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♥選ぶもの
3.俺のせいじゃない!
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「おい、こら!ちょっと待て……ん?」
王子はシーラを追い掛けるつもりであったのに、歩みを止めてしまった。
二人も捕まえるのは大変だったし、勿論そこはこっそりと自分についている庶民に扮した私服姿の護衛たちに、捕獲を頼むつもりでいたのだけれど。
そうする前に引っ掛かることが起きたのだ。
走り出したのはシーラだけ。
いつもならその後を追い掛ける少年が動かなかったのである。
それも機嫌の悪いせいではなさそうなのだ。
シーラ一人となれば、捕獲は容易い。
小柄なせいか、魔術師だからか、足もそう速くはないし、動きも鈍かったから。
魔術さえ使わないでいてくれたなら、王子一人でもシーラを捕まえることは容易かった。
それにすでに王子のあずかり知らぬところで、護衛の一人がシーラを追っていたし、いつでも捕まえる準備をしてシーラとの距離を保っている。
それも王子はそうだろうなと察していて、だからこの時点ではまだ落ち着いていられたのだ。
それで足を止めたまま、シーラを眺める少年に話し掛ける。
「あいつはどうしたんだ、テン?」
「別に……いつものことだから」
「いつもだと?」
いつもとはなんだ、いつもとは?
と仔細聞き出そうと思っていたら。
「なっ!」
今度こそ、王子は慌てた。
また臣下に何を言われるか分からない。
王子はまだそう遠くない場所にいるシーラに駆け寄るつもりだった。
ところが急に視界に入ってきた護衛の一人が首を振る。
いけません、殿下。動かずに。彼はそう訴え掛けた。
それでもどうしても放っておけない王子は、急ぎシーラの元へ走り出そうと……する寸前で。
「これはどういうことです?」
届いた冷え冷えの声は、夏なのに王子の身体を氷のように冷やしていく。
急いで来たであろうに息も切らさず現れた臣下は、声と同じく冷え切った瞳を王子に向けていた。
王子はシーラを追い掛けるつもりであったのに、歩みを止めてしまった。
二人も捕まえるのは大変だったし、勿論そこはこっそりと自分についている庶民に扮した私服姿の護衛たちに、捕獲を頼むつもりでいたのだけれど。
そうする前に引っ掛かることが起きたのだ。
走り出したのはシーラだけ。
いつもならその後を追い掛ける少年が動かなかったのである。
それも機嫌の悪いせいではなさそうなのだ。
シーラ一人となれば、捕獲は容易い。
小柄なせいか、魔術師だからか、足もそう速くはないし、動きも鈍かったから。
魔術さえ使わないでいてくれたなら、王子一人でもシーラを捕まえることは容易かった。
それにすでに王子のあずかり知らぬところで、護衛の一人がシーラを追っていたし、いつでも捕まえる準備をしてシーラとの距離を保っている。
それも王子はそうだろうなと察していて、だからこの時点ではまだ落ち着いていられたのだ。
それで足を止めたまま、シーラを眺める少年に話し掛ける。
「あいつはどうしたんだ、テン?」
「別に……いつものことだから」
「いつもだと?」
いつもとはなんだ、いつもとは?
と仔細聞き出そうと思っていたら。
「なっ!」
今度こそ、王子は慌てた。
また臣下に何を言われるか分からない。
王子はまだそう遠くない場所にいるシーラに駆け寄るつもりだった。
ところが急に視界に入ってきた護衛の一人が首を振る。
いけません、殿下。動かずに。彼はそう訴え掛けた。
それでもどうしても放っておけない王子は、急ぎシーラの元へ走り出そうと……する寸前で。
「これはどういうことです?」
届いた冷え冷えの声は、夏なのに王子の身体を氷のように冷やしていく。
急いで来たであろうに息も切らさず現れた臣下は、声と同じく冷え切った瞳を王子に向けていた。
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