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その2
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整備された道を急ぎ、一時間ちょっとでイースの町に到着した。
門の外にはニールゼン軍が待機していた。冒険者と合わせて百名は居る。
兵をまとめているニールゼン男爵に挨拶する。
「おおっ四十人以上で来てくれたのか、大した物だな。それにしてもお前ら以外はすごい装備だな」
あっ着替えるの忘れた。
まあ、いいか。
いつの間に用意したのかフラッグ小隊長はきちんと旗を掲げている。
ふむ、さすがだな。(俺がうっかりしてただけ)
「すぐ着替えは出来ますからね。うちは全軍馬なので先に行きましょうか」
ニールゼン男爵の配下は騎馬だが、それ以外の冒険者達は徒歩だ。また荷台車も引いているので進軍は遅いだろう。
「いや、船を用意した。サースまでは船のほうが早い。まずは全員でサースまで行こう」
移動すると船着き場には大きな船が止まっていた。緊急的に軍が収容したのだろう。急いで乗り込み出発した。
俺達は特等室に入れてもらった。昼過ぎなので昼食にする。
従士達には全員マジックバッグ容量3倍重量1/3倍を持たせてあるが、緊急用の保存食しか入れてないので、温かいシチューとパンに果実水を支給した。
余裕がある時は旨い物を食べさせてやりたい。
その分士気も上がるしな。
ウエスタンとオスマンとマルセイユは初めての大船に興奮していた。
「こんな大きな船なんだな。エル、サースまではどれくらいで着くんだ」
「止まらなければ5時間くらいだな、夕方にはサースに着くだろう。今日はそこで泊まるんじゃないか、夜間も進軍なんて無理だよな」
「だよな、そうするとサースの町の宿屋に泊まりか」
「そうなるな……そうだ!《湖のほとり》で白パンを回収しよう」
しばらく行けなかったからだいぶパンが溜まってるはずだ。
これからは先払いでお金を払っておいた方がいいな。
「そうね、ちょうどいいわね」
「ええ、私達はそこで泊まりましょうか」
「おっあの白パンの宿屋か! 楽しみだなオスマン」
「わーい! あれも大好き」
盛り上がっていると、ふと思い出した。
マルセイユ達の実家であるターン家の領地は、巨人の山のすぐ近くだ。
「マルセイユ、そう言えばターン領は大丈夫なのか」
「どうでしょうか……サイクロピス達が進軍したサウス男爵領は、巨人の山の北西なのです。ターン領は山の北東なので、大丈夫ではないかと思ってるのですが」
情報が無いので何とも言えないが、今の話なら大丈夫そうだ。
「そうか、無事だといいな」
「はい」
ニールゼン男爵達とも軽く打ち合わせをして、夕方、船はサースの町に着いた。
俺達は《湖のほとり》に泊まり、白パンなどの商品を回収した。新商品の分を割り増しして料金を支払い、前金を渡すと主人も女将さんも喜んでくれた。
全員一か所には泊まれないので、従士達にはお金を支給し他の宿に分散して泊った。
遊びに行った奴もいるだろうが、それもある程度自由にさせてやる。
ニールゼン軍の幹部以外と冒険者達は、テントを張って駐屯した。
普通はそうだよな。うちは甘すぎるかも、とも思うがまぁ、うちはうち、他所は他所だ。
やる事をキチンとやってくれれば、後は適度に遊んでてもいいのだ。(自分が一番遊んでいる)
美味しい食事を堪能して、翌朝軍隊が出発する。
徒歩に合わせるので進軍はゆっくりだ。
シースの町に近づくと多くの人が溢れていた。近くの町から避難してきた人が沢山いるようだ。
皆いっぱい荷物を抱えている。
幼い子を抱えた若い夫婦がいたので、ブルックから降りて聞いてみる。
「どこから来たんですか」
「スランの町からです、隣のサランの町が襲われているので逃げてきたんです」
「行く所はあるんですか」
「いえ、とりあえず逃げて来ただけなので、これからどうしようかと思ってるんです」
どうやら当てもなく逃げて来たようだ。持ち家や資産がある人はともかくとして、借家の人はまず逃げるのが生き残る秘訣だ。こういった人たちが大半なのだ。
「そうですか、もし困ったらエアシルの町へ来てください。生活には不自由させませんので」
地図と町の様子が書かれた紙を渡し、白いパンを4つあげた。
「すごいー! 白いパンだーおにいちゃんありがとー」
小さな女の子が喜ぶ。
「ありがとうございます」
まだしゃべれない幼子を抱えた若夫婦が頭を下げた。
「早く討伐しないと、どんどん困った人が増えるわね」
「ああそうだな。今はまだ、なんとかサランで押さえてるのかもしれないな」
サランの町は巨人の山の北西にあるサウス男爵領の本拠地で五千人規模の町だそうだ。
巨人の山から一番近い大きめの町で頑丈な町壁があるため、そこでなんとか食い止めているようだ。
歩けば4日、馬車なら2日、馬で飛ばせば1日半か。
「急いで向かいましょう。うちは先行して走ります」
ニールゼン男爵と相談する。
「そうだな、悪いがそうしてくれ……。いや、俺と重騎兵だけでも一緒に行こう、軍を分けるか。残りは後から追って来させる。ノルビス!」
「はっ」
「重騎兵隊とルミロ小隊で先行する。後は任せる、出来るだけ早く来てくれ」
「はい、お任せください」
「ホフマン、ゼノン、ルミロ、先行するぞ!」
「「はっ」」
