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最弱祓魔師少女と最強悪魔少年の、初恋
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俺が唯一、胸張って自慢できることと言えば……不幸。自慢というか、自虐かな。
幼稚園の頃、同い年で同じ誕生日という理由で仲が良かった女の子がいた。俺はその子が指を折紙で怪我したとき、ママに教わったように指を嘗めて慰めてあげた。後々知ることになるが、それが不幸連鎖のきっかけらしい。
その翌日、俺の両親が惨殺された。猟奇的な犯行だった。あばら骨が開かれた状態で、心臓を抜き取られたんだ。二人とも、な……。
後にも先にも、最悪の不幸。それが皮切りとなって、俺は不幸の荒波に揉まれることになる。
親戚がいなかった俺は施設に預けられた。そこにいたのは人の皮を被った悪魔だった。ヤツにとって俺たち孤児とは、行政や支援者から金を巻き取るための商材に過ぎなかったのだ。
奴隷のようにこき使われ、施設の体裁を守るために小学校に通う。金や名誉とどう関係しているのか、成績が優秀でない者に、施設における家事の負担が集中する仕組みだった。
俺は血の繋がりがない兄ちゃん姉ちゃんたちからそのシステムについて身を以て教わり、弟や妹が増えるとさらに俺に負担が集中した。
小学校で、俺はいじめられていたのだ。
しかしそんな不幸を六年間味わい続けた俺に、転機が訪れる。頭の中に、禍々しい声が響いたのだ。
『なぁ太陽、ヒーローになりたくはないか?』
中学一年生になって二ヶ月が過ぎた、六月六日の朝六時六分六秒六の瞬間である。どうしてコンマ秒までわかるのかと言えば、脳内に響く声の主が、数字の六にやたら強いこだわりを持っていることを悟ったからだ。
どうやら俺には悪魔が宿っているらしい。それもなんと、紀元前の時代にその名を轟かせた最上位の悪魔――ベルゼビュート。
ベルゼビュートは言う。俺が体をベルゼビュートに譲れば、これから世界中で大暴れする悪魔たちを一網打尽にしてくれる。すると俺は一躍有名人。世界を救った英雄となれるそうだ。
俺は断った。化けの皮を被っていい思いをするなんて、憎たらしい施設長とやることが同じではないか。
するとベルゼビュートが妥協案として力の使い方を教えてくれた。正直気は進まなかったが、いざ身近に悪魔の被害が出ると、見て見ぬ振りはできなかった。
悪魔はどいつも日光や鏡、塩などの、古典的な魔除けに弱いらしく、そういった要素の少ない雨天時や夜間を好んで活動していた。俺はベルゼビュートのアドバイスをもらいつつ、最上位悪魔の力を振るって悪魔退治に尽力していく。
悪魔たちは人間のネガティブな気持ちを食って成長するバケモノだ。しかも悪魔同士でも喰らいあい、より強さを求める。行き着く先は魔王であり、魔王になれば世界の支配者となり、願いをひとつ叶えることができるらしい。俺はそんな悪魔たちから家族を守るべく、ベルゼビュートと共に戦いの日々に身を投じた。
そんな中学生活は、極めて多忙で、充実していた。家族からも、学校でも、とにかくモテた。今さらの成長期が訪れて、クラスで一番チビだった俺はクラスで一番背が高くなった。
ひとつだけ不愉快なことがあるとすれば、施設長も俺の活躍を利用して私腹を肥やしたことだろうか。
そうして高校に進学した俺の前に、一人の少女が現れた。
吉宮眞華。透き通るような金の癖っ毛。宝石のような碧い瞳。誰がどう見ても外国人だが、本人曰く日本人だそうだ。身長は百五十センチに届かないほどで、俺の鳩尾辺りに彼女の鼻がくる。
彼女は俺の同業者だった。
もはや習慣となっていた夜中の悪魔退治が終わったタイミングで、俺は彼女に襲われたのだ。
「……ようやく見つけたわ、ベルゼビュート」
俺の脳内で、ベルゼビュートが苛立ちを露わにする。
『この女……ウォーロックの先祖返りか』
さすがに俺の脳内だけで響く声が直接彼女に届くことはないらしく、俺はやむを得ずこいつらに会話させるための通訳者になった。
なんでも年号が紀元前の時代、ウォーロックという祓魔師がいたらしい。彼女は魔王誕生を阻止するため、能動的に先祖返りを繰り返していくつもの時代で悪魔狩りを行ってきた、人類の守護者だそうだ。
その先祖返りを可能としているのが、かつて彼女に封印されたベルゼビュートの莫大な霊力。
