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2025
欲しいものの手に入れ方⑤
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知らない部屋だったが、殿下としたら会話の流れからサフィール公爵家だと分かった。
少し眠ったおかげから頭が回るようになっていた。
この際、手段を選んでいる場合ではなかった。今すぐ行方を眩ませなければならない。
いきなり殿下に私を押しつけられて酷くご迷惑をおかけしたアリシア様に謝罪がしたいけれど、それよりも姿を眩ますのがあの方への最後の友情の証になるのではないだろうか。
急いで立ち上がってドアに向かおうとすると、ちょうどドアからアリシア様が入室してきて息が止まった。
「まあ、ミリナ。元気になったみたいでよかったわ」
「ア、アリシア様...この度は...この度は申し訳ございません...本当に申し訳ございません...このような、このような」
「ミリナ、どうしたの?落ち着いてちょうだい」
アリシア様が近寄ってこられて抱きしめられた。手が、体全体が途方もなく震えた。
「申し訳、申し訳ございません」
「大丈夫よ、いきなり殿下に連れてこられて驚いてしまったのね」
アリシア様はいつもと変わらないご様子だった。殿下はアリシア様も了承されていると仰っていたが、このご様子だと殿下が私に第二夫人にと提案したことを知らないのではないか。
希望が見えてきて、心が浮かび上がった。殿下がアリシア様に仰られる前に姿を消さなければならない。
「いえ、アリシア様。わたしの体調不良等と些事なことで、殿下にもサフィール公爵家にもご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。
もう体調が良くなりましたので、家に戻ります」
「ふふ、何を言っているのミリナ。これからはこの家で暮らすのに」
「お、仰られてる意味が...」
「殿下がお伝えになられてると思ったのだけど...貴女は殿下の第二夫人になって私達と暮らすのよ」
「ッッ...アリシア様...アリシア様は...」
「その様子だと私が了承してるって殿下のお言葉を信じてなかったみたいね。了承しているどころか大歓迎なのに」
「な、何故ですか...いえ、申し訳ありません。そのようなお言葉を口に出させてしまうなんて...今すぐに、今すぐにでも姿を眩ましますので...」
「うーん、可愛い私のミリナ」
殆ど恐慌状態の私の顔に顔を近づかれたアリシア様が触れるだけのキスをされた。
思考も体も硬直していると、「気づいていなかったのね」と髪を撫でられた。
「ミリナ、私は貴女を愛しているの」
アリシア様の言葉が理解できない。
「私ね、貴女のことが昔から好きだったわ。殿下もそう。でも、お互い身分やしがらみで貴女と結婚が出来なくてね。そこで考えたの」
アリシア様はとても嬉しそうに微笑んだ。
「殿下と私が結婚して、第二夫人としてミリナを迎えようって。ふふ、少し時間が早まったけど、ミリナが家に居てくれるなんてとても嬉しいわ」
ギュッとアリシア様に抱きしめられた。
「一緒に幸せになりましょうね?ミリナ」
---------------------------------------------------------------
*あとがき*
いつの間にかヤンデレチックになりました。
頑張れミリナ!!
物語の最初の方に、ミリナはあまりの事態に心を奮い立たせようと空回ってたので、あのようなテンションでした。
ちなみに、五男である殿下が公爵家に婿入りする流れ、母親の身分は低いが殿下がとても優秀なので公爵家としては両手を上げて歓迎してます。
ミリナが嫁ぐはずだったムーンラ子爵。ミリナの父親がギャンブルで多額の借金をし(ムーンラ子爵に意図的に嵌められた)、それをチャラにすべくムーンラ子爵に嫁がされる予定でした。
公爵家が借金を代わりに返済後、ミリナの父親にも隠れてムーンラ子爵にも報復をするまでがセット。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
少し眠ったおかげから頭が回るようになっていた。
この際、手段を選んでいる場合ではなかった。今すぐ行方を眩ませなければならない。
いきなり殿下に私を押しつけられて酷くご迷惑をおかけしたアリシア様に謝罪がしたいけれど、それよりも姿を眩ますのがあの方への最後の友情の証になるのではないだろうか。
急いで立ち上がってドアに向かおうとすると、ちょうどドアからアリシア様が入室してきて息が止まった。
「まあ、ミリナ。元気になったみたいでよかったわ」
「ア、アリシア様...この度は...この度は申し訳ございません...本当に申し訳ございません...このような、このような」
「ミリナ、どうしたの?落ち着いてちょうだい」
アリシア様が近寄ってこられて抱きしめられた。手が、体全体が途方もなく震えた。
「申し訳、申し訳ございません」
「大丈夫よ、いきなり殿下に連れてこられて驚いてしまったのね」
アリシア様はいつもと変わらないご様子だった。殿下はアリシア様も了承されていると仰っていたが、このご様子だと殿下が私に第二夫人にと提案したことを知らないのではないか。
希望が見えてきて、心が浮かび上がった。殿下がアリシア様に仰られる前に姿を消さなければならない。
「いえ、アリシア様。わたしの体調不良等と些事なことで、殿下にもサフィール公爵家にもご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。
もう体調が良くなりましたので、家に戻ります」
「ふふ、何を言っているのミリナ。これからはこの家で暮らすのに」
「お、仰られてる意味が...」
「殿下がお伝えになられてると思ったのだけど...貴女は殿下の第二夫人になって私達と暮らすのよ」
「ッッ...アリシア様...アリシア様は...」
「その様子だと私が了承してるって殿下のお言葉を信じてなかったみたいね。了承しているどころか大歓迎なのに」
「な、何故ですか...いえ、申し訳ありません。そのようなお言葉を口に出させてしまうなんて...今すぐに、今すぐにでも姿を眩ましますので...」
「うーん、可愛い私のミリナ」
殆ど恐慌状態の私の顔に顔を近づかれたアリシア様が触れるだけのキスをされた。
思考も体も硬直していると、「気づいていなかったのね」と髪を撫でられた。
「ミリナ、私は貴女を愛しているの」
アリシア様の言葉が理解できない。
「私ね、貴女のことが昔から好きだったわ。殿下もそう。でも、お互い身分やしがらみで貴女と結婚が出来なくてね。そこで考えたの」
アリシア様はとても嬉しそうに微笑んだ。
「殿下と私が結婚して、第二夫人としてミリナを迎えようって。ふふ、少し時間が早まったけど、ミリナが家に居てくれるなんてとても嬉しいわ」
ギュッとアリシア様に抱きしめられた。
「一緒に幸せになりましょうね?ミリナ」
---------------------------------------------------------------
*あとがき*
いつの間にかヤンデレチックになりました。
頑張れミリナ!!
物語の最初の方に、ミリナはあまりの事態に心を奮い立たせようと空回ってたので、あのようなテンションでした。
ちなみに、五男である殿下が公爵家に婿入りする流れ、母親の身分は低いが殿下がとても優秀なので公爵家としては両手を上げて歓迎してます。
ミリナが嫁ぐはずだったムーンラ子爵。ミリナの父親がギャンブルで多額の借金をし(ムーンラ子爵に意図的に嵌められた)、それをチャラにすべくムーンラ子爵に嫁がされる予定でした。
公爵家が借金を代わりに返済後、ミリナの父親にも隠れてムーンラ子爵にも報復をするまでがセット。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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