神子のピコタン

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ダビの物語 過去

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パピコを送り届けて、はやばやとダビは帰ってしまった。

明日は久しぶりに女を抱きにいくか、と頭から水をかぶる。不潔なまま行くとうるさい。
ダビには馴染みの娼婦がいた。

ダビは、カッとなると暴力を振るうタチで、力も強く、相手が降参するか気絶するまで叩きのめさないと気が済まない、手に負えない乱暴者だった。
ダビが12の頃に、耐えきれなくなったのか母親に捨てられた。父親は誰かもわからない。年がら年中、誰かの悪口を言っているケチな婆さんに育てられた。
若い頃は、いつもまわりを馬鹿にしていて、悪態をついては喧嘩をふっかけ、腕にものをいわせていた。少しでも文句を言う奴は、暴力で黙らせ、奪う。人々はそんなダビに怯えるようになり、とうとう誰からも話しかけられなくなった。
目が合うと、殴られるんじゃないかと、すぐ反らされる。
最初は王様になったようで気分が良かった。しかし、成長するにつれ、孤独になってしまったことを理解すると、後悔した。


口が悪い暴力が悪いと反省し、大人しくなったが、後の祭りだ。あとはどうやって信頼を得ればいいのか、わからない。謝っても済む問題ではないくらい、一生治らない怪我をおった人もいる。
力が強いから、害獣駆除と開墾作業の手伝いはよく頼まれた。依頼と報酬、必要最低限の会話。それが今のダビの人付き合いだった。


だから、小さなピコタンに呼び止められた時は、不思議な気持ちになった。


なぜ、今までしゃべらなかったのか?
なぜ、姉の危機を知っていたのか?
なぜ、俺に頼んだのか?


つらつらと考えていると、奥から婆さんのうめき声が聞こえた。
体を起こして水を飲ませる。
それから湯を沸かし、塩漬け肉と豆を放り込んで煮た。

婆さんはほとんど寝たきりになって、あんなに朝から晩まで毒づいてたのに今は声が出ない。

罰が当たったんだろうよ。
誰かが遠くでそんな風に言ってるのが聞こえた。
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