本来であればベルゼビュートを封印したまま先祖返りが発動し、吉宮眞華は十歳でその人格を消失して完璧なウォーロックとして体を乗っ取られるらしい。だが、そうなっていないのは、五歳の頃にベルゼビュートが逃げ出したからだそうだ。
――幼稚園の頃、仲が良かった女の子。折紙で怪我をした彼女の指を嘗めた瞬間、その血を経由してベルゼビュートが俺に宿ったのだという。
俺の両親を殺したのはベルゼビュートだった。無理矢理俺の体を操って、両親を惨殺したのだそうだ。
理由は二つ。俺を絶望させ乗っ取りやすくすることと、ウォーロック――吉宮眞華から俺を遠ざけるため。実際、俺が入れられた施設は県を跨ぎ、高校生になって眞華が追いかけてくるまで再会できずにいたのだから、目論見通りだったのだろう。
小学校時代、ベルゼビュートは俺の中で英気を養いつつ、俺をじわじわと不幸で浸食していた。
しかし俺はそれに耐え、中学時代を迎えた。ベルゼビュートもそろそろ悪魔狩りを始めたいと焦っていたらしく、俺に直接干渉してきた。
何度も繰り返されたウォーロックの先祖返り。それを間近で見てきたベルゼビュートは、知っていたのだ。十歳になればウォーロックが目覚め、自分を探そうとすること。ただしウォーロックもまた、それぞれの時代における文明には逆らえないこと。
即ち、幼少期の俺を眞華から遠ざけるには『家庭の都合による引っ越し』しかない。それさえ叶えば、まず眞華が大人になるまでの接点を潰せる。その間にウォーロックに対抗できる強さを得られればよい……と。
だからベルゼビュートは、俺の両親を殺した。
そして中学生になるまでに俺を乗っ取りたかったそうだが、俺が抵抗したために妥協案を提案したらしい。
俺を乗っ取るのを後回しにして、まずは強くなろうとした。
見事に俺はベルゼビュートの口車に乗せられ、まんまとベルゼビュートの力を八割方引き出せるようになってしまった。
今の俺にできることは、戦わない選択をすることだけだった。これ以上ベルゼビュートの力を使わず、眞華が強くなるのを待ち、俺に巣くうベルゼビュートをどうにかしてもらう……。
だが、眞華は弱かった。先祖返りが不完全だったせいか、全盛期のウォーロックの力の一割も継承できなかったようで、脳内で指導するウォーロックを師匠として、なんとか全盛期の三割ほどの力を修行で身につけたのだという。
こうして、最弱の祓魔師と最強の悪魔を宿した俺たち二人の高校生活が始まったのだ。
俺たちはほぼ毎日というペースで、悪魔狩りを繰り広げていた。悪魔は大抵、動物の形をとる。実在する動物で小型であればあるほど弱く、大型なほど強く、それ以上になると異形化する。
「そっちいったぞ!」
「任せてッ!」
雨天、夜間時に限り、俺の肉体は悪魔化が可能だ。翼、爪、魔眼、角、尻尾など、いずれもシャープで先鋭的かつ人の身には大きいサイズで、結果として不気味な歪さがどうしてもつきまとう。しかし悪魔化すればその部位に応じた攻撃が可能で、中学時代から頼りになった。また、外骨格のような装甲を纏えば防御も可能だ。
だが現在は、弱らせるだけ弱らせて、眞華の方へと追い詰めることばかりしている。
眞華は、悪魔を浄化して霊力を取り込み強くなるのだ。というより、眞華は自らの霊力より弱い悪魔しか浄化できない。だから眞華が倒せるレベルまで、俺が弱らせる必要がある。
祓魔師の術は様々あるらしく、眞華は様々な術を会得していた。
「鏡乱ノ路!」
ときに鏡を使い、
「熔々塩呪!」
霊力を込めた塩を撒き、
「クロススピアランス!」
十字架を模した槍で突き刺し――と、その攻撃法方は多種多様。和洋中の垣根も越える。
なんにしても、銀や光、祝詞、儀式……あらゆる神聖な物や儀式にまつわる要素が悪魔に対しての攻撃手段となり得るようだ。悪魔も種類や個体によって弱点が違うらしく、眞華はその見極めに長けていた。弱い霊力であっても、多少の格上相手なら一人で倒せるのだ。
「すげーな、いつ見ても派手だぜ」
「ちょっと太陽っ!? もう少し悪魔化セーブしなさいよ、死にたいの!?」
俺は俺で、リスクがあった。
悪魔化は強力で、使えば使うほど強くなる。ただし、俺自身そのものが悪魔に近づいてしまうのだ。中学時代はベルゼビュートが俺を乗っ取るべく黙っていたうえに悪魔化の酷使を推奨され、躊躇いなく使い込んでしまったこともあり、俺は非常に強い悪魔の力を得た一方、人間としては非常に脆い存在になってしまった。
それがどれだけ深刻なことかを自覚したのが、高校一年の秋頃のこと。体育の持久走中に気絶したのだ。四十分ほど直射日光に晒されただけで、俺は意識を保てなくなっていた。
