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デートについて 2
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動物園のあとは、少し早めの夕飯でカジュアルフレンチに連れていった。
妙齢のマダムが支配人のこの店は、季節の生花が飾られた落ち着いた雰囲気だ。
昼は奥様方でいっぱいだが、夜はそうでもない。一人客も多く、老紳士が本を読みながらワインとつまみでのんびりしているのもよく見かける。
大学時代の女友達がデートに使えるよ!と教えてくれた店だが、のちに俺の母親もよく来てたと聞き、肝を冷やした。
この時期はチキンソテーのベリーソースが悶絶するほど旨い。
「・・・すごい。えっ、すごい。・・・美味しい!このソース、使ってるのベリーだけじゃないよね?すっごく濃厚。」
目を丸くして驚く塚本さんを見て、してやったりみたいな気持ちになり、ニヤニヤしてしまう。
「これは塚本さん絶対に好きだろうと思ったんですよ」
「濃厚?うん。あと、前に食べたトマトスパゲッティもよかったよね。」
「また一緒に食べに行きましょう」
「う、今度は汚れが目立たない服にするね・・・」
そうだったと二人で笑った。
ソースの残りもパンにつけて堪能し、食後のコーヒーが出されると、塚本さんがおもむろに何か包みを取り出した。
「あのね、今日は誘ってくれて、ありがとう。動物園は久しぶりで楽しかったし、このお店もとても素敵で美味しくて、感動した・・・」
「よかったです。喜んでもらえて」
「これ、私が焼いたんだけど、チョコパウンドケーキ。お礼、こんなのしか思い浮かばなくて・・・」
「えっ!」
デートに誘って、お礼くれるの?マジか・・・。塚本さん可愛すぎる・・・。
「めっちゃ、嬉しいっす・・・」
なんか早瀬君みたいなしゃべり方になった。俺はたぶん今、顔がだらしないかも・・・。
きれいにラッピングされたそれにはカードが付いていた。
『いつもありがとう。大好きです。』
読んでからバッと塚本さんを見ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。
まさかの、まさか?
「俺も塚本さんが大好きです。」
「そ、そうじゃなくて!こ、こ、こんな、おばさんが、な、なんだって引いてくれてもいいんだけど、ぶ、不細工の、か、勘違いやろうが!って、っ、ほんとっ、申し訳なくて、」
「いや、かわいいです。ってか塚本さん声がおっき」
ギャルソンと目が合ってしまった。サッと反らされる。
ここで?もっと静かなところで・・・いや、彼女に恥をかかせるわけにはいかん。
「塚本とう子さん」
「あ、えっ、ごめんなさい!」
「俺の彼女になってくださぃ・・・」
語尾、ちっさ、あ、好きですって、もっかい言うべきだったか?
なんだ、これ。俺らは高校生か?
彼女は目を白黒させて
「えっ、ドッキリ?」
と言って周りを見渡した。
その言葉にちょっと冷静になった俺は、ぷっと笑って、彼女の手を握る。なんで怯えた顔?
後ろでギャルソン二人が小さく拍手している。
本当は、ほんの少し、迷ってた。
恋心は確かに感じてる。でも時々、可哀想に思っているから、引っ張られているのかとも。
ずっとそこを思考が行ったり来たりしてた。
だけど、
「俺んちで、一緒に食べましょうよ、ケーキ」
告白の返事すら待たずに、誘った。
妙齢のマダムが支配人のこの店は、季節の生花が飾られた落ち着いた雰囲気だ。
昼は奥様方でいっぱいだが、夜はそうでもない。一人客も多く、老紳士が本を読みながらワインとつまみでのんびりしているのもよく見かける。
大学時代の女友達がデートに使えるよ!と教えてくれた店だが、のちに俺の母親もよく来てたと聞き、肝を冷やした。
この時期はチキンソテーのベリーソースが悶絶するほど旨い。
「・・・すごい。えっ、すごい。・・・美味しい!このソース、使ってるのベリーだけじゃないよね?すっごく濃厚。」
目を丸くして驚く塚本さんを見て、してやったりみたいな気持ちになり、ニヤニヤしてしまう。
「これは塚本さん絶対に好きだろうと思ったんですよ」
「濃厚?うん。あと、前に食べたトマトスパゲッティもよかったよね。」
「また一緒に食べに行きましょう」
「う、今度は汚れが目立たない服にするね・・・」
そうだったと二人で笑った。
ソースの残りもパンにつけて堪能し、食後のコーヒーが出されると、塚本さんがおもむろに何か包みを取り出した。
「あのね、今日は誘ってくれて、ありがとう。動物園は久しぶりで楽しかったし、このお店もとても素敵で美味しくて、感動した・・・」
「よかったです。喜んでもらえて」
「これ、私が焼いたんだけど、チョコパウンドケーキ。お礼、こんなのしか思い浮かばなくて・・・」
「えっ!」
デートに誘って、お礼くれるの?マジか・・・。塚本さん可愛すぎる・・・。
「めっちゃ、嬉しいっす・・・」
なんか早瀬君みたいなしゃべり方になった。俺はたぶん今、顔がだらしないかも・・・。
きれいにラッピングされたそれにはカードが付いていた。
『いつもありがとう。大好きです。』
読んでからバッと塚本さんを見ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。
まさかの、まさか?
「俺も塚本さんが大好きです。」
「そ、そうじゃなくて!こ、こ、こんな、おばさんが、な、なんだって引いてくれてもいいんだけど、ぶ、不細工の、か、勘違いやろうが!って、っ、ほんとっ、申し訳なくて、」
「いや、かわいいです。ってか塚本さん声がおっき」
ギャルソンと目が合ってしまった。サッと反らされる。
ここで?もっと静かなところで・・・いや、彼女に恥をかかせるわけにはいかん。
「塚本とう子さん」
「あ、えっ、ごめんなさい!」
「俺の彼女になってくださぃ・・・」
語尾、ちっさ、あ、好きですって、もっかい言うべきだったか?
なんだ、これ。俺らは高校生か?
彼女は目を白黒させて
「えっ、ドッキリ?」
と言って周りを見渡した。
その言葉にちょっと冷静になった俺は、ぷっと笑って、彼女の手を握る。なんで怯えた顔?
後ろでギャルソン二人が小さく拍手している。
本当は、ほんの少し、迷ってた。
恋心は確かに感じてる。でも時々、可哀想に思っているから、引っ張られているのかとも。
ずっとそこを思考が行ったり来たりしてた。
だけど、
「俺んちで、一緒に食べましょうよ、ケーキ」
告白の返事すら待たずに、誘った。
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