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その3
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町壁からは大歓声が聞こえていた。
今にも攻め落とされそうなほど苦戦していた事もあり、心の底から喜んでいるのが感じられた。
「や、やったー! さすが英雄だ!」
「助かったぁああああ!」
「いやっほおおおお!」
俺も援護が間に合ったことに胸を撫で下ろしながら、飛行船が戦場跡に着地した。
アルフィーもローブと翼、金色の髪をなびかせてふわっと空から降りてくる。
その様子はまさに大天使だ。
……なんて可憐なんだろう。
一瞬見とれるが、無事だったことに安堵しながら思わずギュッと抱きしめた。
頬を合わせてぐりぐりする。
飛び回っていたせいか、少し冷たくて柔らかい。アルフィーのぬくもりが感じられて優しく甘い香りがした。
「ふふふ……エルさん、急にどうしたんですか」
「アル。一人で突っ込むから心配するじゃないか」
「そうですね、体が勝手に動いちゃいました。エルさんも、まさか船先でバリスタを撃つとは思いませんでしたよ」
「ああ、何とかしたいと思ったんだ」
「ふふ、私もです。でも何とかなりましたね」
嬉しそうな顔をしてにっこりと微笑んだ。
確かに結果はそうなのだが、俺は心配だったのだ。
「ああ……まあそうだな」
もう一度ギュッと抱きしめると、町壁からはさらに大きな拍手が聞こえた。
その後散らばっている魔石等をしっかりと回収した後、飛行船に乗りこむと町壁を飛び越えて兵士達の前に降り立った。
集まっていた兵士や冒険者達が大きな拍手と笑顔で出迎えてくれた。
当然のようにまたウエスタンとオスマンが先に出る。
両手を上げて満面の笑みで大歓声を浴びる二人。
本当に好きだねぇ。
そして落ち着いた後に俺達も出て、飛行船を回収した。
そこには薄い黄色で統一した鎧の兵士達がいっぱいいた。
これがドルケル伯爵軍か。
「エアシル卿バンザーイ!」
「おかげで助かりましたー!」
壊滅寸前だった事もあり、物凄い歓迎された。
もう少し遅かったら魔物に蹂躙されていたのだ。 それも当然だろう。
兵士達の歓迎を受けていると、向こうから豪華な鎧に包まれた若い騎士がこちらにやってきた。
十八歳くらいだろうか…… 細身で小柄な青年だ。両脇には二人のやり手そうなベテラン騎士を従えている。
「初めましてエアシル卿、伯爵のイエイガー・デル・ソル・ドルケルです。この度の救援、誠に感謝いたします」
薄い黄色い髪をした白い肌の青年が深々と頭を下げた。
どうやら当主の髪の色に合わせて兵士達の鎧を揃えているようだ。
次の当主が違う色ならまた作り直すのだろうか。
全くどうでもいい事を考えていると、当然のようにウエスタンに話しかけたので、改めてまた挨拶をした。
「エルヴァン・フォン・エアシルです。危ない所でしたね。間に合って良かったです」
「ええ、本当に助かりました。私もこれまでか、と半ば諦めておりました。それで天に祈っていたら空からエアシル卿の飛行船が見えました。一瞬幻覚かとも思いましたが、ハッキリと見えた瞬間。まさに天使が来てくれたように感じました」
そう興奮するように話しながら、じっとアルフィー達を見て顔を赤くするドルケル伯爵。
その様子が幼くて、すごく若い感じがした。
本当は俺のが若いけど。
「ははは……そうですか。ですが、恐らくさっきのデーモン達は先発隊ですよ。もうすぐ本体が来ると思います。本体の規模は恐らく今の十倍、千匹は来るでしょう」
「ええっ!? そっそんな……千匹だって!? 今までの百匹程でも無理なのに……本当でしょうか、エアシル卿」
ものすごい不安そうな顔をするドルケル伯爵。
両隣の騎士達も驚いて顔を見合わせた。
「ええ、セイランの町のファントムナイト軍団もそうでした。先発隊を倒したと思ったら将軍率いる千の軍団が来たのです」
「そ、そうですか……それで、セイランの町はどうなったんでしょうか」
「ファントムナイトの軍は将軍以外は空を飛べなかったこともあり、セイランの町の兵百と私達で殲滅しました」
「なっなんと!? 千匹を殲滅ですか。いや、話が凄すぎて……いや、ここもすぐにそうなると言う事ですね。エアシル卿は助けて頂けるのでしょうか」
すがる様に必死な表情をして俺の顔を見るドルケル伯爵。
「そうですね。もちろんお手伝いはしますよ。ただ、今の戦いのように、相手は空を飛んできます。こうなると飛行船とは言え、ファントムナイト軍のようにはいきません。ですが、相手が攻めてくる以上はやるしかありません。厳しい戦いになると思いますが覚悟はおありですか」
俺は若い伯爵を見た。
「勿論です。我が領地から逃げ出すつもりはありません。たとえ死んだとしても最後までここで戦います」
決意の目でこちらを見ながら言い切った。
