不動さんと物件めぐり

雲条翔

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2軒目 ハイテクハウスの罠!

7.ハイテクハウスの罠

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 ◆  ◆  ◆

 駆けつけた不動さんが、非常用の緊急解除キーで玄関を開け、外から光が差し込んできた時、俺は涙目になっていた。

「真っ暗だし、デバイスさんは答えてくれないし……水は止まらないし、みんな壊れちゃったみたいです……」

「そんな簡単に壊れる設計ではないはずですが……開発者に確認します」

 不動さんがスマホでどこかに連絡している。

 冷静になった俺が、スマホの照明でシャワー室の方を見ると、まだ水音はするが、床まで漏れていなかった。

「私だけど……この状況で……うん……そうなの……はっ? なに? そんな機能……確かに、冗談で言ったけど……」

 親しい友人と話しているかのような、フランクな口調の不動さん。
 さっき、開発者に確認すると言っていたが、電話の相手は大学時代の友人・常呂川美月なのかもしれない。

「わかった……やってみる」

 電話を切った不動さんは、「解除コード、エー・シックス・ゼロ・ファイブ・ワン。オールリセット」と呟いた。

 突然、部屋の照明が戻り、明るさが戻る。

「うわっ、ついた! よかった、故障したかと思って焦った! 今の電話の相手、開発者って言ってましたけど」

「ええ、開発者が私の元カノ……あ! いえ! もと……か……もとかわさん!」

 不動さん、急に顔を真っ赤にしたと思ったら、わたわたと慌てて、何か思い出したかのように「モトカワさん!」と大きな声を出したので、びっくりしてしまった。

「モトカワさんって言うんですか? これを作ったのが?」

「そうなんですよ!」

「さっき調べたら、モトカワさんじゃなくて、常呂川美月って人でしたけど」

「知ってたんですか、美月のこと」

「デバイスさんと話しているうちに、たまたま。で、モトカワさんって?」

「モトカワさんの話は置いておくとして!」

 自分で言い出したくせに。

「木芽さん……とんでもないことをやってくれましたね。メイドのココロさん、起動したんでしょう!? 見たんですね、アレを!」

 ちょ、ちょっと不動さん、お怒りモードだよ!

「その、まあ……はい」

「完全に騙されたんですよ……。CGのキャラデザを考えているから、イメージを決めるために、このメイド服着てくれない?とか言われて。バイト代も出すからって。写真をパシャパシャ撮るからモデル気分で調子に乗っていたら! いつの間にか立体スキャンカメラで全身の三次元データを取られて! あれはセクハラ! あーもう!」

 なんだか今日の不動さんは情緒不安定だな。

「でね、私、言ったんですよ。もしもこのメイドさんのCGに対して、いやらしいことをする人がいたら、天罰を与えてくれ、って」

「て、天罰?」

「例えば……真っ暗闇の中、シャワー室が開かないけど、シャワーは流れ続けて、足下まで水が漏れてくる。そんな怖さを、立体音響でリアルに再現して、驚かせるドッキリを仕掛けるとか、ねぇ……」

「り、立体音響……ニセモノの水音……」

 俺の額に、冷や汗が伝う。

 この時の不動さん、笑顔ではあるが、必死に感情を押し殺しているような「圧」が逆に怖い。すっごく怖い。
 怒り爆発、一歩手前、みたいな。

「木芽さぁーん。確認ですけどぉ……メイドのココロさんに、何か、しましたかぁ!?」

「あ、その、えっと……」

 この空気は、ゼッタイに「スカートの中を覗こうとしました」とは言えない空気だ。


 ◆  ◆  ◆


 怒っている不動さんの空気に耐えられなくなった俺は、タダのハイテクハウス宿泊から逃げ出し、その日はネットカフェのナイトパックを利用した。


 <2軒目・完>
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