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その2

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 他の竜には見つからずに山頂から退避した。

 どっと体に疲労を感じた。

「疲れたな。風呂に入ろうか」

「はい」

「そうね。本当に死ぬかと思ったしね」

「そうですの。お風呂に入ってゆっくりするんですの。ところで今日は誰が操縦番ですの?」

「シル、オル、悪いが少し頼むな。アルとゆっくり入りたいんだ」

「うん、分かったわ」

「はいですの」

 俺がそう言うとシルフィーもオルフィーも何か感じたようで、特に文句を言わなかった。

 椅子を回収して立ちあがると、皆で前に寄って浴槽を出した。

 お湯を入れて二人で風呂に入る。 

「あーーー」

「ああ、いい気持ちですね」

 リラックスしているアルフィーを見る。

 不思議と愛おしい気持ちが、沸々と湧き上がってきた。

「アル」

 思わず抱きしめてキスする。


「んーー♡ ふふ。エルさん、愛してますよ」

「ああ、アル。さっきは死ぬかと思ったな」

「ええ、でもエルさんと一緒なら、それでもいいかって、思っちゃいました」

「そうだな。そんな顔してた……それを見て絶対死なせるもんか、って思ったんだ……アル、良かった。愛してるよアル」

「エルさん、私もです。ああ、もう離れたくない」

 しばらく二人で抱き合った。


 数日後。

 ようやく金竜山から降りてきた。

 降りるほうは上るより早い。まあ当たり前だ。

 だが横にも移動する分、そのまま下には降りれないのでそれなりに時間はかかる。

 しかし大した問題もなく、無事セントブルグに帰って来た。

 
 城の前に降り立ち、飛行船から降りる。

 四人が降りた後、いつものように飛行船を回収した。

 兵士が期待した様子で寄ってくる。

「エアシル男爵様、お帰りなさいませ。金竜はどうでしたか」

「ああ、バッチリだ。ファン騎士長を呼んでくれ」

「はい! 流石ですね! すぐに呼んできますのでお待ちください」

 兵士が嬉しそうに走って行った。


 すぐにファン騎士長も走ってきた。

「お帰りなさいませ、エアシル男爵。バッチリだと兵士は言っておりましたが、どうなんでしょうか」

 そう言いながらもうすでに顔が笑っている。


 その顔を見た瞬間に、なぜか無性に腹が立ってきた。

 なので急に下を向き、暗い顔をしてみた。

「実は、もう少しで死ぬところだった……」

「えっ? そんなに大変だったのですか」

 急にファン騎士長も神妙な顔になる。

「ああ、実はな、一度死んだ(気がした)」

「えっどういう事ですか!?」

 俺の言葉に驚くファン騎士長。

 続けて怒ったような口調で説明する。

「よく見てみろ! メンバーが減ってるだろう!(サラとシルフィーユが戻っただけ)」

 驚いた顔をしながら、慌てて俺達を確認するファン騎士長。

 しかし、ここには間違いなく四人居る。首をかしげながら何度も俺とメンバーの顔を慎重に確認する。

「すいません……エアシル男爵。トライアングルは四人でしたよね」

「ああ、そうだ。だが本当は五人目のメンバー、六人目のメンバーが居たんだよ」

「ええっ!? と言う事はもしかして……その二人を失ったのですか!?」

 愕然とするファン騎士長。

――ぶっ!

 我慢できずに噴出すシルフィー。

「もうエル、やめなさいよ。ファンさん、エルは遊んでるだけなのよ。ただ今回はそれくらい大変だったって事が言いたいのよ」

「そうなんですか。いや、それはもちろんそうですよ。あの金竜山に行って来たんです。決して簡単な事だとは誰一人思ってはおりません」

 ファン騎士長の言葉に少しだけ気分が晴れる。

「そうですか、分かればいいんです。では出しましょうか、金竜を」

「なんと、金竜を捕らえたのですか!?」

「ええ、ただ、ピンピンしてるので出すと直ちに暴れますけどいいですか。おそらく城はメチャクチャになる上に五十メートルはありますけど」

「いやいやいや、絶対にやめてください! では、魔石は無い、ということですね」

 少し困った顔をするファン。

 どうしようかな、別にあげてもいいけどそうすると金竜が二匹居た事になるな、うーん、いや。

「ははは、冗談ですよ。なんとか討伐しました。魔石はこれです」

 その場に金色の、四人分位ある五百キロの魔石を出した。

「なぁあああああああーーーー!!」

 驚くファン騎士長。

「凄いです! 実物はこんなに大きいのですね。いや、これは素晴らしい。流石エアシル男爵ですね。そうだ、陛下がお待ちです。さっそくご報告お願いします」

 魔石をさっと回収し、笑顔になったファン騎士長と一緒に城へ入った。

 いつものように豪華な扉が開かれて王座の中に入った。

「金竜討伐を果たしたSランク冒険者PT、トライアングル様のご入場!」

 ズラっと並んだ貴族達がにこやかな笑顔と共に拍手していた。

 悠々と歩いて陛下の前で跪く。

「エアシル男爵。この度はよくぞやってくれた。見事な活躍だ」

「はっ」

「では、魔石を見せてもらってもよいかの」

「はっもちろんでございます」

 と言いながらも金竜をこの場に出してやろうか。もしくは飛行船のトイレのマジックバッグを逆さにして出してやろうかとも一瞬だけ考えたが大人気ないのでやめた。

 ここはゴリブリンか?

 いやいや。

 大人になれっ。

 大人になるんだ。

 その時そんな声が聞こえてきた気がした。


 ジャン。と音がして大きな金色の魔石を出した。

「「「おおおおおおおおおおおおお!!」」」

 皆が驚きの声を上げた。

「おお、なんと、見事な魔石だの。確かにこれはS+クラスだの」

「はい。間違いありませんな」

 キーカー財務大臣もうなる。

「素晴らしい魔石だがの。運用するにはちと大きすぎるの」

 そうだろうな。これを船に積むには大変だろう。

「ですが、陛下、なかなかこれほどの魔石はありませんからな」

「そうだがの。だが、今必要でない物を取って置いても仕方があるまい。エアシル男爵。本当は王国で買取たいのだが、財政も厳しくてな。とてもS+の魔石を買い取れぬのだ。すまんの」

「いえいえ、魔石は売りたい訳では無いので問題ありません」

 大きな魔石を回収した。

「「ああああああ」」

 貴族達から惜しい声が漏れる。

 しょうがないな。では小さいのを出してやるか。

 代わりに金色の、一人分の大きさ百二十キロ位の魔石を出した。

「「「おおおおおおおお!!」」」

 貴族達からどよめきが起こる。


「エアシル男爵。この魔石は!?」

 陛下も驚いた。

「はい。これは、先ほどの魔石の割れた部分です。少し小さいですが、もし必要でしたらお譲りいたします」

「おお、有難い。これならS-クラスだの。どうじゃ、キーカー財務大臣」

「素晴らしいですな。ちょうど欲しかった大きさです。確かにS-ですな」

「では大白金貨百枚十億ドロルでどうかの。良いかなエアシル男爵」

「はい、もちろんです」

「うむうむ、流石だの。ではキーカー財務大臣」

「はっ」

 大白金貨が詰められた木箱をその場で貰った。いろいろ想定していたんだろう。


 その後、金竜賞も貰い。散々褒められて退出した。
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