ニールゼン男爵と重騎兵隊十名、ルミロ隊五名で先行する。
「エアシル軍出発!」
エアシル軍四十三騎が後に続いた。
門の外にはニールゼン軍が待機していた。冒険者と合わせて百名は居る。
兵をまとめているニールゼン男爵に挨拶する。
「おおっ四十人以上で来てくれたのか、大した物だな。それにしてもお前ら以外はすごい装備だな」
あっ着替えるの忘れた。
まあ、いいか。
いつの間に用意したのかフラッグ小隊長はきちんと旗を掲げている。
ふむ、さすがだな。(俺がうっかりしてただけ)
「すぐ着替えは出来ますからね。うちは全軍馬なので先に行きましょうか」
ニールゼン男爵の配下は騎馬だが、それ以外の冒険者達は徒歩だ。また荷台車も引いているので進軍は遅いだろう。
「いや、船を用意した。サースまでは船のほうが早い。まずは全員でサースまで行こう」
移動すると船着き場には大きな船が止まっていた。緊急的に軍が収容したのだろう。急いで乗り込み出発した。
俺達は特等室に入れてもらった。昼過ぎなので昼食にする。
従士達には全員マジックバッグ容量3倍重量1/3倍を持たせてあるが、緊急用の保存食しか入れてないので、温かいシチューとパンに果実水を支給した。
余裕がある時は旨い物を食べさせてやりたい。
その分士気も上がるしな。
ウエスタンとオスマンとマルセイユは初めての大船に興奮していた。
「こんな大きな船なんだな。エル、サースまではどれくらいで着くんだ」
「止まらなければ5時間くらいだな、夕方にはサースに着くだろう。今日はそこで泊まるんじゃないか、夜間も進軍なんて無理だよな」
「だよな、そうするとサースの町の宿屋に泊まりか」
「そうなるな……そうだ!《湖のほとり》で白パンを回収しよう」
しばらく行けなかったからだいぶパンが溜まってるはずだ。
これからは先払いでお金を払っておいた方がいいな。
「そうね、ちょうどいいわね」
「ええ、私達はそこで泊まりましょうか」
「おっあの白パンの宿屋か! 楽しみだなオスマン」
「わーい! あれも大好き」
盛り上がっていると、ふと思い出した。
マルセイユ達の実家であるターン家の領地は、巨人の山のすぐ近くだ。
「マルセイユ、そう言えばターン領は大丈夫なのか」
「どうでしょうか……サイクロピス達が進軍したサウス男爵領は、巨人の山の北西なのです。ターン領は山の北東なので、大丈夫ではないかと思ってるのですが」
情報が無いので何とも言えないが、今の話なら大丈夫そうだ。
「そうか、無事だといいな」
「はい」
ニールゼン男爵達とも軽く打ち合わせをして、夕方、船はサースの町に着いた。
俺達は《湖のほとり》に泊まり、白パンなどの商品を回収した。新商品の分を割り増しして料金を支払い、前金を渡すと主人も女将さんも喜んでくれた。
全員一か所には泊まれないので、従士達にはお金を支給し他の宿に分散して泊った。
遊びに行った奴もいるだろうが、それもある程度自由にさせてやる。
ニールゼン軍の幹部以外と冒険者達は、テントを張って駐屯した。
普通はそうだよな。うちは甘すぎるかも、とも思うがまぁ、うちはうち、他所は他所だ。
やる事をキチンとやってくれれば、後は適度に遊んでてもいいのだ。(自分が一番遊んでいる)
美味しい食事を堪能して、翌朝軍隊が出発する。
徒歩に合わせるので進軍はゆっくりだ。
シースの町に近づくと多くの人が溢れていた。近くの町から避難してきた人が沢山いるようだ。
皆いっぱい荷物を抱えている。
幼い子を抱えた若い夫婦がいたので、ブルックから降りて聞いてみる。
「どこから来たんですか」
「スランの町からです、隣のサランの町が襲われているので逃げてきたんです」
「行く所はあるんですか」
「いえ、とりあえず逃げて来ただけなので、これからどうしようかと思ってるんです」
どうやら当てもなく逃げて来たようだ。持ち家や資産がある人はともかくとして、借家の人はまず逃げるのが生き残る秘訣だ。こういった人たちが大半なのだ。
「そうですか、もし困ったらエアシルの町へ来てください。生活には不自由させませんので」
地図と町の様子が書かれた紙を渡し、白いパンを4つあげた。
「すごいー! 白いパンだーおにいちゃんありがとー」
小さな女の子が喜ぶ。
「ありがとうございます」
まだしゃべれない幼子を抱えた若夫婦が頭を下げた。
「早く討伐しないと、どんどん困った人が増えるわね」
「ああそうだな。今はまだ、なんとかサランで押さえてるのかもしれないな」
サランの町は巨人の山の北西にあるサウス男爵領の本拠地で五千人規模の町だそうだ。
巨人の山から一番近い大きめの町で頑丈な町壁があるため、そこでなんとか食い止めているようだ。
歩けば4日、馬車なら2日、馬で飛ばせば1日半か。
「急いで向かいましょう。うちは先行して走ります」
ニールゼン男爵と相談する。
「そうだな、悪いがそうしてくれ……。いや、俺と重騎兵だけでも一緒に行こう、軍を分けるか。残りは後から追って来させる。ノルビス!」
「はっ」
「重騎兵隊とルミロ小隊で先行する。後は任せる、出来るだけ早く来てくれ」
「はい、お任せください」
「ホフマン、ゼノン、ルミロ、先行するぞ!」
「「はっ」」
ニールゼン男爵と重騎兵隊十名、ルミロ隊五名で先行する。
「エアシル軍出発!」
エアシル軍四十三騎が後に続いた。
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