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その301.ギュゲスの指輪に試される
私が小学校の頃の話。
クラスの男の子がイタズラをやり過ぎて、先生に怒られていました。
先生は問いかけます。
「○○くん、なんで怒られたか、分かる?」
「先生に見つかったからです!」
「違うでしょ! 悪いことをしてたから、でしょ? 見つかったから怒られる、だからダメ、って考え方だとね、誰にも見つからなければ、悪いことをしてもいい、ってことになっちゃうでしょ? 自分で、これは良いこと、これは悪いこと、って考えて決めることが大事なの!」
口が滑ったせいで、余計に怒られていたようです。
「見つからなければ、悪いことをしてもいい」というわけではなく、人が見ていなくても、自分で善悪の判断をして「悪」の行動はしない、と選択することが大事……と説いた先生の言葉は、大人になった今でも妙に記憶に残っています。
この先生は、別の機会には「目に見えない監視カメラが、みんなを見ています」という言い方をしていました。
ただ、人間というのは弱い生き物で、「誰も見てないから、いいよね……?」と、コソコソと小さな悪事を働きかねません。
「ポイ捨て禁止」と看板が立っている場所でゴミを放置したり、歩行者用信号が「赤」なのにダッシュで横断歩道を渡ったり。
古代ギリシア、哲学者プラトンの著作『国家』の中で、「ギュゲスの指輪」という話が出てきます。
ギュゲスという羊飼いがいた。
ある日、洞窟の中で不思議な指輪を見つける。
その指輪を身につけると、周囲から姿が見えなくなるという効果があった。
この効果に気づいたギュゲスは、王様の宮殿に入り、王妃に近づいてエッチした挙げ句、姿を現して王妃を唆し、ふたりで密謀して王を殺害。
その王位を奪ったのだった。
プラトンの兄・グラウコンは主張します。
人間は、誰にも知られずに不正を行うことができる場合、理性ある者もギュゲスと同じ行動をするようになるのではないか。
人間が<正義>の行動を行うのは、それが自分の<評価>に繋がり、<利益>になるからだ。
指輪を使えば、<不正>をはたらいても、誰にも見つからず、個人的<評価>を損なうこともなく、物理的に<利益>を得られる。
<不正>をする方が<正義>よりもずっと得をする環境で、何ひとつ悪事をする気にならない鋼鉄の意志の持ち主なら、それは大馬鹿者でしょう。
ただ、その後、グラウコンはこう説いています。
<利益>を得たとしても、<欲望>に支配され、動かされたのでは、真の意味で幸せになれないのだ。
<不正>に身を委ねるのは、状況がどうあろうと、自分がみじめになる、と。
この「ギュゲスの指輪」問題は、道徳や倫理を考えるのに適した思考実験の題材です。
H・G・ウェルズの『透明人間』や、J・R・R・トールキンの『指輪物語』などにも影響を与えたとも考察されています。
もしも、あなたが「ギュゲスの指輪」を手に入れ、透明になる能力を得たとしたら。
他人の視線や、法律など、まったく気にしなくても良い環境に置かれて……どこまで<正義>を保っていられるでしょうか。
クラスの男の子がイタズラをやり過ぎて、先生に怒られていました。
先生は問いかけます。
「○○くん、なんで怒られたか、分かる?」
「先生に見つかったからです!」
「違うでしょ! 悪いことをしてたから、でしょ? 見つかったから怒られる、だからダメ、って考え方だとね、誰にも見つからなければ、悪いことをしてもいい、ってことになっちゃうでしょ? 自分で、これは良いこと、これは悪いこと、って考えて決めることが大事なの!」
口が滑ったせいで、余計に怒られていたようです。
「見つからなければ、悪いことをしてもいい」というわけではなく、人が見ていなくても、自分で善悪の判断をして「悪」の行動はしない、と選択することが大事……と説いた先生の言葉は、大人になった今でも妙に記憶に残っています。
この先生は、別の機会には「目に見えない監視カメラが、みんなを見ています」という言い方をしていました。
ただ、人間というのは弱い生き物で、「誰も見てないから、いいよね……?」と、コソコソと小さな悪事を働きかねません。
「ポイ捨て禁止」と看板が立っている場所でゴミを放置したり、歩行者用信号が「赤」なのにダッシュで横断歩道を渡ったり。
古代ギリシア、哲学者プラトンの著作『国家』の中で、「ギュゲスの指輪」という話が出てきます。
ギュゲスという羊飼いがいた。
ある日、洞窟の中で不思議な指輪を見つける。
その指輪を身につけると、周囲から姿が見えなくなるという効果があった。
この効果に気づいたギュゲスは、王様の宮殿に入り、王妃に近づいてエッチした挙げ句、姿を現して王妃を唆し、ふたりで密謀して王を殺害。
その王位を奪ったのだった。
プラトンの兄・グラウコンは主張します。
人間は、誰にも知られずに不正を行うことができる場合、理性ある者もギュゲスと同じ行動をするようになるのではないか。
人間が<正義>の行動を行うのは、それが自分の<評価>に繋がり、<利益>になるからだ。
指輪を使えば、<不正>をはたらいても、誰にも見つからず、個人的<評価>を損なうこともなく、物理的に<利益>を得られる。
<不正>をする方が<正義>よりもずっと得をする環境で、何ひとつ悪事をする気にならない鋼鉄の意志の持ち主なら、それは大馬鹿者でしょう。
ただ、その後、グラウコンはこう説いています。
<利益>を得たとしても、<欲望>に支配され、動かされたのでは、真の意味で幸せになれないのだ。
<不正>に身を委ねるのは、状況がどうあろうと、自分がみじめになる、と。
この「ギュゲスの指輪」問題は、道徳や倫理を考えるのに適した思考実験の題材です。
H・G・ウェルズの『透明人間』や、J・R・R・トールキンの『指輪物語』などにも影響を与えたとも考察されています。
もしも、あなたが「ギュゲスの指輪」を手に入れ、透明になる能力を得たとしたら。
他人の視線や、法律など、まったく気にしなくても良い環境に置かれて……どこまで<正義>を保っていられるでしょうか。
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