悪魔は、他の悪魔を喰らい魔王を目指す。その性質が、俺たちに希望と絶望を同時に与えた。
というのも、中学時代の俺の悪魔狩りを知った他の悪魔たちが、遠い地域や国で悪魔を食って強くなり、俺たちを強敵と認定したのだ。
最初に襲撃してきた悪魔の名はベリアル。紀元前時代、全盛期のウォーロックすら苦戦したという悪魔最強格の筆頭である。
ベリアルの圧倒的霊力に、これまでずっと俺の戦闘を見世物にしていたベルゼビュートが、初めて狼狽した。
四月、眞華の奇襲を受けたときですら、余裕そうにあしらったベルゼビュートが、だ。
俺が完全に悪魔と化してなお、敵うかどうか怪しい強敵。
眞華が殺されそうになって、俺はようやく決心した。
「もう悪魔になったっていい、それでも眞華だけは助けたい!」
初にして最期の全身悪魔化。それでもベリアルに殺されそうになって、ベルゼビュートが俺の体を強引に支配した。そうして激戦の末、ベルゼビュートがベリアルに致命傷を与え、眞華の術で葬ることに成功した。
だが、完全悪魔となった俺は、もう二度と人間の姿に戻れなくなった。疲労困憊のベルゼビュートから無理矢理体の支配権を取り戻して、悟る。
もうこの体は完全にベルゼビュートのものなのだ、と。
「眞華……俺はここまでだ。ベルゼビュートが俺の体を乗っ取る前に……俺を殺してくれ」
俺は覚悟を決めたのに……眞華は。
「嫌だよ……っ! あたしは太陽を殺せない……だって、ずっと好きだったんだからっ」
眞華は最後まで俺の説得を聞き入れず、俺を殺してくれなかった。
最終的に、俺はベルゼビュートに体を奪われ……眞華の前から、飛び去った。
* * *
あたしは、とんでもない大馬鹿者だ。
本当なら、十歳であたしの一生は終わって、ウォーロックとかいう大昔の人に体を乗っ取られて死んでいたはずだった。
それがどういうわけか、幼稚園であたしの怪我を心配してくれた男の子によって、あたしの死の運命は回避された。
あのとき、折紙で切った指を、太陽が嘗めてくれたから……ウォーロックの先祖返りより先にあたしの体からベルゼビュートが排出されて、結果として先祖返りが中途半端なものになり、あたしは生き残った。
それからは、ウォーロックの話を聞いて、渋々祓魔師としての修行に身を投じた。普通の人間は、低級の悪魔でも簡単に支配されてしまう。友達や周囲の人が被害に遭ったとき、見て見ぬ振りなんてできなかった。
でも、覚悟が足らなかったのかな。
太陽は命を懸けてあたしの霊力を育ててくれたのに……最後、あたしは自分の手で太陽を殺したくないからなんてわがままを言って、怒らせた。
そして、太陽はベルゼビュートに乗っ取られて……悪魔になってしまった……。
あたしのせいだ。あたしが、太陽を殺さなかったから!
覚悟を決めるのが、遅すぎるとは自分でも思う。とっくに罪滅ぼしなんてできない手遅れな状態だとはわかってる。
でも、あたしはあたしの命を捨ててでも、ベルゼビュートを殺す! そして太陽の体を取り戻すんだ!
そう決意したあたしは、今まで以上に祓魔師としての修行に明け暮れた。高校なんて通わなくなって四年以上が経ち……あたしは二十歳になった。
ベルゼビュートが本格覚醒したからか、世界各地で悪魔による活動が本格化した。低級悪魔は狂ったように人を襲い、そんな低級悪魔を餌として、魔王になろうとする悪魔が共食いを繰り広げる地獄絵図。
人間なんて、上を目指す強い悪魔にとっては価値のない存在らしく、良くも悪くも放置された。おかげで、人間としての敵は低級悪魔に絞られたし、その低級悪魔は中上位悪魔に食い殺されるので、意外と人間社会に悪影響は出なかった。
だからおかげで、あたしは上位悪魔狩りに専念できた。
二十歳になった今、どうやらあたしは悪魔の間でも脅威と囁かれるくらいには、強くなれた。未だにあたしの体に取り憑いているウォーロックの全盛期にはまだまだらしいけど……。どれだけ強かったんだろ、ウォーロック。
今のあたしを見たら、太陽、なんて言ってくれるかな。
たまに愛しい彼の顔を思い浮かべながら、あたしは悪魔を狩り続けた。狩って、狩って、狩りまくって……そして。
ベルゼビュートと、再会した。
ヤツはヤツで、上位悪魔を殺し回っていたらしい。禍々しい霊力が、今のあたしにはひしひしと感じられる。
開口一番、ヤツはあたしにこう言った。
「俺と、結婚してくれないか?」
……え?
