小話まとめ(ファンタジー)

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2024

私のことが好きすぎる人間について

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 ミレーナ、と呼ばれている。茶色の髪と黒の目をもった、ミナという人間が自分の名前からそう付けた。
 太陽の光に反射すると煌めく金色の鱗、尖った黒い爪、海を映し込んだような瞳、広げると雄大な翼。
 ミナは毎日、「あ~~~美し、綺麗、最高、もはや芸術」と言いながら、私の鱗を磨いた。


 人間からすると、私はドラゴンという種らしい。


 ミナという人間は私の世話をするのが好きらしく、それはもう卵の時から甲斐甲斐しかった。
 ミナは卵が少し冷えただけで、「やばい!私のドラゴンちゃん!!」と叫びながら抱え込んだり、「なんて素晴らしいフォルム。金色に輝く美しさ。もはや完璧では??」と言いながら卵を撫でたり、「ドラゴンちゃん~ドラゴンちゃん~元気いっぱい育つんだぁ~♪」と下手くそな歌擬きを卵の周りで良く口ずさんでた。

 卵から孵化したとき、「ぎゅわ(ミナ)」と挨拶したら、滂沱の涙を流しながら「尊い...」と拝まれた。卵の殻は栄養になるので、本来なら全て食べるが、ミナはよく世話をやいてくれていたので、卵の殻の欠片を渡すと失神した。
 あまりの嬉しさと幸福感に耐えきれなかった、と後から言われた。
 渡した卵の殻は加工され、ミナの耳を彩る金色のピアスとなった。「これを付けてるだけで自己肯定感は爆上がり。幸福感が毎分毎秒更新される」とよく分からないことを言っていた。

 赤ん坊の頃、ミナは私が何をしていても可愛いらしく、「あ~~かわいい~~」が口癖だった。
 四つ足で歩いても転んでも寝転んでいても、ミナに噛みついてもよじ登っても、何をしても幸せそうだった。
 いつものようにミナに噛みついて、初めて少し血が出たときはびっくりして泣いた。
 他の人間が急いでやって来て、ミナに対して「ミレーナにダメなことはダメって言わなきゃ!ミレーナめっちゃ泣いてるじゃん!!」と怒っていた。
 それから噛みつこうとすると「ダメだよ...」と泣きながら言われるので、噛もうとするのは止めた。ミナはいつも、幸せっていう顔でデレデレしてるので、泣かれるとびっくりするからだ。


 ミレーナ、といつも優しい響きで呼ばれてる。


 今は大きくなって、ミレーナの一軒家と殆ど同じ大きさになり、翼も立派になって何処にでもいけるが、やっぱりミナの元へ帰ってくる。
 ミレーナと呼ばれ、世話をされるのが悪くないからかもしれない。
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