追放されたお姫様はおとぎ話のごとく優しい少年に救われたので恩返しします。

進藤 樹

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老化現象解明の手かがり

〈ああ、告白の返事のことかー〉

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 廊下に飛び出したアーロドロップは、後ろからシードランのメンバーが着いてこないことを確認して、窓の近くで足を止めた。
 外は透き通るように明るい。そろそろお昼ご飯の時間だろう。

〈アロップ、どうするの~?〉

 右手の人差し指からメンダコアバターのホログラムを浮かべたモルネアに、アーロドロップは顔を上気させて答える。

「そそそ、そんなの、ちゃんと返事しないとだけど……!」
〈なんの返事……? ボク、玉手箱の話してるんだけど〉

 一瞬、ぽかんと忘我したアーロドロップは、自分がいかに集中できていないか自覚して、羞恥心に全身が熱くなった。

「仕方ないじゃない! あんなこと言われたら誰だって気にするでしょ!」

 男性が女性を龍迎祭に誘うのは、恋人になってください、の意だ。
 誘われた女性にその気がなければ、その場で断ることもできる。というより、その気がないならその場で断るのがマナーだ。
 お誘いを受けたなら、龍迎祭の間に答えを出し、終了後に気持ちを伝えなければならない。それが龍迎祭の俗習だ。

〈ああ、告白の返事のことかー。でもアロップ、慶汰のこと好きなんでしょ?〉
「……だから、それまでに玉手箱の仕組みを解き明かして、慶汰を地上に帰したいのよ」
〈まさか、返事をうやむやにするつもり?〉
「仕方ないでしょ……慶汰は地上人なのよ。そうでなくても、一刻でも早く玉手箱を解析して、慶汰のお姉さんを回復させないといけないのに……」

 アーロドロップは、そっと胸元の〝発明王女〟の称号に触れた。
 こうして第二王女として、シードランの隊長に復帰できたのは、すべて慶汰のおかげだ。
 今度はアーロドロップの番なのだ。なんとしてでも、海来をしっかり治癒しなければ、胸を張って慶汰の前に立てない。

 ――もっとも、海来を治せば最後、慶汰は地上に戻るだろう。

 だから、自分たちが結ばれることはないのだ。それがわかっているのに、想いを伝えるなんて、そんな負担はかけたくない。
 アーロドロップは、「それでいいの」と独りごちて、頷いた。

「そろそろ戻りましょ。みんな待ってるわ」
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