* * *
ベリアル戦で完全悪魔となった俺は、ベルゼビュートに体を乗っ取られたわけだが……それが俺の死ではなかったらしい。
ベルゼビュートが俺の体を乗っ取った後、最初に向かった先は、小学生時代を過ごした施設だった。
そこでベルゼビュートは、なんと体の支配権を俺に返してくれた。
『最期にお前の望みを叶えてやるよ、太陽。あのおっさんのこと、ずっと殺したかったんだろう?』
施設長はなにも変わっていなかった。ただ、悪辣さとその手腕だけ、磨きがかかっていた。
かつて、俺が何度も殺意を抱いた相手。中学時代は、悪魔の力でいつでも殺せただろうし……実際、殺しかけたこともあった。
確かに俺は施設長のことが嫌いだ。殺したいほど憎んでいる。
俺は自由になった両手で……鋭く尖った銀のナイフで。
自分の心臓を突き刺した。
「殺したいのは、俺自身だ……!」
五歳の頃、ベルゼビュートに乗っ取られたときのこととはいえ、両親を殺して心臓をえぐり取った凶器は、俺自身の体なのだから。
さすがに悪魔の体だけあって、俺は死ななかった。そしてそれきり、ベルゼビュートは俺の中から消えていた。
俺はベルゼビュートの肉体で、俺の意識で、取り残された。
目を覚ました施設長が、異形の俺の姿を見て、平然と語り出した。
なんでも、悪魔とは『同族殺し』を意味するという。
人の負の感情によって生まれた悪魔は、依代に同族を殺させて、真の意味で血肉を得るのだ。例えばカマキリは、交尾の際にメスがオスを食べることがあるという。たとえどんな理由があれ、同族殺しは同族殺しなので、オスのカマキリを食ったメスカマキリは、その時点で悪魔になる条件を満たすようだ。
これが人間の場合、自らの手で人間を殺すことが条件となるらしい。そこに理由は問わないそうだが、とにもかくにも、俺はまだ、ギリギリ人を殺したことはなかった。
俺は、俺の体がベルゼビュートに操られて親を殺したが……自分自身の意思で施設長に殺意を抱いたが……それでも俺は、便宜上人間なのだそうだ。
だから、ベルゼビュートは俺に殺人をさせようとしたのだろう。そして俺が一番殺意を抱いている、施設長をターゲットにした。
それでも俺は施設長を殺さなかった。それどころか、銀の刃物で心臓を貫くという一撃が、ベルゼビュートを排除した。
「太陽……どうして、私を殺さなかった?」
施設長は、全身悪魔のバケモノを見て、どうして俺だと気づいたのだろう。
「アンタには、世話になったからな。許すつもりなんてないけど」
俺たち孤児は施設長にとって金を呼ぶ道具だ。施設長の支配欲求を満たすための奴隷に過ぎない。
だが、そのためとはいえ……飯を食えた。服をくれた。知能を授かった。思い返せば施設長の用意した食材は栄養価が高いものばかりで、料理当番がそれで食事を作っていた。服は体の成長に合わせてぴったりのサイズになるよう何度も買い替えてもらった。あらゆる支配と厳罰の中に潜む施設長の思惑を暴こうとする過程で、俺たちは周囲の子供たちより高い適応力を養われた。
だから、施設を出て大人になった奴隷たちが、施設長の愛のない育児を擁護するサイクルができあがっていた。施設長に人の心はなかったが、その自己愛を満たすための歪んだ教育が、どういうわけか施設長を守ったのだ。
それに気づいた俺は、施設長に尋ねた。
「アンタ、やろうと思えばどこまでも大悪党になれるだろ。どうしていつまでも施設長の立場に収まってる?」
施設長は、胸を張って、堂々と、悪びれもせず、即、断言した。
「悪名高さにも地位にも興味がないからだ。興味もないのに首を突っ込むほど私は馬鹿ではない。言い換えるなら、身の丈をわきまえているということだ。私が楽して気持ちよく過ごせる環境が維持できれば、それでいい」
悔しかった。俺が今まで出会ってきた人たちの中で、一番説得力を持った言葉だったから。
施設長とベルゼビュートの支配から脱却した俺は、眞華と再会したいと思った。一方で、このまま会いに行くのはまずいと直感した。
現在の悪魔たちは、魔王となるべく共食いに励んでいる。ベリアルは最強格の筆頭でこそあれ、ベリアルを倒せば終わりではない。
ベリアルと同格の悪魔たちが、今も世界のどこかで力を蓄えているのだ。今眞華と再会したら、きっと今までのペースでの悪魔狩りを再開することになる。それでは間に合わない。
だから俺は、魔王になることを決意した。世界各地で強い悪魔を狩って、狩って、狩りまくる生活の中、日本で眞華が上位悪魔を次々屠っているという風の噂を聞いて、少し嬉しかった。
