとダメだ!
この考えに至ったときから、僕ができることをなるべくすることにした。それは兄さまが来たら笑顔になること! あわよくば兄さま……いいや、にーにくらい言いたい!
「ばぶぅ……うぅ」
がんばって声に出そうとしても、僕の口から出るのは全くあっていない音。それでも笑顔は忘れないんだ! 僕の笑顔を見てメロメロになっちゃえ兄さま! にこにこ!
「ばぅ、ぶ、あぃ!!」
「リュカ……僕を見て笑ってくれるの? うれしい。ありがとうね」
え、どうして眉を下げちゃうの兄さま? 僕は兄さまのことを笑顔にしてあげたかったのに! だめだめー!僕から離れないでよー!
「うぅ……うぇ~ん!!! えっぐ、えっぐ」
「ええ、どうしたのリュカ? なんで泣いているんだろう。ごめんね、こんな兄様で。リュカの考えていることがまだわからないんだ。ごめんね」
そう言ってさらに悲しそうな顔をした兄さまは、僕のことを抱っこしてくれた。ふわっと、首が座っていない僕に負担をかけないように。
黒髪黒目という外見なのに大切に扱われていることに感動して、僕の目からはまた涙がでてくる。止まらない。きっと兄さまが泣いたら、真珠のようにきれいな涙を流すんだろうなあ。まあ僕は鼻水ダラダラだけどね!
あ、さらに泣いちゃったから兄さまが困ってる! 兄さまは全然悪くないよ。ただ、僕のからだがなぜかいうことを聞かないんだ。泣きやめー!って思っても泣き止まないの。
ごめんね、兄さま。そんな顔をさせたくなかったの。お願いだからそれ以上眉を下げないでー!!
そんなことを心の中で必死に訴えていると、ドアの先から低く存在感のある声がした。
「クラウス」
「はい、父様。……なんでしょうか?」
「もう勉強の時間だ、何をしている。そんなところにいないで早く出てきなさい。お前は公爵家次期当主だろう。そんなものにかまっている時間などない」
「……はい」
悲し気に小さく返事をした兄さまは、僕を元のベビーベッドに優しく置いて、強ばった顔でドアを開けた。
開けたドアからは、兄さまに似た顔立ちをしている銀髪の男の人が見えた。
これもBLゲームで見た顔だ。これが僕の、僕たちの父さま……。
生まれて初めて見た父さまは、僕のことを睨んでいた。
17
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる