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第百十七話.ドルケルの町 2 デーモンジェネラルとカイザーゴーレム
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ドルケルの町は伯爵領の領都なので、セイランより規模も大きく兵の数も多い。
なのでセイランの町より一回り大きい三百m四方の土壁で囲んで、川の前に出城を作った。
空を飛んで回り込まれる恐れもあるので川側もすべて囲ったのだ。
ついでなので川の水を壁の外側に引き込んで、内堀のように作ってみた。
もしゴーレムや、飛べない魔物が来たときには時間が稼げるからだ。
その分塀も穴も大きめに作っていった。
見張り用の高台も作り、階段で上れるようにした。
ある程度形が出来たところで兵と冒険者三百人を移設する。
正面の土壁の上にはバリスタをズラッと並べた。
その数百台。
残念ながらそれ以上の数は無いのだ。
自分用にも数台は残しておく必要もある。
見張りを立てて、兵士達の配備が整うと、出城の中にテント小屋をバンバン置いていく。
もちろんドルケル伯爵軍所有のテントや食料、雑道具等もすべて回収して運んだのだ。
しばらく頑張ったお陰で、十分な備えが出来たようだ。
これなら簡単には落とせまい。
一安心して出城の中心に設置した、ドルケル伯爵本部のテントに入る。
「このような大規模の出城と設備を、こんな短時間に作られるとは……エアシル卿達はもしかして本物の天使なのでしょうか?」
ドルケル伯爵がキラキラした目で俺達を見ながらそう言った。
俺も頭に輪を出していたので余計にそう思ったのだろう。
さらに頬を赤らめながらチラチラとアルフィーを見ながら話を続けた。
「空を舞っていたアルフィー殿の、白い翼と天使の輪はまさに天使そのものです。先ほどはエアシル卿にも天使の輪がありましたね。神々しくてとても同じ人間には見えませんでしたよ」
そうだろうな。誰が見ても天使と言うだろう。
はい、天使なんですよ。
と言いたいところだが、言ってもしょうがないのでいつもの手だ。
「はははは、よく言われるんですよ。ですが、そんなにのんびりは出来ませんよ。デーモンジェネラル軍団とカイザーゴーレム軍団がこちらへ向かってくる。と聞いています。もし同時に攻められたら、どうなるかわかりません。こちらに援軍はこないのでしょうか」
もし二千匹もの魔物軍団が来たら、簡単に勝てるような気がしない。
バリスタがもっとあればいいのだが、これ以上は無いし大槍も数が足りないのだ。
「そうですね……もちろん、隣のバロルド公爵と王都にも援軍要請の遣いは出しておりますが、どうやら王都にも魔物達が襲っている。とのうわさもあるのですよ」
「えっ? 王都にもですか」
それは考えてなかったな。
「はい。確か王都の南にはカイザーゴーレムや、ファントムナイトの領域がありました。もし、それらも襲ってきたら、と考えれば、無い話ではありません」
そうだった。以前、討伐依頼の時に確かめたはずだ。
もともと近くに魔物はいたのだ。あれが王都を襲っていたならこちらまで手が回らないだろう。
「そ、そうね。確かにいたわね」
シルフィーも調査したのを思い出して頭をかきながら天を見上げた。
「それが本当だとすれば、援軍どころではないでしょう」
ドルケル伯爵もあきらめているようだ。
うーん。そうなるとやはり、今ここに居る戦力だけで何とかするしかない。
しかし相手が二千匹ともなると明らかに武器の数が足りてない。
何か他に武器は無いかな。
バリスタは無理だとしても……あっそうだ。
「ドルケル伯爵、槍は大量にないですか。私が空から槍を降らせばかなり魔物を削れると思います」
「なるほど! 確かに飛行船から降らせばかなりの威力になりますよね。分かりました。城の予備品を全部と、武器屋にある物を全て持ってこさせましょう」
ドリケル伯爵が興奮したように立ち上がった。
「いえ、時間がもったいないので飛行船で取りに行きましょう。ドルケル伯爵、飛行船にどうぞ」
「はい! ではすぐに参りましょう」
連れ立って急いで城へ行き、武器庫から槍五百、また、町の武器屋からも槍五百を回収した。