眞華が敵数を減らしてくれたこともあって、俺は無事、魔王になれた。
魔王になって願ったのは――悪魔が二度と生まれてこなくなる世界。
もう、悪魔に負の感情を刺激されることはない。
こうして俺は眞華と再会し、求婚したのである。
その後俺と眞華は、俺を人間の体に戻す方法を、のんびり探しはじめた。それが今、とても幸せだ。
幼稚園の頃、同い年で同じ誕生日という理由で仲が良かった女の子がいた。俺はその子が指を折紙で怪我したとき、ママに教わったように指を嘗めて慰めてあげた。後々知ることになるが、それが不幸連鎖のきっかけらしい。
その翌日、俺の両親が惨殺された。猟奇的な犯行だった。あばら骨が開かれた状態で、心臓を抜き取られたんだ。二人とも、な……。
後にも先にも、最悪の不幸。それが皮切りとなって、俺は不幸の荒波に揉まれることになる。
親戚がいなかった俺は施設に預けられた。そこにいたのは人の皮を被った悪魔だった。ヤツにとって俺たち孤児とは、行政や支援者から金を巻き取るための商材に過ぎなかったのだ。
奴隷のようにこき使われ、施設の体裁を守るために小学校に通う。金や名誉とどう関係しているのか、成績が優秀でない者に、施設における家事の負担が集中する仕組みだった。
俺は血の繋がりがない兄ちゃん姉ちゃんたちからそのシステムについて身を以て教わり、弟や妹が増えるとさらに俺に負担が集中した。
小学校で、俺はいじめられていたのだ。
しかしそんな不幸を六年間味わい続けた俺に、転機が訪れる。頭の中に、禍々しい声が響いたのだ。
『なぁ太陽、ヒーローになりたくはないか?』
中学一年生になって二ヶ月が過ぎた、六月六日の朝六時六分六秒六の瞬間である。どうしてコンマ秒までわかるのかと言えば、脳内に響く声の主が、数字の六にやたら強いこだわりを持っていることを悟ったからだ。
どうやら俺には悪魔が宿っているらしい。それもなんと、紀元前の時代にその名を轟かせた最上位の悪魔――ベルゼビュート。
ベルゼビュートは言う。俺が体をベルゼビュートに譲れば、これから世界中で大暴れする悪魔たちを一網打尽にしてくれる。すると俺は一躍有名人。世界を救った英雄となれるそうだ。
俺は断った。化けの皮を被っていい思いをするなんて、憎たらしい施設長とやることが同じではないか。
するとベルゼビュートが妥協案として力の使い方を教えてくれた。正直気は進まなかったが、いざ身近に悪魔の被害が出ると、見て見ぬ振りはできなかった。
悪魔はどいつも日光や鏡、塩などの、古典的な魔除けに弱いらしく、そういった要素の少ない雨天時や夜間を好んで活動していた。俺はベルゼビュートのアドバイスをもらいつつ、最上位悪魔の力を振るって悪魔退治に尽力していく。
悪魔たちは人間のネガティブな気持ちを食って成長するバケモノだ。しかも悪魔同士でも喰らいあい、より強さを求める。行き着く先は魔王であり、魔王になれば世界の支配者となり、願いをひとつ叶えることができるらしい。俺はそんな悪魔たちから家族を守るべく、ベルゼビュートと共に戦いの日々に身を投じた。
そんな中学生活は、極めて多忙で、充実していた。家族からも、学校でも、とにかくモテた。今さらの成長期が訪れて、クラスで一番チビだった俺はクラスで一番背が高くなった。
ひとつだけ不愉快なことがあるとすれば、施設長も俺の活躍を利用して私腹を肥やしたことだろうか。
そうして高校に進学した俺の前に、一人の少女が現れた。
吉宮眞華。透き通るような金の癖っ毛。宝石のような碧い瞳。誰がどう見ても外国人だが、本人曰く日本人だそうだ。身長は百五十センチに届かないほどで、俺の鳩尾辺りに彼女の鼻がくる。
彼女は俺の同業者だった。
もはや習慣となっていた夜中の悪魔退治が終わったタイミングで、俺は彼女に襲われたのだ。
「……ようやく見つけたわ、ベルゼビュート」
俺の脳内で、ベルゼビュートが苛立ちを露わにする。
『この女……ウォーロックの先祖返りか』
さすがに俺の脳内だけで響く声が直接彼女に届くことはないらしく、俺はやむを得ずこいつらに会話させるための通訳者になった。
なんでも年号が紀元前の時代、ウォーロックという祓魔師がいたらしい。彼女は魔王誕生を阻止するため、能動的に先祖返りを繰り返していくつもの時代で悪魔狩りを行ってきた、人類の守護者だそうだ。
その先祖返りを可能としているのが、かつて彼女に封印されたベルゼビュートの莫大な霊力。
