小話まとめ(恋愛)

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水曜日の男

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 今日、SNSで水曜日の男から別れ話を切り出された。

「は~あのクソ野郎~~~‼︎‼︎」

 家のリビングで胡座をかきながら、右手に持っていた缶ビールをダンッ‼︎と打ち付けた。

 缶ビールはまだあまり飲んでなかったので、打ち付けた衝撃で中身が少し溢れ、手が汚れて余計にイライラしてきた。

 白い天井を意味もなく睨む。目に映る電灯が眩しいと思ってると、何だか涙が出てきた。

「くやしい」と独りでに口から出てしまって、余計に涙が溢れてきた。腹が立って仕方ない。

 水曜日の男は不誠実なクソ野郎だった。別れて正解のクソ野郎だった。

 調子の良いように、「好き」「愛してる」を使いながら、水曜日にしか会えないクソ野郎。



 クソ野郎にとって、私は"水曜日の女"で、

 私にとってクソ野郎は"水曜日の男"だった。



「あのクソ野郎~~何曜日の女と上手くいったんだ~~くたばれ~~‼︎‼︎」

 叫ばずにはいられない。天井からドンッ!と音がした。あまりにも私が煩いので、上の階の住人が床を叩いたのだろう。安アパートの壁はあまりにも薄すぎる。

 あれもこれもそれもあのクソ野郎のせいだとアルコールのせいで回らなくなった頭でそう思った。床に転がってる缶ビールの殻を梱包して送りつけてやりたくなる。

 何曜日の女が本命になったのか知らないが、どうか今すぐにでもその女に愛想を尽かされてフラれてしまえと呪わずにはいられない。

「は~~」とため息が出た。こんなにボロクソに言えるようなあのクソ野郎のことがまだ好きな私もクソ野郎の仲間入りをしていた。

 何でこんなに好きなのか、本当に分からない。簡単に愛を囁く不誠実で浮気を曜日で管理しているようなクソ野郎。世に憚るクソ野郎。客観的に見てどう考えてもクソ野郎だったのに。

「...何で好きなの」

 そう呟いた声は、自分でも情けないぐらい震えた小さな声だった。

 どうしようもなく好きだった。

 顔立ちは男前な方なのに、子供みたいに可愛い顔で笑うところ。

 会話の時にはこちらの目をじっと見るところ。

 隣で歩くと、さり気なく手を繋いで歩調を合わせてくれるところ。

「好きだ」「愛してる」って言葉を臆面もなく伝えてくれるところ。

 クソ野郎といたときの記憶がポツポツと溢れ出してきた。こんな時に限って、良い時の記憶ばかり思い出した。

 手先が異様に冷たい気がした。缶ビールを握り締めていたせいかもしれない。

 缶ビールから手を離して、手をグーパーしてみた。やっぱり冷たい。

 クソ野郎の手がやけに恋しくなって、止まりかけていた涙がまた溢れ出してきた。

「脱水症状になったらクソ野郎のせい...」

 ポツリと呟いた自分の声は寂し気な響きだった。
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