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♦三度目
9.やる気に燃える婦人
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「……オルヴェには明日会いに行くよ。それに……そうだ、もう宿を取っちゃったんだ。だから今日は……やっぱり今日のところは……」
歯切れの悪い言葉で続くシーラの家に来ない言い訳を、リタは軽々と一掃してしまう。
「宿ならキャンセルすればいいわよ。そうね、私も一緒に行って、宿の人によく説明してあげるわ!怒られたりしないから大丈夫よ。任せてちょうだい!」
でもでもだってとシーラは抵抗を続けていたが、リタは強引に話をまとめると、シーラとテンを引き連れてタークォンの街中を移動した。
時折そっと、背後や真横に聳え立つ王宮をその瞳の端に映しながら。
同じことをシーラがしていると気付いた瞬間の感激と言ったら……この場では気付かぬふりをして感情を隠し、あとでオルヴェにたっぷりと聞かせることを選んだリタである。
いずれにせよ、この夫妻が強い興奮により今夜は眠れないことが決まっていたから、オルヴェの淹れた珈琲とリタの作り過ぎていた菓子をお供に長い夜を過ごすことになるだろう。
そんな風にして、半ば強引に二人を連れてリタがレンスター邸宅に戻って来ると。
玄関前に椅子を置いて外で待っていたオルヴェは、シーラの姿をその老いた瞳に映した瞬間、椅子を倒して立ち上がると、老体を大きく揺らし駆け寄って来ては、シーラを力いっぱい抱きしめた。
本当は妻と共にシーラを迎えに行きたかったオルヴェだが、それで入れ違いになっては困るだろうと苦渋の想いで留守番を選択していたのだ。
今か、今かと待っていた彼は、すでにシーラと会う前から泣いていたため、シーラを抱いてからは嗚咽を漏らすほどに泣いていた。
「また簡単に捕まった……」
ぽつんと呟くテンの声を捉えたリタは、「テンちゃんも、すぐにオルヴェに紹介するわね。あの人は私の夫なのよ。いつも寂しくしている人だから、テンちゃんが仲良くしてくれると嬉しいわ」と言って、なんとか少年の心を開こうと試みる。
だがまだテンは、リタとは目を合わせてはくれなかった。
リタの声が確かに届いたと示すに等しく、ぷいと顔を背ける様子が可愛く見えて、リタは微笑む。
シーラちゃんと違って、なかなか手強そうな男の子ね!
テンの態度は、リタの胸にやる気の炎を点火させるばかりで、逆効果でしかなかったが、まだ幼い少年には分からなかったようだ。
歯切れの悪い言葉で続くシーラの家に来ない言い訳を、リタは軽々と一掃してしまう。
「宿ならキャンセルすればいいわよ。そうね、私も一緒に行って、宿の人によく説明してあげるわ!怒られたりしないから大丈夫よ。任せてちょうだい!」
でもでもだってとシーラは抵抗を続けていたが、リタは強引に話をまとめると、シーラとテンを引き連れてタークォンの街中を移動した。
時折そっと、背後や真横に聳え立つ王宮をその瞳の端に映しながら。
同じことをシーラがしていると気付いた瞬間の感激と言ったら……この場では気付かぬふりをして感情を隠し、あとでオルヴェにたっぷりと聞かせることを選んだリタである。
いずれにせよ、この夫妻が強い興奮により今夜は眠れないことが決まっていたから、オルヴェの淹れた珈琲とリタの作り過ぎていた菓子をお供に長い夜を過ごすことになるだろう。
そんな風にして、半ば強引に二人を連れてリタがレンスター邸宅に戻って来ると。
玄関前に椅子を置いて外で待っていたオルヴェは、シーラの姿をその老いた瞳に映した瞬間、椅子を倒して立ち上がると、老体を大きく揺らし駆け寄って来ては、シーラを力いっぱい抱きしめた。
本当は妻と共にシーラを迎えに行きたかったオルヴェだが、それで入れ違いになっては困るだろうと苦渋の想いで留守番を選択していたのだ。
今か、今かと待っていた彼は、すでにシーラと会う前から泣いていたため、シーラを抱いてからは嗚咽を漏らすほどに泣いていた。
「また簡単に捕まった……」
ぽつんと呟くテンの声を捉えたリタは、「テンちゃんも、すぐにオルヴェに紹介するわね。あの人は私の夫なのよ。いつも寂しくしている人だから、テンちゃんが仲良くしてくれると嬉しいわ」と言って、なんとか少年の心を開こうと試みる。
だがまだテンは、リタとは目を合わせてはくれなかった。
リタの声が確かに届いたと示すに等しく、ぷいと顔を背ける様子が可愛く見えて、リタは微笑む。
シーラちゃんと違って、なかなか手強そうな男の子ね!
テンの態度は、リタの胸にやる気の炎を点火させるばかりで、逆効果でしかなかったが、まだ幼い少年には分からなかったようだ。
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