本来であればベルゼビュートを封印したまま先祖返りが発動し、吉宮眞華は十歳でその人格を消失して完璧なウォーロックとして体を乗っ取られるらしい。だが、そうなっていないのは、五歳の頃にベルゼビュートが逃げ出したからだそうだ。
――幼稚園の頃、仲が良かった女の子。折紙で怪我をした彼女の指を嘗めた瞬間、その血を経由してベルゼビュートが俺に宿ったのだという。
俺の両親を殺したのはベルゼビュートだった。無理矢理俺の体を操って、両親を惨殺したのだそうだ。
理由は二つ。俺を絶望させ乗っ取りやすくすることと、ウォーロック――吉宮眞華から俺を遠ざけるため。実際、俺が入れられた施設は県を跨ぎ、高校生になって眞華が追いかけてくるまで再会できずにいたのだから、目論見通りだったのだろう。
小学校時代、ベルゼビュートは俺の中で英気を養いつつ、俺をじわじわと不幸で浸食していた。
しかし俺はそれに耐え、中学時代を迎えた。ベルゼビュートもそろそろ悪魔狩りを始めたいと焦っていたらしく、俺に直接干渉してきた。
何度も繰り返されたウォーロックの先祖返り。それを間近で見てきたベルゼビュートは、知っていたのだ。十歳になればウォーロックが目覚め、自分を探そうとすること。ただしウォーロックもまた、それぞれの時代における文明には逆らえないこと。
即ち、幼少期の俺を眞華から遠ざけるには『家庭の都合による引っ越し』しかない。それさえ叶えば、まず眞華が大人になるまでの接点を潰せる。その間にウォーロックに対抗できる強さを得られればよい……と。
だからベルゼビュートは、俺の両親を殺した。
そして中学生になるまでに俺を乗っ取りたかったそうだが、俺が抵抗したために妥協案を提案したらしい。
俺を乗っ取るのを後回しにして、まずは強くなろうとした。
見事に俺はベルゼビュートの口車に乗せられ、まんまとベルゼビュートの力を八割方引き出せるようになってしまった。
今の俺にできることは、戦わない選択をすることだけだった。これ以上ベルゼビュートの力を使わず、眞華が強くなるのを待ち、俺に巣くうベルゼビュートをどうにかしてもらう……。
だが、眞華は弱かった。先祖返りが不完全だったせいか、全盛期のウォーロックの力の一割も継承できなかったようで、脳内で指導するウォーロックを師匠として、なんとか全盛期の三割ほどの力を修行で身につけたのだという。
こうして、最弱の祓魔師と最強の悪魔を宿した俺たち二人の高校生活が始まったのだ。
俺たちはほぼ毎日というペースで、悪魔狩りを繰り広げていた。悪魔は大抵、動物の形をとる。実在する動物で小型であればあるほど弱く、大型なほど強く、それ以上になると異形化する。
「そっちいったぞ!」
「任せてッ!」
雨天、夜間時に限り、俺の肉体は悪魔化が可能だ。翼、爪、魔眼、角、尻尾など、いずれもシャープで先鋭的かつ人の身には大きいサイズで、結果として不気味な歪さがどうしてもつきまとう。しかし悪魔化すればその部位に応じた攻撃が可能で、中学時代から頼りになった。また、外骨格のような装甲を纏えば防御も可能だ。
だが現在は、弱らせるだけ弱らせて、眞華の方へと追い詰めることばかりしている。
眞華は、悪魔を浄化して霊力を取り込み強くなるのだ。というより、眞華は自らの霊力より弱い悪魔しか浄化できない。だから眞華が倒せるレベルまで、俺が弱らせる必要がある。
祓魔師の術は様々あるらしく、眞華は様々な術を会得していた。
「鏡乱ノ路!」
ときに鏡を使い、
「熔々塩呪!」
霊力を込めた塩を撒き、
「クロススピアランス!」
十字架を模した槍で突き刺し――と、その攻撃法方は多種多様。和洋中の垣根も越える。
なんにしても、銀や光、祝詞、儀式……あらゆる神聖な物や儀式にまつわる要素が悪魔に対しての攻撃手段となり得るようだ。悪魔も種類や個体によって弱点が違うらしく、眞華はその見極めに長けていた。弱い霊力であっても、多少の格上相手なら一人で倒せるのだ。
「すげーな、いつ見ても派手だぜ」
「ちょっと太陽っ!? もう少し悪魔化セーブしなさいよ、死にたいの!?」
俺は俺で、リスクがあった。
悪魔化は強力で、使えば使うほど強くなる。ただし、俺自身そのものが悪魔に近づいてしまうのだ。中学時代はベルゼビュートが俺を乗っ取るべく黙っていたうえに悪魔化の酷使を推奨され、躊躇いなく使い込んでしまったこともあり、俺は非常に強い悪魔の力を得た一方、人間としては非常に脆い存在になってしまった。