勿論槍のお金は相場でその場で支払った。
さらに、川の周辺から大岩を出来るだけ回収して戻ってきた。
これだけの武器があれば、上空から落としまくれば何とかなるかも知れない。
かなり勝機が見えてきた。
ドルケル城にも百人程、町壁にも百人ほどの兵と冒険者が残り警備に当たっている。
出城に詰めている三百と合わせれば総勢五百人ほどの兵力だ。
準備が整ったので、メインの出城の陣横にテント小屋改と、ウエスタン達のテント小屋を設置した。
シルフィーユとサラを呼び出して、周辺の警戒してもらった。
それから三日後、ガイバンが走ってドルケルの町までやってきたようだ。
伝令から連絡を受けたので飛行船で町まで戻り冒険者ギルドへ向かった。
「エルヴァン殿。只今戻ったでやんす」
薄着でまだ息を切らしているガイバンが汗だくで立っていた。
「おおっ早かったな、ガイバン。アル、回復してやってくれ」
「はい。回復呪文大。状態回復大」
アルフィーの呪文に包まれてガイバンの顔色が見る見る良くなった。
「ありがとうでやんす、アルフィー殿。クライフ殿からこれを預かってきたでやんす」
手紙とマジックバッグを受け取った。
開けてみると中には大槍が三百本入っていた。他にも食料や酒なども大量に入っている。
流石クライフ。
出来ればバリスタが欲しいところだが、大きすぎて入れられないのだろう。
クライフもマルセイユもアイテムボックスがあるが、バリスタは大きすぎて持てないのだ。
そう思って手紙を読むとやはりその旨が書いてあった。
いや、十分だ。大槍だけでも本当にありがたい。
手紙によると、王都にもやはり魔物が襲ったらしく各地に王都救援要請の伝令鳥が出ているようだ。
だが、その各地でも魔物の動きが活発になり、それぞれの町でも防衛戦が行われているらしく、皆が救援要請をしているそうだ。
つまりどの町でも緊急事態になっているのだ。
これはえらい事になってるな。
「どういう事なんだ。各地で魔物が氾濫しているのか」
「そうでやんす。エアシルの町にも他から続々と救援要請が来てるでやんすが、エアシルの町にもゴリブリンキングの軍が北東から攻めてきてるんでやんすよ」
ガイバンの言葉に愕然とした。
なのでセイランの町より一回り大きい三百m四方の土壁で囲んで、川の前に出城を作った。
空を飛んで回り込まれる恐れもあるので川側もすべて囲ったのだ。
ついでなので川の水を壁の外側に引き込んで、内堀のように作ってみた。
もしゴーレムや、飛べない魔物が来たときには時間が稼げるからだ。
その分塀も穴も大きめに作っていった。
見張り用の高台も作り、階段で上れるようにした。
ある程度形が出来たところで兵と冒険者三百人を移設する。
正面の土壁の上にはバリスタをズラッと並べた。
その数百台。
残念ながらそれ以上の数は無いのだ。
自分用にも数台は残しておく必要もある。
見張りを立てて、兵士達の配備が整うと、出城の中にテント小屋をバンバン置いていく。
もちろんドルケル伯爵軍所有のテントや食料、雑道具等もすべて回収して運んだのだ。
しばらく頑張ったお陰で、十分な備えが出来たようだ。
これなら簡単には落とせまい。
一安心して出城の中心に設置した、ドルケル伯爵本部のテントに入る。
「このような大規模の出城と設備を、こんな短時間に作られるとは……エアシル卿達はもしかして本物の天使なのでしょうか?」
ドルケル伯爵がキラキラした目で俺達を見ながらそう言った。
俺も頭に輪を出していたので余計にそう思ったのだろう。
さらに頬を赤らめながらチラチラとアルフィーを見ながら話を続けた。
「空を舞っていたアルフィー殿の、白い翼と天使の輪はまさに天使そのものです。先ほどはエアシル卿にも天使の輪がありましたね。神々しくてとても同じ人間には見えませんでしたよ」
そうだろうな。誰が見ても天使と言うだろう。
はい、天使なんですよ。
と言いたいところだが、言ってもしょうがないのでいつもの手だ。
「はははは、よく言われるんですよ。ですが、そんなにのんびりは出来ませんよ。デーモンジェネラル軍団とカイザーゴーレム軍団がこちらへ向かってくる。と聞いています。もし同時に攻められたら、どうなるかわかりません。こちらに援軍はこないのでしょうか」
