アイテムボックスだけで異世界生活

shinko

文字の大きさ
191 / 302

第百八話.金竜山の頂上で

しおりを挟む
 数日後。

 ようやく金竜山の頂上に到達した。

 魔石のエネルギー量も四割位まで減ってきている。

 物凄い高さの山だった。三十キロくらいは本当にあるようだ。


 銅竜山ほどではないが、頂上の一部に平地があり、かなりの広さがある。

 大きな湖もあるし緑もある。とても山の上とは思えないような楽園だ。

 金竜が数匹は飛んでいるようで、遠くにうにょうにょしたのが見える。

「あそこが金竜の里じゃないか」

「少し内側が平らになってるようね。緑もあるし、きっとそうね」

 頂上に到達した俺達は観光気分で金竜を眺めていた。


 するとその時、急にこっちに向かって飛んで来る大きな竜の姿が見えた。

 物凄い勢いでグングン近づいて来た!

「あっ金竜が向かって来た! 攻撃が来るわ!!」

 シルフィーが血相を変えて叫んだ。
 

 えっマジか!?


 ジャンと音がして皆に聖魔セットを着せた。

「アル!」

 アルフィーも危機を感じてすぐに補助をかける。

天使の翼エンジェルウイング! 天使の祝福エンジェルブレス!」

 アルフィーが光り輝き、背中に大きな白い翼が四枚生た。頭に天使の輪も浮かぶ。

 俺の頭にも輪が浮かぶ。

風の強化ウインドハイブースト! 浮 遊レビテーション! 飛行船が壊されちゃう! エル、早く回収して!」

 シルフィーが必死に叫ぶ!

天使の翼エンジェルウイング浮 遊レビテーション!」 

 オルフィーも白い翼が二枚生え、天使の輪が浮かんだ。空も飛べるようだ。

「わかった! アル頼む!」

「はい! 浮 遊レビテーション!」

 アルフィーが呪文を唱えたと同時に飛行船を回収した。アルフィーが俺を抱きかかえてその場に浮かんだ。


 その瞬間に、金竜がぐわっと目の前に躍り出た。


 でかい。


 五十メートルはあるぞ! 完全に敵意を持っているようだ。口から火がくすぶってるのが見える。

 どうやら俺達の事を知らないようだ。

 クソ! あまりにも気楽に来すぎたか。なんとか説明して敵じゃないことを理解してもらわなければ。

「待て! 俺…」

 次の瞬間!

 いきなり金竜が口を大きく開けて、勢いよく炎を噴出した。

 物凄い熱量の火炎が俺達を襲う!

――ブォオオオオオ!

 うおっ!?

 火炎が直撃する瞬間にアルフィーが俺を抱えて、何とかかわす。

 シルフィーとオルフィーもかわしている。

「こらっ! お前は誰だ! ゴーゴンに言いつけるぞ!」

 何とか止めて欲しいので必死に五十メートルはある金竜に向かって怒鳴った。

『ん? その名を呼び捨てにするとはいい度胸だ。ゴミの分際で許さんぞ!』

 すると、ますます怒りを露にし、金竜がさらに力を溜める。


 もう、なんだよ! どうすりゃいいんだ!

 さらに口を大きく開けてでかい火炎を吐きだした! 大きな炎が俺達を襲う!

――ブォオオオオオオオオ!

 
 くっ! 何とかかわした!


 うわっ!? あちゃちゃちゃちゃ!

 少しかすったか!

 くそぉお、こいつは! こうなったら少し目を覚まさせてやる! 

 ジャン。

 巨大な岩が竜の真上に現れた。

『ぬっ』

 しかし、勢い無く落下する巨大な岩を難なく避ける金竜。

 ゆっくりと大きな岩がそのまま落下していった。


 ちっ飛んでる上にスピードもないから当たらないか。

『小ざかしいなゴミが……』

 金竜の目が鋭くなり、さらに気が噴出するような怒りを発して、また大きな炎を吐いた!

――ブォオオオオオオオオ!

 うおぉ!

 何とか俺を抱えてかわすアルフィー。


 うーん、困ったぞ。このままでは攻撃する手段がない。バリスタを撃つにも足場が必要だ。

「アル! なんとか地上に降りれないか!」

「分かりました! やってみます!」

 アルフィーも俺の意図を感じたのか、地上に向かって勢いよく飛びだした。自由落下に加えてさらに加速して落ちていく。

 うわっ怖えーーー。


『ふん。逃がすか!』

 しかしすぐに金竜が追いついてきた。

 クソっ早すぎる!?

 この巨体でなんて速さだ!