それがどれだけ深刻なことかを自覚したのが、高校一年の秋頃のこと。体育の持久走中に気絶したのだ。四十分ほど直射日光に晒されただけで、俺は意識を保てなくなっていた。
悪魔は、他の悪魔を喰らい魔王を目指す。その性質が、俺たちに希望と絶望を同時に与えた。
というのも、中学時代の俺の悪魔狩りを知った他の悪魔たちが、遠い地域や国で悪魔を食って強くなり、俺たちを強敵と認定したのだ。
最初に襲撃してきた悪魔の名はベリアル。紀元前時代、全盛期のウォーロックすら苦戦したという悪魔最強格の筆頭である。
ベリアルの圧倒的霊力に、これまでずっと俺の戦闘を見世物にしていたベルゼビュートが、初めて狼狽した。
四月、眞華の奇襲を受けたときですら、余裕そうにあしらったベルゼビュートが、だ。
俺が完全に悪魔と化してなお、敵うかどうか怪しい強敵。
眞華が殺されそうになって、俺はようやく決心した。
「もう悪魔になったっていい、それでも眞華だけは助けたい!」
初にして最期の全身悪魔化。それでもベリアルに殺されそうになって、ベルゼビュートが俺の体を強引に支配した。そうして激戦の末、ベルゼビュートがベリアルに致命傷を与え、眞華の術で葬ることに成功した。
だが、完全悪魔となった俺は、もう二度と人間の姿に戻れなくなった。疲労困憊のベルゼビュートから無理矢理体の支配権を取り戻して、悟る。
もうこの体は完全にベルゼビュートのものなのだ、と。
「眞華……俺はここまでだ。ベルゼビュートが俺の体を乗っ取る前に……俺を殺してくれ」
俺は覚悟を決めたのに……眞華は。
「嫌だよ……っ! あたしは太陽を殺せない……だって、ずっと好きだったんだからっ」
眞華は最後まで俺の説得を聞き入れず、俺を殺してくれなかった。
最終的に、俺はベルゼビュートに体を奪われ……眞華の前から、飛び去った。
* * *
あたしは、とんでもない大馬鹿者だ。
本当なら、十歳であたしの一生は終わって、ウォーロックとかいう大昔の人に体を乗っ取られて死んでいたはずだった。
それがどういうわけか、幼稚園であたしの怪我を心配してくれた男の子によって、あたしの死の運命は回避された。
あのとき、折紙で切った指を、太陽が嘗めてくれたから……ウォーロックの先祖返りより先にあたしの体からベルゼビュートが排出されて、結果として先祖返りが中途半端なものになり、あたしは生き残った。
それからは、ウォーロックの話を聞いて、渋々祓魔師としての修行に身を投じた。普通の人間は、低級の悪魔でも簡単に支配されてしまう。友達や周囲の人が被害に遭ったとき、見て見ぬ振りなんてできなかった。
でも、覚悟が足らなかったのかな。
太陽は命を懸けてあたしの霊力を育ててくれたのに……最後、あたしは自分の手で太陽を殺したくないからなんてわがままを言って、怒らせた。
そして、太陽はベルゼビュートに乗っ取られて……悪魔になってしまった……。
あたしのせいだ。あたしが、太陽を殺さなかったから!
覚悟を決めるのが、遅すぎるとは自分でも思う。とっくに罪滅ぼしなんてできない手遅れな状態だとはわかってる。
でも、あたしはあたしの命を捨ててでも、ベルゼビュートを殺す! そして太陽の体を取り戻すんだ!
そう決意したあたしは、今まで以上に祓魔師としての修行に明け暮れた。高校なんて通わなくなって四年以上が経ち……あたしは二十歳になった。
ベルゼビュートが本格覚醒したからか、世界各地で悪魔による活動が本格化した。低級悪魔は狂ったように人を襲い、そんな低級悪魔を餌として、魔王になろうとする悪魔が共食いを繰り広げる地獄絵図。
人間なんて、上を目指す強い悪魔にとっては価値のない存在らしく、良くも悪くも放置された。おかげで、人間としての敵は低級悪魔に絞られたし、その低級悪魔は中上位悪魔に食い殺されるので、意外と人間社会に悪影響は出なかった。
だからおかげで、あたしは上位悪魔狩りに専念できた。
二十歳になった今、どうやらあたしは悪魔の間でも脅威と囁かれるくらいには、強くなれた。未だにあたしの体に取り憑いているウォーロックの全盛期にはまだまだらしいけど……。どれだけ強かったんだろ、ウォーロック。
今のあたしを見たら、太陽、なんて言ってくれるかな。
たまに愛しい彼の顔を思い浮かべながら、あたしは悪魔を狩り続けた。狩って、狩って、狩りまくって……そして。
ベルゼビュートと、再会した。
ヤツはヤツで、上位悪魔を殺し回っていたらしい。禍々しい霊力が、今のあたしにはひしひしと感じられる。
開口一番、ヤツはあたしにこう言った。
「俺と、結婚してくれないか?」
……え?
