2 / 3
仮面の脱ぎ方 #
しおりを挟む「なんでこんな時も笑ってるの?」
ベットに横たわる僕に、僕の彼女はそう泣きそうな声で僕に尋ねた。視界は病のせいで霞み、彼女の姿はぼんやりとしか見えない。彼女の声が聞こえただけで上出来だった。
先程、彼女は僕に別れを切り出した。
僕がうんともすんとも言わないから彼女は泣きそうになっている。
「...ねえ、なんで笑ってるの?どうして?なんで?」
「なんで、悲しんでくれないの?」
「私はこんなに悲しくて仕方ないのに。なんで泣いてくれないの?どうして、どうして」
人に好かれたくて、顔に笑顔を象った。
人は笑ってる人が好き。はっきりとした理由は知らないけれど、側にいれば楽しそうだし面白そうだからかな。
仏頂面の人の横に居るよりはきっとそう。
「ねえ、何でも良いから喋ってよ」
「怒ってくれていい。罵ってくれてもいい。泣き喚いてもいい」
「お願い。お願い、もう一度だけでいいから」
「私のこと本当に好きでしょう?知ってる。分かってる」
僕の想いが伝わっているようで何よりだった。彼女はあの手この手を使って、僕を生きながらさせようとしている。
僕は彼女に伝えきれていないことが沢山あるし、これからも増える予定だった。
けれど、僕の身体が早くも限界を迎えたのだ。
最後に何を彼女に伝えるべきか、本当に迷っていた。
"好きだよ"
"愛してる"
"来世でも付き合って"
"僕のことを忘れて、幸せになって"
"僕のことを忘れないでほしい"
"笑って"
"泣いて"
彼女が泣いている声が聞こえる。少し前まで見えていた彼女のやつれた頬を撫でて、涙を拭いたかった。
どんな言葉を残したら、彼女の為になるだろうか。ずっとずっと、考えていた。
けれど、この時になってやっと彼女が望むことは違うらしいと気づいた。
最後ぐらい、僕に正直になれと全力で伝えてくれている。
病気になってから嘆き悲しむこともなく、にこにこ笑いながらも言葉が少なくなってしまった僕に対して。
本当に、彼女は僕をよく見てくれていたのだ。
「あいしてる」
掠れた声でやっと言えた。心の底からずっと思っていたこと。病気になってから言えなくなっていた言葉。
なんだか、言えたことに自分で感動したのか涙が溢れてきた。やっと言えた、やっと。
ずっと胸の内に溢れ出ていた言葉。
「私も愛してる。やっと正直になったね」
彼女の掠れた声が聞こえた。僕の頬に寄せられた彼女の手が愛おしかった。
この愛が彼女の人生を縛らず、豊かなものにしてくれるように願い、目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる