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変化について
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就職活動をする学年になっても、俺はダラダラとすごしていた。
まわりがリクルートスーツであちこちの面接を受けているなか、バイトでもいいから出版社で働けないかとぼんやり考えていた。
しかし、アルバイト如きでも、俺は落とされてた。大学の成績は悪くなかったが。
中堅の会社でダメもとで筆記試験を受けた帰りのことだった。
「大沢さん」と、しんちゃんに呼ばれていた男にばったり会った。
最初、お互い「見たことあるけど誰だっけ?」という顔をしながら見つめ合っていた。大沢さんがひらめいて「朝倉先生と一緒にいた・・・」と言ったが、それでも俺はすぐにわからなかった。
「大学生だったんだ。」と言われた。
「はい」と姿勢を正しくする。
「朝倉先生とはよく会ったりするの?」と聞かれた。
「いえ、お店で少しお話しするだけで、苗字も知らなくて」
「じゃあ先生のことは知らなかったんだ。」
「はい」
「・・・」
大沢さんは困った顔をしていた。話の流れで、しんちゃんはお偉い先生っぽい、ってことだけわかった。
「あの、もう行きます」
「あ、うん。引き止めてごめんね。」
もしかして出版界で「朝倉先生」を知らないのは、ダメだろうか。だけど、俺にとって、しんちゃんは「先生」じゃなくて、しんちゃんだった。
とりあえず、大沢さんに会ったという話だけしようと、週末に新宿に行った。
店は恐ろしく混んでいて、人が外まであふれている。看板が掲げられ、以前はほとんどいなかった女性客、見たことのない店子、なんだか知らない店のようだ。ママはいなかった。
どうしようかと周りをうろうろしていると、店で時々見かけていた二人組が俺に気づいて話しかけてきた。
「入った?」
「いや。なんか別の店みたいだし」と俺は言った。
「そうだよねえ。もう行く気がしな~い。」
「もしかしてオーナーが代わったのか」と聞くと「そうかもしれない。」と二人は言った。
「常連はみんなどっか行ったみたいよ。」
新しい店に行ってみるんだけど一緒にどう?と誘われて、ついて行った。そこはガラガラだったが、話をするにはちょうど良かった。
「あそこ隠れ家っぽいとこが良かったのになあ~。」と一人が言った。
「客層もさあ良かったよねえ。」
「いつから、あんな感じに?」
「ん~、二、三ヶ月くらい前だと思う。」
ちょうどケイトでごたごたしていた頃だった。
「そう言えば、何人かの常連さんは三丁目の方に行ってるって言ってたよ。」
そうか。なら、まだ会えるチャンスがあるかも。
でも、もしかしたら、しんちゃんにもう会えないかもしれないかと思うと、ものすごく悲しくなった。
「誰かお目当ていたの?きっとまた会えるよ、そんな顔しないの~」と、ガッカリしている俺を、二人はよしよしと慰めてくれた。
まわりがリクルートスーツであちこちの面接を受けているなか、バイトでもいいから出版社で働けないかとぼんやり考えていた。
しかし、アルバイト如きでも、俺は落とされてた。大学の成績は悪くなかったが。
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最初、お互い「見たことあるけど誰だっけ?」という顔をしながら見つめ合っていた。大沢さんがひらめいて「朝倉先生と一緒にいた・・・」と言ったが、それでも俺はすぐにわからなかった。
「大学生だったんだ。」と言われた。
「はい」と姿勢を正しくする。
「朝倉先生とはよく会ったりするの?」と聞かれた。
「いえ、お店で少しお話しするだけで、苗字も知らなくて」
「じゃあ先生のことは知らなかったんだ。」
「はい」
「・・・」
大沢さんは困った顔をしていた。話の流れで、しんちゃんはお偉い先生っぽい、ってことだけわかった。
「あの、もう行きます」
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もしかして出版界で「朝倉先生」を知らないのは、ダメだろうか。だけど、俺にとって、しんちゃんは「先生」じゃなくて、しんちゃんだった。
とりあえず、大沢さんに会ったという話だけしようと、週末に新宿に行った。
店は恐ろしく混んでいて、人が外まであふれている。看板が掲げられ、以前はほとんどいなかった女性客、見たことのない店子、なんだか知らない店のようだ。ママはいなかった。
どうしようかと周りをうろうろしていると、店で時々見かけていた二人組が俺に気づいて話しかけてきた。
「入った?」
「いや。なんか別の店みたいだし」と俺は言った。
「そうだよねえ。もう行く気がしな~い。」
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「そう言えば、何人かの常連さんは三丁目の方に行ってるって言ってたよ。」
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