【完結】どくはく

春風由実

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祖母の確認②

 私によく似た息子はすくすくと成長して、気付けば年頃。
 ある日自分で結婚相手を選びたいと相談してきたの。

 とても私の息子らしいわねって微笑ましく思ったけれど、夫は違った。

 焦ったのでしょうね。
 息子の前では物分りのいい父親を演じていても、隠れて相手を探し続けていたのは知っていたわ。

 家のことしか頭にない人だから。
 別にそれが悪いことだとは思っていないわよ?

 でもね、よりによって。
 あの女公爵から話を頂いてきたの。

 なんでうちなのよ!って叫びそうになったわねぇ。
 なんで息子なのよ!と夫に怒りをぶつけたかった。

 うぅん、怒りをぶつけたい相手は女公爵かしら?
 どうして関わろうとしてこなかった私の息子を選んでしまうの?

 はっきり言って、息子は愚鈍よ?
 あの女公爵の血筋に相応しくはないわ。


 でもね、よくよく話を聞いみてれば、相手はあの末の娘だと言うでしょう?

 それはちょっと面白そうだと思ってしまったのよ。

 ごめんなさいね、息子にも悪いことだわ。
 でもね、あの大っ嫌いな女公爵から生まれた不出来な娘には前から興味を持っていた。

 気になっていた理由は、女公爵の血筋なのにどうして?という疑問だけではないわ。
 きっと我が家では想像も出来ないくらいに、優秀な人たちに囲まれて育っているはずでしょう?
 それでどうして噂のような娘が出来上がるのかしら?って。
 私たち世代では、よく話題にされていたの。

 頭も弱くて。
 振舞いには品がなく。
 似合わない派手な装いを好んでいて。
 貴族らしく表情を作ることも出来ない。
 歯を見せて笑うんですってよ。
 それが下町で遊んでいるからだと聞いたこともあったわ。

 信じられない話ばかり流れてくるから。
 一度くらいお目見えしたいと思っていたのよね。

 だって噂が流れ始めてから、その子は社交の場に現れなくなっていたわ。
 女公爵が心配し謹慎させているのでしょうねって囁かれていたもの。

 大きな問題を起こしたわけではないのに出て来ないって相当のことよ?
 逆に何か大事を起こして謹慎しているけれど、揉み消された可能性まで囁かれていたわね。
 王家とも親密な関係の公爵家だもの、それくらい簡単に出来るでしょう?

 だからまずは一度会って、それから考えてもいいでしょうとは思っていたの。

 会ってしまったら、もうお断りなんて出来ないとも思っていたけれど。
 そんな奇抜な娘さんだったなら、息子が気に入られるわけもないしと、向こうから断られる未来を想像していたのね。

 噂通りの娘さんだったら、嫌な相手との結婚は、暴れてでも取り止めるでしょうとも思っていたわ。

 会う前のよく知らないときからそんな想像をしていたことは、さすがに失礼だったと今は反省しているわよ?


 だからまさか息子が気に入られるとは思わなかったの。

 冗談ではなかったわよ。
 女公爵の娘との結婚なんて、喜ぶはずがないでしょう?

 私ははじめから反対したわ。
 夫だって公爵家と縁付くことに関して喜んでいただけで、あの娘を嫁として認めていたわけではないのよ。

 でももう私たちは断れる状況にはなかったの。

 ねぇ、分かるでしょう?
 私たちは公爵家から来たあの嫁に逆らえなかったのよ。

 私はそうね、女公爵にそっくりに育つあの子を遠ざけて来たかもしれないわね。
 それが罪というなら、それは受け入れましょう。
 あの子に誠心誠意謝罪して、償っていくことも約束するわ。

 でもね、夫はあの子を大事に育てていたはずよ?
 立派な伯爵家の当主となるよう、あの人はいつも厳しくも愛情を持ってあの子に接していたわ。

 あの子もそれを忘れていないはずよ。
 聞いてみてくれるかしら?




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