もし二千匹もの魔物軍団が来たら、簡単に勝てるような気がしない。
バリスタがもっとあればいいのだが、これ以上は無いし大槍も数が足りないのだ。
「そうですね……もちろん、隣のバロルド公爵と王都にも援軍要請の遣いは出しておりますが、どうやら王都にも魔物達が襲っている。とのうわさもあるのですよ」
「えっ? 王都にもですか」
それは考えてなかったな。
「はい。確か王都の南にはカイザーゴーレムや、ファントムナイトの領域がありました。もし、それらも襲ってきたら、と考えれば、無い話ではありません」
そうだった。以前、討伐依頼の時に確かめたはずだ。
もともと近くに魔物はいたのだ。あれが王都を襲っていたならこちらまで手が回らないだろう。
「そ、そうね。確かにいたわね」
シルフィーも調査したのを思い出して頭をかきながら天を見上げた。
「それが本当だとすれば、援軍どころではないでしょう」
ドルケル伯爵もあきらめているようだ。
うーん。そうなるとやはり、今ここに居る戦力だけで何とかするしかない。
しかし相手が二千匹ともなると明らかに武器の数が足りてない。
何か他に武器は無いかな。
バリスタは無理だとしても……あっそうだ。
「ドルケル伯爵、槍は大量にないですか。私が空から槍を降らせばかなり魔物を削れると思います」
「なるほど! 確かに飛行船から降らせばかなりの威力になりますよね。分かりました。城の予備品を全部と、武器屋にある物を全て持ってこさせましょう」
ドリケル伯爵が興奮したように立ち上がった。
「いえ、時間がもったいないので飛行船で取りに行きましょう。ドルケル伯爵、飛行船にどうぞ」
「はい! ではすぐに参りましょう」
連れ立って急いで城へ行き、武器庫から槍五百、また、町の武器屋からも槍五百を回収した。
勿論槍のお金は相場でその場で支払った。
さらに、川の周辺から大岩を出来るだけ回収して戻ってきた。
これだけの武器があれば、上空から落としまくれば何とかなるかも知れない。
かなり勝機が見えてきた。
ドルケル城にも百人程、町壁にも百人ほどの兵と冒険者が残り警備に当たっている。
出城に詰めている三百と合わせれば総勢五百人ほどの兵力だ。
準備が整ったので、メインの出城の陣横にテント小屋改と、ウエスタン達のテント小屋を設置した。
シルフィーユとサラを呼び出して、周辺の警戒してもらった。
それから三日後、ガイバンが走ってドルケルの町までやってきたようだ。
伝令から連絡を受けたので飛行船で町まで戻り冒険者ギルドへ向かった。
「エルヴァン殿。只今戻ったでやんす」
薄着でまだ息を切らしているガイバンが汗だくで立っていた。
「おおっ早かったな、ガイバン。アル、回復してやってくれ」
「はい。回復呪文大。状態回復大」
アルフィーの呪文に包まれてガイバンの顔色が見る見る良くなった。
「ありがとうでやんす、アルフィー殿。クライフ殿からこれを預かってきたでやんす」
手紙とマジックバッグを受け取った。
開けてみると中には大槍が三百本入っていた。他にも食料や酒なども大量に入っている。
流石クライフ。
出来ればバリスタが欲しいところだが、大きすぎて入れられないのだろう。
クライフもマルセイユもアイテムボックスがあるが、バリスタは大きすぎて持てないのだ。
そう思って手紙を読むとやはりその旨が書いてあった。
いや、十分だ。大槍だけでも本当にありがたい。
手紙によると、王都にもやはり魔物が襲ったらしく各地に王都救援要請の伝令鳥が出ているようだ。
だが、その各地でも魔物の動きが活発になり、それぞれの町でも防衛戦が行われているらしく、皆が救援要請をしているそうだ。
つまりどの町でも緊急事態になっているのだ。
これはえらい事になってるな。
「どういう事なんだ。各地で魔物が氾濫しているのか」
「そうでやんす。エアシルの町にも他から続々と救援要請が来てるでやんすが、エアシルの町にもゴリブリンキングの軍が北東から攻めてきてるんでやんすよ」
ガイバンの言葉に愕然とした。
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