* * *
ベリアル戦で完全悪魔となった俺は、ベルゼビュートに体を乗っ取られたわけだが……それが俺の死ではなかったらしい。
ベルゼビュートが俺の体を乗っ取った後、最初に向かった先は、小学生時代を過ごした施設だった。
そこでベルゼビュートは、なんと体の支配権を俺に返してくれた。
『最期にお前の望みを叶えてやるよ、太陽。あのおっさんのこと、ずっと殺したかったんだろう?』
施設長はなにも変わっていなかった。ただ、悪辣さとその手腕だけ、磨きがかかっていた。
かつて、俺が何度も殺意を抱いた相手。中学時代は、悪魔の力でいつでも殺せただろうし……実際、殺しかけたこともあった。
確かに俺は施設長のことが嫌いだ。殺したいほど憎んでいる。
俺は自由になった両手で……鋭く尖った銀のナイフで。
自分の心臓を突き刺した。
「殺したいのは、俺自身だ……!」
五歳の頃、ベルゼビュートに乗っ取られたときのこととはいえ、両親を殺して心臓をえぐり取った凶器は、俺自身の体なのだから。
さすがに悪魔の体だけあって、俺は死ななかった。そしてそれきり、ベルゼビュートは俺の中から消えていた。
俺はベルゼビュートの肉体で、俺の意識で、取り残された。
目を覚ました施設長が、異形の俺の姿を見て、平然と語り出した。
なんでも、悪魔とは『同族殺し』を意味するという。
人の負の感情によって生まれた悪魔は、依代に同族を殺させて、真の意味で血肉を得るのだ。例えばカマキリは、交尾の際にメスがオスを食べることがあるという。たとえどんな理由があれ、同族殺しは同族殺しなので、オスのカマキリを食ったメスカマキリは、その時点で悪魔になる条件を満たすようだ。
これが人間の場合、自らの手で人間を殺すことが条件となるらしい。そこに理由は問わないそうだが、とにもかくにも、俺はまだ、ギリギリ人を殺したことはなかった。
俺は、俺の体がベルゼビュートに操られて親を殺したが……自分自身の意思で施設長に殺意を抱いたが……それでも俺は、便宜上人間なのだそうだ。
だから、ベルゼビュートは俺に殺人をさせようとしたのだろう。そして俺が一番殺意を抱いている、施設長をターゲットにした。
それでも俺は施設長を殺さなかった。それどころか、銀の刃物で心臓を貫くという一撃が、ベルゼビュートを排除した。
「太陽……どうして、私を殺さなかった?」
施設長は、全身悪魔のバケモノを見て、どうして俺だと気づいたのだろう。
「アンタには、世話になったからな。許すつもりなんてないけど」
俺たち孤児は施設長にとって金を呼ぶ道具だ。施設長の支配欲求を満たすための奴隷に過ぎない。
だが、そのためとはいえ……飯を食えた。服をくれた。知能を授かった。思い返せば施設長の用意した食材は栄養価が高いものばかりで、料理当番がそれで食事を作っていた。服は体の成長に合わせてぴったりのサイズになるよう何度も買い替えてもらった。あらゆる支配と厳罰の中に潜む施設長の思惑を暴こうとする過程で、俺たちは周囲の子供たちより高い適応力を養われた。
だから、施設を出て大人になった奴隷たちが、施設長の愛のない育児を擁護するサイクルができあがっていた。施設長に人の心はなかったが、その自己愛を満たすための歪んだ教育が、どういうわけか施設長を守ったのだ。
それに気づいた俺は、施設長に尋ねた。
「アンタ、やろうと思えばどこまでも大悪党になれるだろ。どうしていつまでも施設長の立場に収まってる?」
施設長は、胸を張って、堂々と、悪びれもせず、即、断言した。
「悪名高さにも地位にも興味がないからだ。興味もないのに首を突っ込むほど私は馬鹿ではない。言い換えるなら、身の丈をわきまえているということだ。私が楽して気持ちよく過ごせる環境が維持できれば、それでいい」
悔しかった。俺が今まで出会ってきた人たちの中で、一番説得力を持った言葉だったから。
施設長とベルゼビュートの支配から脱却した俺は、眞華と再会したいと思った。一方で、このまま会いに行くのはまずいと直感した。
現在の悪魔たちは、魔王となるべく共食いに励んでいる。ベリアルは最強格の筆頭でこそあれ、ベリアルを倒せば終わりではない。
ベリアルと同格の悪魔たちが、今も世界のどこかで力を蓄えているのだ。今眞華と再会したら、きっと今までのペースでの悪魔狩りを再開することになる。それでは間に合わない。
だから俺は、魔王になることを決意した。世界各地で強い悪魔を狩って、狩って、狩りまくる生活の中、日本で眞華が上位悪魔を次々屠っているという風の噂を聞いて、少し嬉しかった。
眞華が敵数を減らしてくれたこともあって、俺は無事、魔王になれた。
魔王になって願ったのは――悪魔が二度と生まれてこなくなる世界。
もう、悪魔に負の感情を刺激されることはない。
こうして俺は眞華と再会し、求婚したのである。
その後俺と眞華は、俺を人間の体に戻す方法を、のんびり探しはじめた。それが今、とても幸せだ。
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