神子のピコタン

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ダビの物語 ピコタンの声

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明け方、ダビが早めに作業に出ようと馬の準備をしていると、隣のおじさんとおばさんがパピコも連れて三人でやって来た。


「ダビさん、昨日は本当にありがとう。」


そう言って焼きたてのコーンブレッドを渡される。
ただ斧を片手に立ってただけなんだが。
ダビがコーンブレッドを素直に受けとる姿を見て、おばさんはおずおずと言ってみた。


「お婆さんの具合はどう?」


ダビはそんな事を聞かれるとは思ってなかった。婆さんも村中の嫌われ者だ。


「・・・ずっと寝てる。」


戸惑いながら答えた。


「・・・お会いできるかしら?」


ダビは黙ったまま頷いて、三人を家に入れた。
婆さんはまだぐっすりと眠っていた。
婆さんの様子を見ておばさんは
「きれいにしてるのね。」
と言った。


ダビは顔を真っ赤にすると、あわてて外に出ていってしまった。
褒められたような気がして。ちゃんと看てると。


しばらくすると三人は出てきて、「またお昼ごろにお見舞いに来るわ。」と言い、おばさんとパピコは帰っていった。


残ったおじさんは「あのガキ二人組は、都会に出稼ぎに行ったと聞かされた。」とダビに言った。
出発する前に、事を済ませるつもりだったのだろう。うまく逃げた。
ダビは、このまま戻ってこなければいいが、と思った。
「ピコタンだが・・・」おじさんは言いよどんだ。


「しゃべれるのか?と聞いたら首を横に振って否定してた。」


そんなはずはない。確かにしゃべった。
あの時、俺しかいなかったが。
ダビが怪訝そうにする。


「ダビさんに助けを求めたか?と聞いたら、ニコニコしてうんうん頷いていた。」


・・・意味がわからない。


確かに通りすがりに「パピコに蜂蜜も頼めばよかった!」と、おばさんが言ってるのは聞こえた。
だから、ああ、いないんだな、と。
でも弟は「林の中」と、ハッキリと言った。
いや、聞こえたのか?
そして、急がなければ、と思った・・・。


「・・・虫の知らせってやつか?本当に助かった。感謝してる。」


おじさんはそう言うと「婆さん大事にな。」と、去っていった。
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