カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~

后 陸

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水の中のグラジオラス 三の章

策束静巡 参 その3

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 鳴り珠は各属性に有るので、火属性の使い手が創ると火珠ひのたま、又は『かじゅ』と呼び、水属性だと水珠みなたま、又は『すいしゅ』と呼ばれる。
 呼び方はどちらでも良い。

 ちなみのちなみに、、、
 もっとレベルが高い術師になると、さらに高度な発展術式を展開し、鳴り珠をオートでエネルギー蓄積装置(又は場)に変える事が出来てしまう。

 その状態の鳴り珠を、『爾裸氣じらき』と言う。

 爾裸氣に発展させる事で、エネルギー循環がスムーズに行えて、それを元に投擲とうてき系の攻撃を連続して出せるようになる。

 聖の師である奈良絵姫ならえひめだともっとで、鳴り珠の四形態を同時に出し、任意に動かす事が出来る。
 もちろん、その横に爾裸氣も出せる。
 あぁ~爾裸氣。

 話しを戻して、、、。

 鈴木がビビった原因は、術式名が『錚槍』と言うだけあって、もの凄いスピードで標的を射抜くイメージがあるため。
 球体から出るのが、針だったり、矢だったり、それこそ槍だったり、、、。
 童子クラスの貴照がこの術式をすると、錚槍は弾丸に成る。
 つまりどれもが殺傷能力があり、もの凄いスピードで向かって来るって鈴木は思っている。

 だから、そんなんされたら死ぬやん! と思ってる。
 だから、聖にストップを掛けた。
 だから、つまり、ちょービビってる。

 「やから、ゆっくり出すってうてるやん」
 「ゆ、ゆっくりって、どんくらいゆっくりやねん、、、?」

 あきれる聖。

 「どんだけビビんねん。前世ビビン麺ちゃうか?」
 「せめて生き物で言うてぇや、、、」

 話しててもビビり特有の時間稼ぎが始まると思った聖は、勝手に錚槍を発動させた。
 水珠の表面から、長いとがったが伸びてくる。

 「うわっ?!」

 真っ直ぐに鈴木を狙う。
 それはまるでスローモーションのように、、、。
 本当に、スローモーション。
 ビビって眼を閉じたが、あれ? と思って眼を開けたらまだ尖った水が伸びてる最中だった。

 「な、うたやろ?」

 確かに、と鈴木感激。
 錚槍が、こんなにもゆっくり、、、いやいや、錚槍を自在に操っている。

 「!?」

 水珠はこれまた綺麗なまま。
 眼をじっくり凝らさないと回転してるのかどうかさえ解らないほどのクリア。
 なのに表面からは真っ直ぐ伸びる水の針、、、槍?

 「これ、、、二重構造??」
 術の美しさに、またもや鈴木感激。

 「そんなんええから。早うさっきみたいにせんと、ゆっくりでも刺さんでぇ」
 「お、おぉよ」

 慌てて右手を、、、?
 見ると、聖が不思議なポーズを取っていた。
 創った水珠を差し出す様に、両手を前に出している。
 ひとり“前にならえ”状態。
 何だ? と思う前に、聖がかす。

 「はよう」

 言われ、鈴木が右手を、払う。
 その動きに合わせて、水珠から出た槍状の水が動く。
 ほぼ90度。

 ――なるほど、、、

 前に出していた、右手も
 左手は、

 ――なるほどなるほど

 術を、解除された感覚は無い。
 右手も、押された、引っ張られたって感じじゃ無い。
 感覚に、近い。

 「鈴木満~~~」
 「名前呼ばれたと思ったら、フルネーム呼び捨てか!」
 「あんた、、、最高」

 鈴木本人は、気が付いていない。
 鈴木の放つ、術式効果の持つ意味を、、、。
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