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2024
拝啓、ミラーネ様 ⑷
しおりを挟むあの子が産まれて5年。私は8歳になり、学校に通うようになったわ。
本当なら5歳には世間にお披露目されるはずだったのだけれど、両親がエリナに夢中だったから無くなった。
だから、同年代の子に初めて出会うのに少しドキドキしていた。それまで自宅学習だったから。
そこで、恋に落ちたの。アドラ・クラーク様に。ふふ、今まで秘密にしていてごめんなさいね。
クラーク様は今まで見たことがない程、綺麗だった。
両親も私も妹も茶髪に茶目、可愛らしい顔立ちの母に私が似て、中世的な顔立ちの父に妹が似た。
世間では所謂美形だと言われていたが、クラーク様は段違いであった。
輝くような金髪の御髪、森を思わせるような澄んだ緑の目、中世的なお顔立ちにスラっとした体型。
どれをとっても完璧であった。
この方こそ、神に愛された存在だと一目見て確信したわ。
神に愛された存在の横には、当然のようにもう一人の神に愛された存在が寄り添っていた。
ミラーネ・アンドリュース様。そう、あなたです。ミラーネ様。
輝く銀髪の御髪、晴れの日の青空を写し込んだような目、お人形のように可愛らしい顔立ちにスタイル。
この2人が、この国の次世代を率いる国王と王妃になられるお方なのことに心から感謝したの。
恋心もこれほど完璧なお二人の前では、叶わないと諦められた。
相思相愛でお互いを認め合っているお二人の前では。
15歳の頃に、エリナが聖女になり、クラーク様にお会いしなければ、こんなことにならなかったのに。
***
あの子は15歳まで自宅学習であった。
当たり前よね。両親があの子をどうやっても手放さなかったの。
本当は、あのまま籠の鳥として終わるはずだったわ、あの子はね。
それが、周囲にとっても私にとっても、もしかするとあの子にとっても、一番幸運なことだったのだと思うわ。
けれど、教会が聖女を探し出し、あの子を見つけてから状況が一変した。
そもそも、聖女だなんて眉唾物の存在であって、神託があっただなんて教会が騒いでいたけれど他人事であった。
なのに、あの子が選ばれてしまった。
人々の目に触れるようになってしまった。
よりにもよって、クラーク様とミラーネ様の目に触れた。
知っての通り、それからよ、最低最悪な事態が起きたのはね。
クラーク様はミラーネ様を忘れてしまった。
これは起こることが予想されていたわ。
けれど、ミラーネ様はクラーク様を忘れなかった。忘れなかったの。私と、同じように。
ミラーネ様は嘆き苦しみもがいてたわね。クラーク様を取り戻そうと、あらゆる手段を行使していた。
クラーク様とミラーネ様の思い出の品、思い出の場所、思い出の出来事、あらゆることをクラーク様に見せて伝えたと、お聞きしたときは、心の底から申し訳なくて涙が溢れたわ。
けれど、それでもクラーク様のお心が元に戻ることは無かった。元々、無かったものにされたのだから、戻るも戻らないもないことを私は知っていた。
ミラーネ様はみるみるとお痩せになったとき、有難いことにご友人としてお側に居させていただくこともあった私は、そのミラーネ様の姿を見てやっと決心したの。
私が、エリナを何とかしなければと。
カティーシル家の長女として生まれた責務を果たす時がきたと、そう思った。
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