うん、気持ちはあるようだ。さっきの劣勢でも逃げなかったのだ。決意は本物だろう。
本気でみんなが戦うなら勝機は必ずあるはずだ。
俺達は決戦に備えて急いで準備を開始した。
今にも攻め落とされそうなほど苦戦していた事もあり、心の底から喜んでいるのが感じられた。
「や、やったー! さすが英雄だ!」
「助かったぁああああ!」
「いやっほおおおお!」
俺も援護が間に合ったことに胸を撫で下ろしながら、飛行船が戦場跡に着地した。
アルフィーもローブと翼、金色の髪をなびかせてふわっと空から降りてくる。
その様子はまさに大天使だ。
……なんて可憐なんだろう。
一瞬見とれるが、無事だったことに安堵しながら思わずギュッと抱きしめた。
頬を合わせてぐりぐりする。
飛び回っていたせいか、少し冷たくて柔らかい。アルフィーのぬくもりが感じられて優しく甘い香りがした。
「ふふふ……エルさん、急にどうしたんですか」
「アル。一人で突っ込むから心配するじゃないか」
「そうですね、体が勝手に動いちゃいました。エルさんも、まさか船先でバリスタを撃つとは思いませんでしたよ」
「ああ、何とかしたいと思ったんだ」
「ふふ、私もです。でも何とかなりましたね」
嬉しそうな顔をしてにっこりと微笑んだ。
確かに結果はそうなのだが、俺は心配だったのだ。
「ああ……まあそうだな」
もう一度ギュッと抱きしめると、町壁からはさらに大きな拍手が聞こえた。
その後散らばっている魔石等をしっかりと回収した後、飛行船に乗りこむと町壁を飛び越えて兵士達の前に降り立った。
集まっていた兵士や冒険者達が大きな拍手と笑顔で出迎えてくれた。
当然のようにまたウエスタンとオスマンが先に出る。
両手を上げて満面の笑みで大歓声を浴びる二人。
本当に好きだねぇ。
そして落ち着いた後に俺達も出て、飛行船を回収した。
そこには薄い黄色で統一した鎧の兵士達がいっぱいいた。
これがドルケル伯爵軍か。
「エアシル卿バンザーイ!」
「おかげで助かりましたー!」
壊滅寸前だった事もあり、物凄い歓迎された。
もう少し遅かったら魔物に蹂躙されていたのだ。 それも当然だろう。
兵士達の歓迎を受けていると、向こうから豪華な鎧に包まれた若い騎士がこちらにやってきた。
十八歳くらいだろうか…… 細身で小柄な青年だ。両脇には二人のやり手そうなベテラン騎士を従えている。
「初めましてエアシル卿、伯爵のイエイガー・デル・ソル・ドルケルです。この度の救援、誠に感謝いたします」
薄い黄色い髪をした白い肌の青年が深々と頭を下げた。
どうやら当主の髪の色に合わせて兵士達の鎧を揃えているようだ。
次の当主が違う色ならまた作り直すのだろうか。
全くどうでもいい事を考えていると、当然のようにウエスタンに話しかけたので、改めてまた挨拶をした。
「エルヴァン・フォン・エアシルです。危ない所でしたね。間に合って良かったです」
「ええ、本当に助かりました。私もこれまでか、と半ば諦めておりました。それで天に祈っていたら空からエアシル卿の飛行船が見えました。一瞬幻覚かとも思いましたが、ハッキリと見えた瞬間。まさに天使が来てくれたように感じました」
そう興奮するように話しながら、じっとアルフィー達を見て顔を赤くするドルケル伯爵。
その様子が幼くて、すごく若い感じがした。
本当は俺のが若いけど。
「ははは……そうですか。ですが、恐らくさっきのデーモン達は先発隊ですよ。もうすぐ本体が来ると思います。本体の規模は恐らく今の十倍、千匹は来るでしょう」
「ええっ!? そっそんな……千匹だって!? 今までの百匹程でも無理なのに……本当でしょうか、エアシル卿」
ものすごい不安そうな顔をするドルケル伯爵。
両隣の騎士達も驚いて顔を見合わせた。
「ええ、セイランの町のファントムナイト軍団もそうでした。先発隊を倒したと思ったら将軍率いる千の軍団が来たのです」
「そ、そうですか……それで、セイランの町はどうなったんでしょうか」
「ファントムナイトの軍は将軍以外は空を飛べなかったこともあり、セイランの町の兵百と私達で殲滅しました」
「なっなんと!? 千匹を殲滅ですか。いや、話が凄すぎて……いや、ここもすぐにそうなると言う事ですね。エアシル卿は助けて頂けるのでしょうか」
すがる様に必死な表情をして俺の顔を見るドルケル伯爵。
「そうですね。もちろんお手伝いはしますよ。ただ、今の戦いのように、相手は空を飛んできます。こうなると飛行船とは言え、ファントムナイト軍のようにはいきません。ですが、相手が攻めてくる以上はやるしかありません。厳しい戦いになると思いますが覚悟はおありですか」
俺は若い伯爵を見た。
「勿論です。我が領地から逃げ出すつもりはありません。たとえ死んだとしても最後までここで戦います」
決意の目でこちらを見ながら言い切った。
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