TSしてないのにTSしたと言われる男の受難

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〈高2 :1学期〉

4.病院で検査を受けた

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 自室にある椅子に座り、机の上にあるパソコンを眺めた。結構勇気がいるかも。学校ぐるみの冗談とかそんな訳の分からない可能性を少しでも信じたいとか馬鹿げたことをまだ考えていた。
 すぅ、と息をすって吐いてからパソコンでTS病について調べ出した。検索結果は以下の通りだった。

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〈TS病〉
・ここ10年程で世界各地で起きている病気である。
・100万人に1人の割合で罹患するといわれてる。
・未だ原因不明であり、治療方法は確立されていない。
・現在のところ、罹患者は性別が変化した以外は健康的な状態である。

---------------------------------------------------------------

「な、なるほど...」

 つい、独り言を呟いてしまった。体からヘナヘナと力が抜けて椅子に寄りかかった。
 天井を見上げたが何も思いつかない。やっぱり、冗談じゃなかったんだ。TS病って...でも待てよ。記憶に変化が起きた人はいないみたいだし、俺は自分がずっと男だったと認識してる。
 周囲との人間関係も記憶と少し違う、というより、一人の野郎とは大いに違うみたいだし、流石に可笑しくないか。

 身体の変化に戸惑った脳が勝手に生まれつき男であったとかストーリーを作り出したのか?にしては、詳細まで作り込みすぎな記憶である。俺の頭がそんなに高性能なのかというと、可能性は低いだろ。俺のAVの趣味まで作り込む必要あった??

 ついでにお気に入りのAVを検索してあるかどうか確認する。うん、ある。女子が見そうにないハード系もバッチリある。偏見なのか?女子ももしかしてこういうのを見るのか??

 TS病から脱線してしまったが、やっぱり分からないので、病院に行くべきだろうか。でも何て??周囲からTS病だと言われてるけど自覚がないとか?男から女に変わってたらそりゃ戸惑うけど、男から男に変わった(?)なら別にいいのか??

「さっぱり分からん~~」

 とりあえず、明日は学校を休んで病院へ行ってみることにした。

***

 病院に着いたはいいが、何科に行けばいいのだろうか。内科?外科?精神科?
 インフォメーションセンター近くに居た看護師に軽く事情を言うと、性別を確認できるようなものがあるかと尋ねられ健康保険証を見せてみた。健康保険証の性別が女になってることにその時に気づいて頭がクラクラした。
 少々お待ち下さい、と言われ、戻ってきたと思ったら色んな科にたらい回しにされた。

 いつから症状があったのかなど様々な質問をされたが答えられることがほぼほぼない。だって記憶にないし。記憶はあるけど記憶にないってなんだこれ、どっかの政治家みたいなこと言ってる。
 今のところ健康体らしいが、未だ原因不明の病なので定期的な検査をする必要があると言われた。なんというか、痛い出費である。今日受けたもの以外に他の検査も勧められたが一通り受けたように感じたのでとりあえず終わりにした。

 最後に行った精神科では、〈鬱のような傾向は今のところ見られないが記憶との相違がある現状に戸惑いが大きいようなのでカウンセリングなどを受けるように〉と勧められた。精神科に通うのは少し抵抗があるので、近くでカウンセリング受けられるところを探さなきゃ行けないな。

 何というか何一つ解決してないのに、専門家の元で検査を受けたことで少し気持ちが楽になった気がする。今のところ健康体だって言われたし。

 家に帰ってベットでゴロゴロしてたら親から連絡がきた。何度も連絡してくれてたらしい。気づかなかった。俺のことについて担任から連絡がきてたらしい。仕事が早いな担任。
 病院で検査を受けたことをいうと、ホッとしていたが、一度家に帰ると言われた。もう向かってるらしい。一人暮らしが楽だったが、何というか有難かった。思っていた以上に現状が不安だったのかもしれない。


***

 昨日は学校を休んだので今日は学校へと行くことにした。
 そういえば今日、朝にスマホを見たらSNSに通知がやたらときてた。特に桐崎。お前どうしたんだ。100件もきてたのでブロックしようかなと一瞬思ったが、心配してくれたようだったので適当にスタンプを押しておいた。

 担任に病院行くから休むと昨日連絡してたので、クラスの連中からも俺を心配する連絡がきてた。何というか1日休んだだけなのに申し訳ない気分になったが心がホワッと温かくなった。心配してくれるのは有り難い話だ。

 家から出ると桐崎が家の前で待ってた。嘘だろ、いつから待ってたんだ。

「はよ桐崎。朝からどうした?」
「おはよう江本。ん~あのさ、昨日休んでたから心配でさ」
「そっか、なんか悪いな。検査受けただけなんだけど」
「...TS病の?」
「そうそれ。何も分からんかったけど。とりあえず健康体だって」
「そっか」

 少し安心したように息を吐いた桐崎を見て、俺が思っていた以上に桐崎が俺のことを心配していたのに気づいた。

「あのさあ、江本」
「なんだ?」
「俺はさ、お前が好きだよ。性別云々じゃなくて江本が好きだからさ」

 はっきりとこうやって人に好きだと言われたことがないのでめちゃくちゃ戸惑った。SNSで告られたことはある、女子に。
 いや、桐崎は俺のこと恋人とか言ってたぐらいだしそりゃそうなんだろうけど。言葉にされると別というか。

「なんとなく江本との心の距離っていうのかな?離れた気がするんだけど、俺はさずっと恋人でいたいし」

 スルッと手を繋がれて恋人繋ぎされた。

「前に俺の家に来たときみたいなこと、俺はしたいよ。今の江本とも」

 前の江本とはしてたのかと思うと顔が赤くなっているのが自分でも分かる。そういえば開発うんたら言ってたっけ。

「ん~~、やっぱり反応が可愛すぎない?」
「うるせえボケカス」
「ふふ、めっちゃ口悪いね」
「ともかく手離せよ」
「お手手繋ぐと嬉しくなるね」
「何処の幼女してんだ高2男子」

 こいつマジで馬鹿力だな。全然手が離れないし。
 周囲からの目線は何のその。ルンルン気分なのか足取りがめちゃくちゃ軽かった。

 桐崎は軽めに聞こえるように意識したような感じでこう話し出した。

「TS病についてさ正直何にも分かってない状態じゃんか。調べたけど性別が変わること以外何にも分かんなかった。
 それでもさ、江本は江本だよ。性別が変わるって大きすぎることだと思うし、俺の想像以上に色んなことが変わると思う。
 俺も出来るだけ意識してないようにいつも通りに見せたかったけど、江本への行動が空回りしちゃったし。
 だからさ、意識してないフリはしないことにした」

 少し不安そうな顔をした後、抱きしめられた。

「身体の変化でさ心の変化もあるかもしれない。俺のことそういう目で見れなくなったのかもしれない。でも、俺は江本のこと世界で1番好きだし、また振り向かせてみせるから」
「...桐崎」
「また、俺のこと好きになって。というよりも前よりももっと好きにならせてみせる」

 とりあえずベタベタしよう作戦を行うつもり、と本人である俺にいう桐崎。ベタベタってなんだ。もうちょいマシな作戦名なかったのか。
 俺は俺だって言ってくれる桐崎に、俺がお前と恋人だった記憶も、なんなら俺の記憶では俺が女子だったことが一度もないと伝えたらどう思うんだろうか。

 何故か胸がどうしようもなく痛んだ。
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