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♥選ぶもの
24.無限の空洞
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イルハは二種の魔力が海のように無限に膨れるこの空間に、ひとつの濁流を作り出そうとしている。
その濁流は魔力の大元の泉から真直ぐ取り出すのが一番だ。
だからイルハはシーラの首を狙った。
人間には脳から胴体に掛けて真直ぐに魔力が流れる図太い魔力菅と呼ばれる組織が存在していると言われる。
魔力に関する治療を行うときには、医者も首に触れるが、それはこの魔力菅に最も近付き外から触れられる場所だからだ。
そのため、人から魔力を多量に吸い取るようなときにも、この場所が選ばれた。逆も然り。
シーラがあれほど首周りに触れらることを嫌がる理由もそこにある。
それでイルハも、それからリタも、シーラの顎の傷痕には気付けずに過ごしてきた。
だが今はそんなことを言っていられない。
「え?え?」
まさか噛みつかれると思わなかったのだろう。
噛むと言っても、歯は立てていないし、シーラは何の痛みも感じていないはずなのだが。
首を咥えられて、驚いたシーラの動きが止まっていた。
「すみません。これでいきます」
僅かに口を離したイルハは囁いてすぐに、またぱくりとシーラの首を食む。
「な……なに?」
シーラの魔力の暴走具合も、少しだが弱まっていた。
これは好機。
イルハは息を吸い込む要領で、シーラの魔力を身体の中へと取り込んでいく。
長年空を名乗ってきたレンスター家を背負うイルハは、シーラを助けたいという想いと共に、この場の支配権を勝ち取らなければならないという使命感も持っていた。
不意に亡くなった両親の顔が浮かんでくる。
イルハが両親を亡くしてから、これほど鮮明に彼らの顔を思い出したことはなかっただろう。
息子としては薄情者だろうか。
そうだとしても、イルハは事情もあって、出来る限り思い出さないように努めてきたのだ。
だから遺品にも手を付けず放置していたというのに。
それを変えたのは、やはりシーラだ。
そしてイルハをレンスター家の空の器を持つ者として覚醒させたのもまた、シーラだった。
その濁流は魔力の大元の泉から真直ぐ取り出すのが一番だ。
だからイルハはシーラの首を狙った。
人間には脳から胴体に掛けて真直ぐに魔力が流れる図太い魔力菅と呼ばれる組織が存在していると言われる。
魔力に関する治療を行うときには、医者も首に触れるが、それはこの魔力菅に最も近付き外から触れられる場所だからだ。
そのため、人から魔力を多量に吸い取るようなときにも、この場所が選ばれた。逆も然り。
シーラがあれほど首周りに触れらることを嫌がる理由もそこにある。
それでイルハも、それからリタも、シーラの顎の傷痕には気付けずに過ごしてきた。
だが今はそんなことを言っていられない。
「え?え?」
まさか噛みつかれると思わなかったのだろう。
噛むと言っても、歯は立てていないし、シーラは何の痛みも感じていないはずなのだが。
首を咥えられて、驚いたシーラの動きが止まっていた。
「すみません。これでいきます」
僅かに口を離したイルハは囁いてすぐに、またぱくりとシーラの首を食む。
「な……なに?」
シーラの魔力の暴走具合も、少しだが弱まっていた。
これは好機。
イルハは息を吸い込む要領で、シーラの魔力を身体の中へと取り込んでいく。
長年空を名乗ってきたレンスター家を背負うイルハは、シーラを助けたいという想いと共に、この場の支配権を勝ち取らなければならないという使命感も持っていた。
不意に亡くなった両親の顔が浮かんでくる。
イルハが両親を亡くしてから、これほど鮮明に彼らの顔を思い出したことはなかっただろう。
息子としては薄情者だろうか。
そうだとしても、イルハは事情もあって、出来る限り思い出さないように努めてきたのだ。
だから遺品にも手を付けず放置していたというのに。
それを変えたのは、やはりシーラだ。
そしてイルハをレンスター家の空の器を持つ者として覚醒させたのもまた、シーラだった。
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