『ちょこまかと動きおって、これでも食らえぇえ!』 

 空中でグルンと金竜が縦に一回転すると、巨大な尻尾が上から飛んできた。うわっ! なんだこれ!? 


 マジか!? 避けられん!

 なっ! 物凄い圧力だ! でかい。



 無理だ。クソっこんなっ!?


 
  マジか!?



 死ぬ! ヤバイ! 



 死ぬぞこれーーーーーー!!



 急に死が感じられた。


 景色がスローになった。


 ドクンっ    ドクンっ 


 心臓の音がゆっくりと聞こえた。




 そして意識がはっきりとした。



 アルフィーとの出会いから今までの思い出が頭に流れた。






 あっこれ、ヤバイやつだ。




 
 これが走馬灯か……。





 
 自然と涙が零れ落ちた。

 





 ああ、死んだな。







 アルフィーもそう思ったのだろう。





 
 俺をかばうようにギュッと強く抱きしめた。






 俺はアルフィーの顔を見た。






 アルフィーも俺の顔を見た。




 
 
 そして儚げに微笑んだ。






 吸い込まれるような美しい顔だった。





 俺は。




 何の。




 為に。




 ここに。





 居るんだ。






「うぉおおおおおおお! 死なせて溜まるかぁああああああああああああ!!」


 俺の想いとはうらはらに、目の前には大きな圧倒的な質量を持つ、無慈悲にも逃げられない金の壁が物凄い勢いで向かってきた。




――ドゴォオオオオーン!!




   金竜の巨大な尻尾にぶち当たった瞬間。




――ふ。

 


 金竜が消えた!?




 アルフィーの抱きしめる力がギュッと強くなり、しばらくしたあと緩くなった。

「あれっ!? 金竜が消えちゃいました!?」


 信じられないような顔で俺を見つめるアルフィー。

「大丈夫!? エル!」

「主様ーーー!!」

 シルフィー達も心配しながら慌てて降りてきて抱きついた。

 とりあえずゆっくり降りて、一緒に地上に降り立った。


 抱きかかえていたアルフィーが俺を地面に降ろしてこう言った。

「急に消えちゃいましたね、一体どうしたんでしょうか」

 不思議な顔をするアルフィー。

「ああ、実は収納した」

「ええっ!? 金竜をですか!?」

「そうなんだ。今はアイテムボックスの中だ」

「そうか! 凄いわねエル。あんな大きな金竜を、しかも生きてても収納できるのね」

 シルフィーが大げさに感心する。

「さすが主様ですの。やっぱり主様は強いんですの」

 オルフィーも嬉しそうに抱きついた。


 ふふふ。今回は本当に死ぬかと思ったぜ。

 少しおしっこが出てるかもしれない……念のためそれも回収しておこう。

「今回はもう……本当に駄目かと思いました」

 ようやくほっとしたのか、アルフィーもヘナヘナっとその場にへたり込んだ。

「そうだよな……俺もそう思った。でもアルの顔を見て何とかしようと思ったんだ」


「まさかいきなり攻撃してくるなんてね。それよりあの金竜はまだ生きてるの?」

「多分な。ただ、出すとまた面倒だから、ゴーゴン達の前で出してやるか」

「そうね、しっかりと王にこらしめてもらわないとね」

「そうですの。主様に歯向かうなんて、成敗してやるんですの」

 シルフィーとオルフィーが怒りを露にした。


「多分俺達の事を知らない若い竜なんだろうな。まあ、攻撃された事はしょうがないさ。こっちが竜の住処に来てるんだ。これが逆だったら俺達でも討伐しようとするだろ。そんで魔物が許してくれって言っても許さないだろ、同じ事だよ」

「そっか、それもそうね。金竜が悪いって訳じゃないわよね」

「ふふふ、そうですね。でもエルさんらしいですね。殺されかけたのに、そんな風に思えるなんて凄いです」

 アルフィーが感心すると、シルフィーが急にはっとして。

「ねえエル、封印てこれの事じゃないの? エルが昔、本当に金竜を封 印収納したのよ」

 閃いたように言いはった。

「そうか、アイテムボックスに回収したんだ……確かにそれは封印だな。ははは、と言う事はやっぱり以前の俺だったのか」

「そうですの! きっと主様が竜達を回収してたんですの」

 みんなも大きくうなずいた。

 なるほど、これで本当に謎が解けたな。

「ああ、でも観光気分だったのが、一瞬で死の恐怖に変わったな。いやいや油断大敵だ。他の竜も来ると嫌だからもう帰ろうか」

 飛行船を出してさっと乗り込み、見つからないように低空飛行で山を降りた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...